序文
初投稿なんですか使い方がさっぱりわからないので短いですが、
とりあえず終わりまで構想はありますのでちょいちょい続けて書いていきます。
ジャンルは近世中期(江戸時代中期)の時代小説ですが、香川県志度などを初めとする現地での研究や取材で得た情報や知識を基にでの文章化ですので史実に近くしていくつもりです。
よろしければご覧くださいな。
序文
享保年間。一人の怪物がこの世に生を受けたその時代は、決して華やかなものではなかった。
謂わば長い年月をかけて既に確立済みのカビ臭さのある身分差社会と、華やかな国内文化が過ぎ去ってから長年経過した代わり映えのない風景。そして何より、国策で極度な閉鎖状態にあったという事実。鎖国は確かに従来の重きを守り、独自の国風や国学を生み出し、更には日本ならではの芸術の完成度を高めた。しかしそれと同時に異文化の交流を妨げるだけでなく、ある種、人間が持つ未開の好奇心や新しさを最小に制限し、「外国」のものへの珍しさが上がって、異常なほど大げさに評価する。もちろんその時代の人間は、そうした新たな物への興味がないわけではないが、時世が悪い。文学をはじめ芸術全般、医学知識、技術力、すべてにおいて中途半端である。そろそろ足音が聞こえてくるはずの近代とは、未だに大きな差があった。
しかしこの差を埋めようとしたのか、いやただ本能のまま、好奇心のまま走っていただけだろう。時代の芸術の最先端を何十段も、いや何百段も飛び越えて、このまったく味のしない時代に色をつけようとした男たちがいた。見た目は質素でも、存在は些細でも、彼らの色は確かに彼らが作り出している。大きく縛られ、大きく遅れていた武士の国に、近代という時代の足音が近づいていた。