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3 警察署捜査1課
杉並警察署捜査一課。部屋の中は閑散としていた。小橋が座っているデスクの前には他に12のデスクが並んでいる。でも座っているのは寺脇だけだった。
時刻は午後2時10分。小橋の中にだんだん焦りが生じてきた。
「どうした? 浩次……」
心の声が思わず口から出てしまった。寺脇に聞かれていないか様子を伺った。どうやら気付いてないようだ。
――俺の計画は完璧だ。
小橋の計画では浩次達は5、6分で現金を強奪するはずである。だからもう通報があって良いはずだ。
――それからが自分の出番だ。
でも肝心の通報が遅い。
――失敗?
時間の経過ともにネガティブな考えが比例の関係で大きくなっていく。
小橋は大きく首を横に何度も振って、そんな考えを振り払った。自分の計画は完璧だ、失敗するはずはない。それに絶対に失敗は許されない。
――全ては劇団のためだ
小橋は自分の覚悟を確認した。
ついに通報のアナウンスが流れた。
「M銀行高円寺支店に強盗事件発生」
小橋は勢いよく立ち上がった。
――浩次、絶対に逃げ切るんだ。後は俺に任せろ。