一方通行
ある日女の子が遊んでいると草むらに怪我をしたカラスがいるのを見付けました。
可哀想に思った女の子はカラスを助けようとします。
しかし、警戒心の強いカラスは女の子を寄せ付けようとしません。
考えた女の子は翌日食べ物を持ってカラスの元にやってきます。
ですが、やはりカラスはそんなもの目にも止めません。
女の子は毎日食べ物を持ってカラスの元に向かいます。
日に日に元気の無くなっていくカラスですが、一向に食べ物に手をつけようとはしません。
そしてある日女の子がカラスの元へと行くとカラスは力尽きていました。
カラスの怪我は人間にイジメられ出来たものだったのです。
カラスは最後の最後まで女の子を信じることなく死んでいきました。
失った信用を取り戻すのは容易なものではありません。
カラスからしたら女の子も人間の中の1人でしかありませんでした。
女の子は沢山泣きました。
たくさんたくさん泣いたあとカラスのお墓をつくりました。
女の子はカラスに何があったのか知りません。
ああすれば良かったのだろうか、こうすれば良かったのだろうかとたくさんたくさん考えました。
考えても考えても分かりません。
出てくるものは後悔ばかりです。
分からないのはとても悲しい事でした。
信じることが出来ないのはとても悲しい事でした。
1人と1羽は分かり合えないままお別れをしてしまいました。
カラスが何を感じ、何を思っていたか分からない以上、分かりあいたいなど女の子の一方的なわがままだったのかもしれません。
女の子は大人になりました。
彼女は知っています。
分からないことは悲しいこと。
分からないのは悔しいこと。
だから、分かるためにたくさん話すのです。
後悔しないよう、たくさん話して理解しようとするのです。
そして、今でもふと思い出すのです。
あの時どうしたらカラスを助けてあげることができたのであろうかと。
終わり