19 部下の壊れし致命傷
予定より投稿が遅れてしまい、申し訳ございません。
次回投稿も1週間後を予定にします。また遅れるかもしれませんが……頑張ります。
街の中を歩く。
かつて賑わった大通りも、今は空き屋しかない。
右の家では病人が互いを看病しあい、
左の家では手足を失った元兵士たちが子供の世話をしている
先に亡くなるは、戦える者たち
優秀な者、勇気ある者、動ける者
強き彼らは守るべき仲間のために武器を取り
そして旅立っていった
ここに残るは、その残骸
動けぬ者、魔法の使えぬ者、ツノすら持たぬ者
弱き我らは守るべき仲間のために命を捨て
そしてまた旅立っていく
我らはここを捨て去る決定を下した
守り手なき砦は、留まることすら許されぬ
しかし誰かが犠牲とならねば、逃げる時間を守ることもできぬ
動けぬ者はその手を挙げた
不動の我こそ優れた防御をみせてやると
魔法の使えぬ者は武器を掲げた
勇気という魔法を隠し持っていたと嘯いて
ツノを持たぬ者は微笑んだ
君は生きて僕のことを語り継いでくれと、我に伝えて
償いの歌を我は捧げる
竪琴しか才はない吟遊詩人は
誰も聴くもののいないこの街で
亡き者たちへと歌を捧げる
竪琴の弦など
全て切れて残ってはいないというのに
◻︎◻︎◻︎
「うぅぅ……」
呻き声がして、それが自分のものだと気づき目が覚めた。
ズキズキと全身に感じるのは擦れた傷の痛み。
重い頭を抑えながら身を起こすと、目の前には崩れた壁が瓦礫となっていた。
「ぐうっ、なにが、起こったんだっけ……」
悪夢をみていたかのように、気分が悪い。
こういう時は、深呼吸だ。
ゆっくりと心を落ち着けて、俺は状況を整理する。
そうだ、俺は天井の落下に巻き込まれて、咄嗟に避けようとした。
だが落下した破片の一部が当たったのだろう、強い衝撃の中で意識が飛び、そこから記憶がない。
瓦礫をよく見ると、さっきまで座っていた椅子は、瓦礫の中からひしゃげた脚だけ出している。
(間一髪だった……身体が反射的に動かなかったらあそこに見えるのは、俺の手足だったかもしれない)
しかし、助かったから安心しきったとはならない。
確かに生きてはいるけれど、事態は一層面倒なことになった。
「階段が、塞がっている」
この部屋の天井全てが落下したわけではなく、上層階から階段にかけての一部が崩壊しただけらしい。
しかし場所が悪く、落下した天井は入口を塞いでしまっている。
どうにかしてどけないと、部屋の外には出れない状態だ。
寝転んでいた俺は立ち上がろうとして、毛布がかかっているのに気付く。
それによれよれだが、包帯が俺の体に巻かれている。
そして腹のあたりが妙に重い。
「すぅ……すぅ……」
部下が俺の腹に覆いかぶさる形で寝ていた。
近くには、汚れた布や水。治療した後がある。
角がゴツゴツと腹に当たって、少しくすぐったい。
(俺が気を失っている間に看病してくれていたのか……)
「部下には助けられっぱなしだな」
俺は彼女を起こさぬよう彼女を横に寝かせながら立ち上がる。
まずは階段の石塊が取り除いても大丈夫か、色んな角度から見て確認しないと。
ズキン
「うううっ!?」
一歩を踏み出そうとしたとき、右足に嫌な痛みを覚えてその場にうずくまる。
(今のは、まさか)
「うぅん……」
痛みの原因を確かめようとしたところ、横から伸びをする声。
ハッとして俺は振り向くと、寝ていた少女が目を覚ましていた。
俺の呻き声で起こしてしまったようだ。
「魔王、様?」
「あ、ああ……おはよう」
咄嗟にくるりと立ち上がり、右足を後ろに隠すような姿勢を取る。
怪我を見せてしまえば、少女を心配させてしまうと、つい誤魔化そうとしてしまった。
でも、段々と脚の間隔が戻るにつれて、痛みが一瞬だけのものじゃないと主張するようにズキズキと嫌な刺激を送り続けてくる。
「俺が寝てる間、看病してくれていたんだろう? まずはお礼を言わなくちゃな」
「い、いえ! 部下として当然のこと……ですから」
恐縮といった感じで、部下は座りながら焦るようにペコペコと頭を下げた。
そんなに畏まられる覚えはないけれど、魔王という自称がそんなに怯えさせるようなものだったのだろうか。
「それにしても。突然天井が崩れてくるのは、びっくりしたな。部下は大丈夫だったか?」
「私は部屋の隅にいた、ので」
「ああ、天井の崩れた位置とは対角線の位置だったか」
「はい。それで魔王様が避けたあと、埋まっていた脚の瓦礫をどけて、薬や包帯で手当てしようと頑張り、ました」
なるほどな。どうりで、包帯がやけに湿っていると思った。
これ宝箱に入ってた薬液かぁ……俺は飲み薬だと思ってたけど、使用方法あっているんだろうか?
疑問に思ったけど、部下が彼女なりに頑張って治療してくれた気持ちを尊重して、ここは黙る。
(怪我も酷くないしな……足を除いて)
この突然の崩壊は、迷宮に仕込まれた罠というわけではないだろう。
スイッチを押すようなことはしていない。座って休んでいたときに、遠くから聞こえていた音が迫ってきたと思ったら、すぐに巻き込まれていた。
関連するとすれば、先程あちこちから聞こえた鈍い音。
きっとあれも、迷宮の通路が壊れていたせいだ。
そして俺たちがこの部屋に入った後、偶然この真上の天井に亀裂が走り、俺は巻き込まれた。
古くからある建物なんだ。いくら中身が綺麗でも、崩壊しないほうが変というものだ。
「荷物も無事みたいだし、それじゃあ次にどうするかを考えるか。このままだと部屋からずっと出られずに、食料が尽きてしまうからな。部下よ、この部屋には何か魔法陣……なにか模様や文字が書かれてはいないか」
「いえ……階段の入り口には、誰かの名前と、宝箱があると書いてあったみたい、ですけど」
「名前?」
「でも古い名前みたいで、そのう、読み方が分からなくて……」
名前……この迷宮を作った魔族のものか?
引っかかるけど今は後回した。
「分かった。なら次は、出入口の瓦礫を上手くどけられないか確認しよう」
俺は、足が痛まぬよう、ゆっくりと脚を動かして移動しようとする。
けれど部下の黄色に輝く鋭い目は誤魔化せなかった。
「魔王様、その足は……」
部下が目を丸くする。
しまった、もうバレたか。
「ははは、ちょっと挫いたみたいだ」
「服の下を見せて、ください!」
「心配しなくて大丈夫だ。ちょっと休めば治るから」
笑って誤魔化したけれど、怪我の具合がどの程度かは分からない。
どうせすぐには部屋からは出られないので、今は安静にするのが得策だろう。
けれど……もしかしたら
(もし怪我が酷かったら)
「魔王様……!」
「気にしなくていいから」
「ダメ、見せて!」
部下が強引に俺のズボンの裾を捲り、息を呑んだ。
なるべく意識しまいとしていたが、俺にもその紫色に腫れた肉が見えてしまった。
付け根は反対の脚に比べて倍以上に膨らみ、風が撫でるだけでひりつく。
2、3日いや10日程度休んだ程度じゃ、到底歩けるようにはならないと分かるくらいの脚だ。
それはつまり
「迷宮の長い道を歩くのは、この脚じゃ無理だな」
俺は一つ、諦めがついた。
「だからさ、部下……もしこの部屋から出られるようになったら、君だけ先に進んでくれ」
「イヤ、嫌ですよ魔王様。そんなの、嫌……絶対、嫌、嫌、嫌……」
部下は目をうるうるとさせ、その場に崩れ落ちてしまった。
彼女を一人にするのは、少女を導く魔王を自称した手前申し訳ないけれど、仕方ないことだ。
この脚じゃきっとスライムの進む速度にさえ負ける。
ここで部下の看病を受け続けるわけにもいかない。
何ヶ月かかるか分からないし、宝箱も無限に湧くわけじゃないだろう。
部下に食料を探しに何度も外を彷徨わせても、その間にいつ迷宮が再び崩れるかも分からない。
むしろ俺を助けようとした彼女のほうが、その崩落に巻き込まれて危険な目に会う確率が高まる。
致命傷ではないが、迷宮にて歩けない者とそれだけで致命的だ。
その事実を、まずはっきりと部下に教えなくてはいけない。
だが、部下は呼吸も荒く、パニックを起こしながら早口に叫ぶ。
「私、もう進まなくていい。ずっとここで、魔王様と一緒にいます。食べ物は、また私が宝箱を見つけて取ってきます。だから、だから!」
「ごめん、だけど聞いてくれ…………おい、部下?」
俺は声をかけ続けたが、部下は目を見開いてどこか遠くを見てしまっている。
「やだ、今回も失敗なの……? また、私は一人ぼっちなの……? そんなのヤダ、ヤダ、嫌だ、嫌だ、嫌だ嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌……」
様子がおかしい。
瞳がグルグルと回り、表情も泣き顔から、口元が割けそうなほど口角をあげた笑みを見せている。
おどおどした少女の小さな声が、別人のように低く変化していく。
「部下、おい? どうした?」
「嫌、嫌、嫌、嫌」
その黄金の目が鈍く染まる。
「部下、だいじょ」
「嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌」
なんだ、これは。
まるで俺が魔力に狂わされ、暴走しているときのような
「嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌
………あ」
少女が、上を向いて小さく呟いた。
そして俺に微笑む。
不気味で張り付いたような顔でなく、頬を赤らめ恍惚に酔った少女の顔で。
「わかりました、魔王様。そういうことだったんですね」
「……なにが」
「貴方様を私が殺して、やり直せということなんですね」
何を
言っているかが理解できない。
けれどそれが、恐ろしいことだというのは、少女の手に握られたコップの破片から分かる。
地下迷宮の更に底。
地獄とも思えたこの場所の、深部にある小さな部屋で。
割れて尖った三角状の陶器は、小さな手には大きすぎて
まるで小さな短刀のように見えた。




