表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
太陽のオトシゴ  作者: 南多 鏡
第二部 相棒
14/22

第四章 みんなで夏休み

 そして遂にやって来てしまった実力テスト。準備は充分にしたはずだが、それでもこの時間はかなり緊張する。


「やるぜぇ、僕は超やるぜぇ……」


 なんとか自分を奮い立たせ、テスト開始を待つ。

 ぴこん。

 きっと大丈夫です。いつも通り、あなたらしく問題を解いてください。


「おぅ、任せろぉ……」


 そして予鈴が鳴ると同時に、最初の科目数学のテストが配られた。

 今日のテストは、数学ⅡとB、英語、ヒアリング英語、そして現代文。


「では、始め」


 本鈴と共に、テストという戦いに僕は挑戦を開始した。


――……


 テスト一日目、なんとか乗り越えた。いつものホトホトラビットで、僕らはみんなで答え合わせをしていたのだが。


「だからここは〝世を憂う〟だろう?」

「違うぞ、優等生。それじゃあ後ろの文に繋がらねぇ。〝世に希望を持つ〟が正しい」


 現代文の答え合わせで正詠と蓮がヒートアップしていた。


「……待て。マジか、ロビン」


 ぴこん。

 マジです、マスター。


「くそ、現代文じゃあ蓮に勝てないかもな」

「現代文で俺に勝とうなんて百年早い」


 と、蓮は胸を張っているが他の科目で負けているのは言うまでもない。


「もうやめようぜ、勉強なんてしたくない……」


 ため息をついて、机の上にいるテラスを撫でる。

 気持ち良さそうにするテラスを見て、心が和む。


「とりあえず明後日でテストも終わりだ。ここで誰か一人でも赤点取ったら遊べなくなるからな。わかってるな、太陽、遥香?」


 名指しで正詠からキツい一言が飛んできた。


「わかってる……頑張る……」

「私も、頑張る……」


 テストはあと二日。僕の残りは生物、物理、古典、日本史、政治・経済、保健体育……あぁ、しんどい。


――……


 そんでテスト最終日。

 地獄のテスト週間が終わりを……告げた!


「終わった終わったぁぁぁ!」


 勢い良く鞄に教科書やらノートやら参考書を押し込む。夏休みに向けて、ロッカーの中も綺麗にするぜぇ!


「太陽」

「おうよ、正詠! わかってる、ホトホトラビットに集合だろ!? いやっほぅ!!」

「いや、そうなんだが……」


 正詠は教室の外を指差した。


「あれ、王城先輩達じゃん」


 僕のテンションは急激に通常に戻る。王城先輩と晴野先輩、風音先輩の三人がこちらを見て手招きしていた。


「王城先輩達が仲間になりたそうにこちらを見ている」

「お前の謎のギャグセンスは何なんだ」


 正詠がため息をつくとほぼ同時に、僕の机の周りにみんなが集まった。


「おい、おっかねぇ奴等がいやがるぞ」


 蓮がその三人を見て、皮肉を漏らす。


「あんた何かしたんでしょ、クソバカ太陽」


 遥香からの謂れのない罵倒。


「どうしたんだろ……?」


 相変わらず天然っぽい透子。

 風音先輩はにっこりと微笑んで、僕達を指差し、そのままくいくいっと指を動かして僕らを誘った。


「おっぱいが僕を誘っている……揉ませてくれるのかな」


 ごちんと、四人にそれぞれ殴られた。


「いってぇ……冗談だっての、もう……」

「冗談でも殴らなきゃいけないだろ、今のは」


 正詠は再度ため息をついた。


「とりあえず話があるんだろうな、行こうぜ」


 鞄を背負い、三人の元に向かう。


「どうかしたんすか、先輩方?」

「あぁ。お前らと少し話したくてな。どこかで話せないか?」


 僕の質問に答えたのは王城先輩。


「じゃあホトホトラビットって喫茶店でいいですか?」

「かまわん」


 王城先輩が頷くと、風音先輩は両手の指を合わせ、ぱぁっと笑みを浮かべると少し跳ねた。おっぱいも揺れた。すごい。


「まぁ! 学校帰りに喫茶店なんて学生みたいね、翼、晴野!」

「俺達は正真正銘学生だぜ、桜」

「うむ」

「あら、冷たいのね?」


 ぷくぅと頬を膨らませた風音先輩の頬を、風音先輩が指で突付いた。二人は楽しそうに笑い合い、それをうんうんと頷きながら王城先輩が見ていた。

 三人の意外な姿に少し驚いたが、僕らはが知らないだけでこれが先輩達の普通なのかもしれない。


「じゃあ行きましょうか」

「えぇ、とっても楽しみ!」


 王城先輩と晴野先輩の二人は互いの顔を見て肩を竦めた。


「あいつらキャラ変わってねぇか?」

「元からああいう人なのかもよ?」

「元からって……じゃああのお嬢様は元から狂暴ってことかよ」


 蓮が「おっかねぇ」とか言ってたのは、どうやら風音先輩のことのようだ。確かにリベリオンの時はおっかなかったけども。


「あの三人は昔から仲が良いぞ。どうやって仲良くなったかは知らんが」


 ぺしんと、正詠は蓮の頭を叩いた。


「あんまり悪く言わない方がいいぞ。多分あの人は地獄耳だ」

「何でお前にそんなことわかんだよ?」


 蓮の質問に正詠は答えずに、指を差していた。その指先を蓮が辿ると、にっこりと怖い笑顔を浮かべている。


「……おっかねぇ女だ」

「蓮がビビりすぎなんだっての!」


 あっはっはっと呑気に遥香は笑っているが、ぶっちゃけ僕も蓮の意見に賛成だった。多分だが正詠も同じ気持ちを抱いているに違いない。というかきっと、あの人は男という男に対して強そうだ。まさに魔性の女。おっぱい大きいし。


「よく王城先輩も晴野先輩も普通にしてられるよなぁ。あんな美人を前にしてさ」


 前を歩く三人を見て僕は呟いた。


「俺はない」

「ねぇな」


 いやぁ、正詠も蓮もよくはっきり言えるよなぁ。あとでチクっといてやろ、風音先輩に。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ