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またいつか

「お主に与えるのは絶対能力というものじゃ」


「絶対能力?」



 なんだかいかにもすごそうな名前だな。確か地球からアルガルドへ飛ばされる者は例外なく特殊能力を有することになるって話だったよな。その絶対能力も特殊能力のひとつなのだろうか?



「絶対能力というのはあらゆる能力の中で最上位となる存在じゃ。もちろん特殊能力よりも上じゃぞ?比べるのもバカバカしくなるくらいの差じゃ。具体的にどんな能力なのかは下界に召喚されてから確認せい。能力はアルガルドの大地に立って初めて開花するからのう。どんな能力になるのかは儂も詳しくは分からんのじゃよ」


「……そんなヤバそうな能力を俺が貰っていいのか?あと神なのに絶対能力の中身については分からないって大丈夫なのかそれ?」



 まぁ、絶対能力っていうのが確定してる時点でハズレはないんだろうけどさ。なんで神爺はこんなに俺に対して親切なんだろう。父さんが元部下ってだけではここまでならないだろう。たぶん部下って一人だけじゃないだろうしな。



「とある理由から過去に儂が絶対能力を授けた者は2人いてのう。いずれの能力も非常に強力だったから安心せい。そういえば2人目に能力を渡してからもう千年近く経つんじゃのう。早いもんじゃ」


「そんなに珍しい能力なのか……」


「この能力は儂しか授けられんからのう」



 Oh……。神爺はホントにすごいな。最初は疑ってすまなかった。



「あと説明してないことは……お主に親切にする理由じゃったか。はっきり言ってしまえば儂はお主を勝手に孫のように見てるんじゃよ」


「孫?」


「うむ。儂は親のいないゼノンを息子のように思っておったからのう。そのゼノンの息子なら儂の孫みたいなもんじゃよ」



 そういう理由なら納得だな。父さんがいないことで孫が心配で仕方ないのかもしれないな。でも、なんだかうれしいな。急に本当のじいちゃんができたみたいだ。



「そう思ってくれるか……。勝手に孫扱いして迷惑に思われるかと心配だったんじゃよ」


「優しいじいちゃんができて素直にうれしいぞ。しっくりきすぎて神爺呼びは変えられないけど……」


「儂もその呼び方に慣れてきたから別に問題ないわい」



 しかし、そうなると俺は神様の孫ということになるのか。ますます人間離れして行ってる気がする……


 あ、そういえば母さんのことについてもう少し神爺に聞かなきゃな。



「母さんってアルガルドのどこら辺にいるのか分からないか?」


「うむ。正直言って分からん。儂も常にアルガルドすべてを把握しているわけではないんじゃよ。気になるのはアイリが〔神隠し〕によってアルガルドに帰還したことは確かなんじゃが、そのすぐ後に反応が消えたんじゃよ」


「それはよくあることなのか?」


「死体でも数時間は反応があるからのう。反応が消えるのはダンジョンに潜っているときだけじゃ」


「ダンジョンなんてあるのか……。ずっとダンジョンに留まることは可能なのか?」


「いや、まず人間は水や食料の問題があるからのう。しっかりと準備をしていない限り長くは潜らんよ」


「そうか……」



 アルガルドに帰ってきてすぐだから準備はしてないはず。ということは……最悪の場合、ダンジョン内で……。



「そのケースもあることにはあるが可能性は低いのう。アイリは相当腕が立つ冒険者だったんじゃよ。そこらのダンジョンに遅れをとることもなかろう。万が一、危険だと判断したなら引き返すはずじゃ」



 やっぱり母さん強かったんだ……。



「じゃあどういうことだ?」


「今から話すことは儂の推測なんじゃが、地球からアルガルドに飛ばされたことで元々持っていた特殊能力に加え新たな特殊能力に目覚めている可能性が高いんじゃよ。でじゃ、その能力で自身の気配を消している可能性が高いのう」



 母さんやっぱり元々特殊能力持ってたのか。


 地球から来た者は例外なく有しているって言ってたが……。神にも見つからない能力ってどんなだよ……。


 しかし、最悪の可能性が低いことが知れただけでもよかった。疑問なのは――



「そんなことする意味があるのか?」


「それは直接本人に聞いてみないことには分からんのう」



 まぁ、そうだろうな。



「アルガルドの人達ってどのくらいの割合で特殊能力を持ってるものなんだ?」


「アルガルドに住む6割ほどが特殊能力を有しておるのう」


「え?じゃあ、なんでガルズ王国はわざわざ勇者召喚なんてするんだ?特殊能力自体珍しくもないはずなのに」


「それは勇者召喚で呼ばれた者たちが有する特殊能力がアルガルド人が有するものより強力なものが多いからじゃ。加えて勇者召喚で呼ばれた者は特殊能力を3つ持っておる」


「そりゃ召喚するわけだ。で、ガルズ王国は勇者たちに何をさせようとしてるんだ。魔王が王国を侵略してるわけじゃないんだろ?」


「名目上はおそらく大魔王の討伐じゃな」



 おいおい。魔王と大魔王の何が違うんだ?大が付くことで強くなった感じはするけども……。



「大魔王というのは、凶悪な思想を持っている魔王が到達する最終段階じゃ。現在、確認されている魔王は先ほど5人と言ったが、元々は6人だったんじゃよ。その中の1人が大魔王になりおった。普通はそこまで悪に染まりはしないのじゃが……」


「何があった大魔王……。名目上ってことは他にも利用しようとしてるわけか」



 ゲスな臭いがするな。これは早めにガルズ王国から脱出した方がいいかもな。クラスの奴らはどうするんだろうか。正義感の強い沢木あたりは確実に王国に協力するだろうなー。それでイケメンな沢木が王女に惚れられたりする展開は十分にあると思います。いや~イケメンはいいねぇ。




 

 

 この発言をクラスの男子が聞いていたら確実に「お前が言うな!!」と突っ込まれたことだろう。幸いこの場には神しかいないのだが。




 

 

 まぁ、行ってみないと分からないけどな。とりあえず俺は母さんも探さなきゃいけないし、自由に冒険というのもしてみたい。可能性はほぼ0に等しいが、たとえガルズ王国が素晴らしい国だったとしても離れなきゃならないよな。


 そんなことを思っていると、またしても神爺がとんでもないことを言った。



「ああ、それと奏よ。お主の無表情と冷静な口調は天使の特性を引き継いだ天人の特徴でもあるんじゃよ」


「え?なんだって?」



 しっかりと聞こえていたが、一応もう一度聞く。



「じゃから、お主の無表情と口調は天人の特徴じゃと言ったんじゃ」



 長年、疑問に思ってたことがあっさり解決した……。


 じゃあ、父さんも無表情だったのか。でも、それだと天人の俺が無表情なのは当然として母さんまで無表情なのはなんでだ?あの人は人間だろう。



「天使はどんな時にも冷静で焦りや不安を表情に出さない異性を好む傾向があるんじゃ。天人にはこの特性はないようだがのう。じゃから普通は天使同士で結ばれるんじゃが、アイリは天使と同等以上に清々しいまでに無表情でのう。そんな人間を初めて見たゼノンが一目惚れして猛アタックした結果、現在のお主がいるんじゃよ。」


「母さんは素で無表情だったのか……」


「アイリの奴はゼノンが天使だと最初知らなかったようじゃが。天使が地上に降りる時は人間に姿が変わるから無理もないがのう。後からゼノンが天使だと知った時も少しだけ眉がピクリと動いただけだったようじゃ。そこにゼノンがさらに惚れてのう……」



 神爺よ。そんな母さんと父さんの特殊な惚気話はいらないよ……。



「昔は天使と人間の間に生まれた表情のない天人を不気味に思い、呪われた子と蔑む風潮もあったんじゃよ。天使の子供だと証明できればよかったんじゃが、天使は下界では人間の姿だからのう。信じる人は少なかったようじゃな。もう五百年以上も前の話じゃがな」



 そんなわけで次第に天使が人間と結ばれることはなくなっていったらしい。父さんは五百年ぶりに人間と結ばれた天使だったわけだ。


 アルガルドよ。待っていろ。久々の天人が今から行くぞ。



「聞きたいことは大体聞けたかのう?」


「ああ。聞くべきことは聞いたと思う」


「では……。そろそろお別れじゃな」


「もう会えないのか?」


「お主は天使の血を受け継いでるからのう。また会える時が来るじゃろう」


「色々世話になったな。神爺……ありがとう」


「うむ。孫を心配するのは当然のことじゃ。アルガルドで自由に生きてみなさい。それと、友人や仲間も作った方がいいのう。天人のお主は完璧な無表情の天使と違い、表情を変えることができるかもしれんからのう。昔、部下に笑った天人の話も聞いたことがあるから確かじゃぞ」


「そうなのか。できるだけ努力してみるよ」


「伝えるべき話はそんなところかのう……。では、クラスの皆のところまで飛ばすから元気でやるんじゃぞ?」


「神爺も元気で……。また会おう」




 



 そして、俺の体は不思議な浮遊感を感じると同時に白い光に包まれた――――









 


 ……何か奏に伝え忘れたことがある気がするが。なんじゃったかのう……。まぁ、儂の孫だし大抵のことは大丈夫じゃろう!









 



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