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王城脱出

「来たか。楽にしてくれてかまわない」


「お言葉に甘えて」



 現在、奏は国王に呼ばれ人目のつかない部屋に来ている。この部屋には、国王の他にモーゼと額にほくろのある大臣らしき人物、そして奏がいる。奏からすれば中央に陣取るにやけた笑みを隠せていない中年太りのカイゼル髭、その左右にいるほくろ男と白ローブの初老の男という3人の男と対峙していることになる。



 なんの罰ゲームかな?せめてこの場に王女がいれば救いはあったのに……。



「サオトメといったか?呼ばれた理由は分かっているな?」


「ええ。俺の能力の件ですよね」


「勇者として召喚されながら君は特殊能力や魔法を有していないとか」


「残念ながらそのようですね」



 にやついてるなぁ国王のおっさん。そんなに俺に能力がないのが面白いのか。実際は時を止めてあんたのその立派なカイゼル髭を引っこ抜くぐらい簡単なんだぞ。後で面倒になるからやらないけども。


 それにしてもわざわざ国王自ら俺に嫌味をいうために呼んだのか?暇すぎるだろこの人。



「この大陸を救うため大魔王を討伐するのにそれでは厳しいと思わんかね?」


「はぁ」



 何が言いたいんだ。このおっさんは。



「聞けば君は戦うことに反対だというではないか」


「出来ればですが」



 別に戦うこと自体が嫌なんじゃなくてあんたらの思い通りに動きたくないだけだ。とりあえず話を合わせておこう。



「いやぁ、わしも鬼ではないのだ。無力な人間を無理矢理戦わせるようなことはせんよ」


「戦わなくていいって事ですか?」


「ああ、好きに生きるがよい」


「それは……」



 その言い方だとここにはもういられないってことか。別にいたくもないが俺を追い出すために必死だな。しかし勝手に召喚しといてよくもまぁそんなこと言えたもんだな。さも自分の心が広いかのように上から目線で。


 あ!これって考えてみたら俺の希望通りの展開じゃん。よっしゃ!まさか国王自ら脱出を後押ししてくれるとは。国から追われず合法的かつ安全にここを離れられるチャンスだ。


 少しだけ心残りがあるとすれば瀬川ちなつと海老原琴美の二人のことだ。あまり話せなかったけど二人とも優しい子だったし、瀬川ちなつにもツインテになってもらってクラスのアイドルとマスコットのダブルツインテール姿を拝みたかったなぁ。想像したら興奮してきた。絶対いつか頼もう……。



「何か不満か?ここに留まらせておくことはできないが多少の餞別くらいは渡してやるぞ」


「……いえ不満などありません。お気遣い感謝します」



 手切れ金ってやつか。このお金を貰った瞬間俺はこの国と関係がなくなるわけだな。やったね!あとはどこで俺が野垂れ死んでも無関係なんですね。分かります。





 

 こうして奏はやんわりと王城から追い出されたのだった。



 




「クラスの奴らに別れの挨拶もできなかったなー。あの二人にくらいは会ってから出て行きたかったけど、仮にも王国の勇者として活動する以上そのうち目立つだろうしまた会えるだろ」


 

 

 現在、奏は王城を出て王都を散策しながら歩いている。同時にまたもやひとり言を呟いていることに本人は気づいていない。アルガルドに来てから地球にいた頃より口数も増えてきている。こちらの世界の方が彼に合っているのか。または心の奥底で奏自身でも知らないうちに、一人で行動することに対する不安から来ているのか。あるいはその両方か――



 


 おお。王城から出てしばらく歩いたけど街並みは中世のヨーロッパって感じだな。魔法があるから地球の中世よりは発達してるだろうけど……。そして、道行く女性の美人率が高く、男性はマッチョ率が多い。


 さて、これからどうしようか。喜んで出てきたのはいいけど何も決めてないんだよなぁ。冒険者登録はこの街でする気はないしなー。時間停止能力を確かめたいし、とりあえず王都から出るか。時間停止を使うことでリスクみたいなのがあるかもしれないから、まだ街の中では使いたくないな。ばれることはないとは思うが時間停止能力はできるだけ人に知られたくないし……。





 

 

 この時の奏はまだ知る由もなかった。王都を出てすぐの平原で出くわす魔物の恐怖を……




 


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