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ステータス

 窓から差し込む朝の優しい日差しを浴びながら奏はうっすらと目を開けた。


 

 見慣れない天井だ……。



 「そうだった。ここ異世界だった」



 奏にしては非常に珍しいひとり言を呟きながらゆっくりと体を起こした。朝に弱い彼もさすがに10時間以上寝れば自然と目が覚める。もっとも体を起こしてから3分間はいつものようにその場から動けず、ぼーっとしながら前方を見つめているだけなのだが。徐々に頭の中がクリアになっていき、ベッドから降りたタイミングで部屋のドアがノックされた。



「サオトメ様、起きておられますでしょうか?」



 この声は……。ああ、昨日のメイドさんか。



「ああ、起きてるぞ」


「今日の予定を確認させていただきますので入ってもよろしいでしょうか?」


「どうぞ」



 扉が開き入ってきたのは、やはり昨日部屋に案内したり食事を運んできてくれたメイドさんだった。こっちは昨日までただの高校生だったのに、ここまで丁寧な扱いをされるとなんだかむずかゆくなる。このメイドさんはいきなりやって来た俺たちを本当に勇者などと思っているのだろうか。いや、自分の仕事をこなしているだけで深くは考えてないのかもな。勇者でも勇者じゃなくても対応は変わらなそうだし。



「おはようございます」


「おはよう」


「今日の予定になりますが、朝食後に能力鑑定が行われる予定ですので謁見の間に案内いたします。鑑定後は、それぞれ自分の能力を正確に把握してもらうため訓練施設にて確かめてもらうことになります。何か質問はありますか?」


「いや大丈夫だ。少し緊張しているだけだ」


「そうは見えませんが……」


「そういう顔なんだ」



 なんてやりとりをして、朝食も終えてクラスの全員が昨日の再現のように謁見の間に集められた。





「勇者様方、おはようございます。昨日はよく眠れましたか?さっそくですが皆様方には自分の能力を把握して貰おうと思います」


「おはようございます、モーゼさん。能力を把握するにはどうすればいいですか?」



 今日も安定して勇者っぽいな沢木。なんか安心したよ。早く能力把握したくてウズウズしてるんだな。分かるよ、俺もだから。



「こちらが先に鑑定してもいいのですが、まずは皆様方自身で確認した方がいいでしょう。強くステータスと念じてみてください」


「それだけですか?よし、みんなステータスと念じるんだ!」



 いや、訂正する。いつも以上に張り切ってた。というか強く念じるだけでいいのかよ。ちょっとがんばれば昨日の時点で能力分かったんじゃ……。


 まぁ、いいや。とりあえず念じてみよう。ステータス!



 

 

 

サオトメ カナデ 男  天人 16歳


レベル1

HP15 

MP20


攻撃力:12

防御力:10

素早さ:15

魅力:60

運:50


【絶対能力】

時間停止(5s)

【特殊能力】

空き(5)

【魔法】


【称号】

異世界人、勇者、絶対神の孫









 目の前に情報が表示された。ゲームかよ!


 ん?あれ?……おおおおおっ!?じ、じ、時間停止だと!?自分の能力だがこれは反則だろ!なんでも出来るじゃないか!この能力があれば!


 あっ、でも5sってなってるな。5秒間ってことか?あとで確かめてみよう。それにしても神爺……。本当にヤバいものを与えてくれたな。神爺もどんな能力かは知らなかったみたいだが……。


 特殊能力の空きも気になるな。これはどういうことだ?他の奴らはどうなってるんだろう。


 周りを見回してみるとクラスの奴らがみんなして自分の目の前の何もない空間を凝視していた。なにこれすごいシュール。あぁ、自分のステータスって他の奴には見えないのか。そりゃそうか。見えたら鑑定なんて技術いらないもんな。


 いかんいかん。自分の能力把握に集中せねば。魔法は……ない。別に悔しくなんてないよ。異世界に来て魔法が使えるのを密かに楽しみにしてたとか全然ないから!それに諦めたわけじゃないし……。


 称号は……えっ、神爺って絶対神だったの?絶対神が何かは知らないけどすごいことだけは分かる。そうか。絶対神に貰うから絶対能力なのか。ほう、無駄な知識が増えたな。





「すげー!オレ特殊能力3つもあるぜ!」


「おれもあるよ!」


「あたし呪いなんて能力あるよ。かわいくな~い!」


「魔法吸収とかウケるんだけど」



 しばらく自分の能力について考察してたらクラスの奴らも自分のステータスを確かめ終わったみたいで騒ぎ始めた。気のせいかな……みんな自分の特殊能力が分かってるみたいなんだが。しかも、ちゃんと3つあるみたいだ。まさか俺のは空きっていう能力なのか?意味が分からん……。



「勇者様方、ご自身の能力の確認は終わりましたか?それではこれより皆様方の能力をこちらでも鑑定し、過去に実在したり似ている能力ならばアドバイスを差し上げたいと思います。では、各人のところへ私がこの黒い水晶を持って回りますので手をかざしていって下さい」



 まずいな。ついにこの時がきてしまった。あの鑑定の水晶がどのくらい詳細にステータスを調べるのかは分からないが絶対能力、特殊能力、魔法、称号、種族のすべてにおいてやらかしてる俺はどうすればいいんだ。助けて神爺。早くも孫がピンチだよ!


 そんな祈りも虚しく俺の順番が来てしまった……。



「では、手をかざして下さい」



 俺は内心冷や汗ダラダラで黒い鑑定水晶に手をかざした。



「これは……」



 モーゼの爺さんが言葉を失っている。やばいよ、ヤ・バ・イ・ヨー。



「大変申し上げにくいのですがこれでは大魔王と戦うのは難しいかと……。特殊能力と魔法がないのでは……」


「……」



 あれ?絶対能力がばれたわけじゃないのか?気になったのでチラッと鑑定水晶に映ってるステータスを見てみると――





サオトメ カナデ   男  


レベル1

HP15

MP20


攻撃力:12

防御力:10

素早さ:15


【特殊能力】


【魔法】




 

 情報量少なっ!雑魚と思われるのは腹が立つが、今回に限っては助かった。そういえば絶対能力と天人という種族に関してはほぼ伝説扱いなんだっけ。鑑定水晶ごときでは測れないのかもな。あーあ、焦って損したよ。



「勇者様方、私は陛下と話をしてきますので少しの間お待ちください」



 そう言ってモーゼはこの場から居なくなった。その途端、何ともいえない視線と空気が俺を襲った。


 わー。すごーい。男子たちが勝ち誇ったような顔を俺に向けてくるよー。沢木に至っては今にも死にそうな鳥のヒナを見るように憐みの視線を向けている。取り巻きの前園は、いつものいかつい覇気に満ちた目ではなく死んだ魚のような目で俺を見ている。どういう感情なんだそれは。島田はこんな時でも相変わらず俺ではなく沢木を見つめている。


 女子の視線はなぜか複雑だ。どう声を掛けていいか迷ってる感じなのかな。なんか、すごい同情されちゃってるな。まさか「実は時間を止められるんだ」とか言えないしなー。



「あ、あの奏くん!何があっても私と琴美ちゃんで守るから!」


「そうだよ!能力や魔法がなんですかっ。そんなものなくたって早乙女くんは早乙女くんだよ!」



 女の子に守ってあげる宣言されてしまった。励ましてくれる優しさは素直にうれしいのだが、同時に俺のライフががりがり削られていく……。



「俺は大丈夫だから。二人ともありがとうな」


「「うん!」」



 男どもの盛大な舌打ちが聞こえたが、そんなもん無視だ無視!



「お待たせしました。他の皆様方はメイドに案内させますので先に訓練施設にお行き下さい。サオトメ様、陛下がお話になりたいそうです。付いてきてください」


「分かった」


「早乙女……心配しなくても大丈夫さ。君の分も代わりに僕が悪を倒すから安心していいからね!」


「……」



 やっとモーゼが帰ってきたところで俺はあの国王と会うことになった。それと、沢木……もうツッコミどころが多すぎて自然と無反応になっちまったよ。ああ、存分に気の済むまで倒してきてくれ。


 



 こうして奏は国王のいる部屋へと案内されたのだった。






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