ロリコンの素養と手に入れた能力
ギルド長、168歳って……。地球だったら軽くギネスですよ。しかも、特殊能力が魔法反射って……。頭の反射はそういうことだったのか?こちらを笑わせに来てるのかな?いや、頭の件は能力関係ないような気がする。
「カナデ、また相手を凝視する癖が出てるわよ。まさか、ガルフィンさんも守備範囲なんてことは……」
「ちょっと後で話し合おうか、レクシャ」
「わしは昔からなぜか男にモテるんだよ。ノーマルなのでその想いに応えることができないのが申し訳ない。君もわしの魅力にやられたようだのう」
「……」
やられてないわ!168歳のお爺さんに恋する16歳の少年ってなんだよ!マニアックすぎるだろ。さっきから思ってたけどこの人もキャラ濃すぎ!俺には捌ききれないよ。この世界ではコミュ障とか言ってられないな……。
あぁ、ダメだと分かっててもつい珍しいステータスだと凝視してしまう。でもしょうがいないよね。だってすごく気になるんだもの。好奇心には勝てないことがよく分かった。
「ギルマス……、気持ち悪いからやめてくれ!あんたのせいで坊主が無表情で固まってるぞ。その本気なのか冗談なのか分からない言葉で精神的ダメージを負う奴もいるんだぜ」
「全く本当に失礼な奴だのう。ギルド長に気持ち悪いとか言うのはお前さんぐらいだぞ。まぁ、いい。とりあえず解散だな。ジャック、お前さんはもう少しここに残ってくれ」
「あいよ。坊主たちは先に宿に帰っててくれ。今日は疲れただろ。それと何度も言うがありがとな。こうして無事にディーレの街に帰ってこれたのは坊主たちのおかげだ」
「ああ。謙遜しすぎてもあれだから素直に受け取っておくよ。あと、オッサンもギルド長への仲介ありがとうな。助かった。これでこの件は終わりにしよう」
「ったく素直じゃないぜ。しかし、坊主は根がいい奴だってはっきり分かるな!ってことでじゃあな~」
「俺はいい奴なんかじゃないぞ……。またな」
「(そうよ!カナデは素直じゃないのよ!もっとわたしに優しくしてくれてもいいのに。あれ?わたしってカナデに甘えたいだけなんじゃ……。なんなのよこの気持ちは!)おじさん、またね!」
「(そうです。師匠は素晴らしい人なのです!もっと師匠の事を知りたいです)ジャックさん、さよなら……です」
そんなこんなで宿に帰ってきたわけだが、宿に入った瞬間何かが俺に抱きついてきた。びっくりしすぎて声も出なかった。よく見たら抱きついてきたのは赤茶の髪を後ろで三つ編みにした笑顔の幼女だった。なんだこの素敵なイベントは!
「パパを助けてくれてありがとー」
「パパ?」
「うん。ジャックパパ。それでお兄ちゃんに抱きついてきなさいってママが言ったの」
「なるほど」
そういえばジャックのオッサンは最初あった時に「かわいい娘たち」って言ってたっけ。この幼女はオッサンとルミアさんの娘でケイミーちゃんの妹なのか。
ふと受付を見ると、ルミアさんが笑顔で手を振っていた。お礼に幼女を使いに出すとは……。あの人分かってるな。ロリコンじゃなくてもこれは嬉しい。ロリコンじゃなくてもね。
それより、横にいるレクシャとルノワールがこちらを生暖かい目で見ている。何を思ってそんな目をするんだろうか。
(幼女が自然にカナデに抱きついてる。わたしも幼女になれば……!何を言ってるんだろうわたし)
(もしかして師匠は小さい子が好きなのです?身長だったら私も小さいはずです)
俺は幼女をそのまま抱っこして、ルミアさんの所に連れて行った。ルミアさんが既に今回の件の情報を知ってるってことはギルドの一階で待ってた冒険者が報告に来たんだろうな。たぶん。
「そうやってるとソーニャちゃんのお兄ちゃんみたいね。抱っこしてもらってよかったわね~ソーニャちゃん」
「うん!お兄ちゃんの抱っこ好き!」
!?
なんという破壊力だ!愛くるしさが留まるところを知らない!なんだこの感情は!いや、ダメだ!一旦、落ち着け俺!戻れなくなるぞ!
ふぅ……。
この子はソーニャというのか。しかし、お兄ちゃんってなかなかいい響きだなぁ。一人っ子の男子なら大抵の人は「お兄ちゃん」呼びに憧れる時期があるんじゃないだろうか。俺だけじゃないはず……。
この素敵イベントの後、俺たちは夕食を一時間後とし各自の部屋に戻った。
さて、俺には〈確認〉しなければならないことが山ほどある。まずはこの世界の人々の寿命から行こうか。先生お願いします。
『アルガルド人の寿命』
寿命は種族または魔力量により変わる。単純に魔力量が多い個体は長生きできる素養を持っている。逆に魔力量が少ない個体はその素養を持っていない。若い内から魔力量が多いと、外見も比較的若いまま年をとることが判明している。また、魔力量関係なく最初から長命な種族も存在する。中でも、<エルフ族><妖精族><天使族><天人族><竜人族>などは長命とされる種族である。魔力量を増やすためにはレベルアップが効果的だが、そのためには魔物やモンスターを討伐するのが一番効果的である。寿命を増やすために魔物を討伐しに行き、死亡するという本末転倒な事案も多い。レグルス大陸における冒険者の平均寿命は58.34歳、それ以外の人々の平均寿命は79.21歳であることがこの特殊能力によって〈確認〉できる。他の大陸については不明。
まじか……。冒険者の平均寿命低いなぁ。それだけ冒険者は危険ってことだろうけど。この街のギルド長みたいに冒険者になって長寿になる人もいるけど、それはほんの一握りなんだろうな。普通に暮らしてる人たちの方が平均寿命が高いとは……。なんとも言えない。
それにしても天人って長命な種族だったのか。だったら元々長命な種族が順当に魔力量を増やしていったらどうなるんだろう?まぁ、そうやって調子に乗って魔物に殺されるケースもかなりあるみたいだけどね……。
一応、長命な種族の寿命だけでも〈確認〉しとくか。自分の種族も含まれてることだし。
『エルフ族・寿命』
エルフ族は300年以上生きるとされている。元々魔力量も多い種族のため1000年以上生きる者もいる。1000年以上生きているエルフはハイエルフと呼ばれる。エルフの数は人間と比較すると遥かに少ない。
『妖精族・寿命』
妖精族は寿命という概念があるのかどうかが不明であり、どのように妖精が生まれてくるのかも不明。詳細が謎に包まれている種族である。妖精の存在自体は確かに確認されており、何千年も同じ場所に留まる妖精の話も伝承に残っている。
『天人族・寿命』
天人族は200年以上生きるとされている。元々の魔力量は少ないが、天使同様レベルが上がるにつれて魔力量が異常に上がる。現在、我が主を除いて存在は確認されていない。
『天使族・寿命』
天使族は500年以上生きるとされている。滅多に地上には降りてこないため種族として信じる人は少ない。
『竜人族・寿命』
竜人族の祖先は魔物と呼ばれる生物の中でも最強の一角のドラゴンとされている。そのため竜人族の寿命はドラゴンのものに近いものとなっている。最低でも700年は生きるとされている。エルフ以上に数が少ない種族の一つである。
わぁ……、世界って広いんだなぁ。本当に地球での常識は捨てた方がいいなこれは。妖精族とか普通に魔法があるこの世界でもファンタジー的扱いなんだな。ぜひ会ってみたいものです。
というか〈確認〉先生、俺のことは主っていう認識なんですか!?確実に一つの人格が形成されつつある気がする……。俺が〈確認〉能力を先生と呼び、向こうは俺を主と呼ぶ。よく分からないけど意味深な関係万歳!
寿命については、とりあえず若い内に魔力量増やした方がいいってことだね。その分危険は増すけども。
で、神爺との話を思い返すとアルガルドで〔神隠し〕に遭って地球へ行った人は魔力とか一切なくなっちゃうのか……。なんかそれも悲しいな。そもそも見た目が人と違う種族が地球へ行った場合ってどうなるんだろうか?向こうの神様の万能っぽい調整って力で姿を人に変えられるのかな。なんかやだなそれ。
さてと、次は本命の特殊能力と称号だ。偶然にも手に入れたいくつもの新たな能力。果たして俺に扱いきれるのだろうか?たとえその身に強大な能力を有していても、それを扱いきれないなら意味がないからな。本当に〈確認〉能力がなかったらと思うとゾッとする。おそらくマルスは奪った能力の詳細とか知らなかっただろうなぁ。
まずはステータスを開いてと……。
サオトメ カナデ 男 天人 16歳
レベル6
HP125
MP147
攻撃力:118(+24)
防御力:106
素早さ:124
魅力:60
運:50
武器:レダの剣(攻撃力+24)
【絶対能力】
時間停止(10s)
【特殊能力】
確認、万能無限箱、貫通、水中呼吸、追跡、口封じ、取得経験値2倍、千里眼、空き(3)
【魔法】
【称号】
異世界人、勇者、絶対神の孫、下剋上、裁く者
〈貫通〉
自由発動型。こちらの攻撃力が相手の防御力を上回っている場合、相手の装備や装甲に関係なく体に穴をあける特殊能力。穴をあける時、相手に触れる面積が小さいほど貫通威力は高くなる。
〈水中呼吸〉
常時発動型。海水、淡水問わず水中で呼吸ができる特殊能力。時間制限などはない。
〈追跡〉
自由発動型。一度自分の目で見て記憶している対象に限り行使できる特殊能力。追いたい対象を頭に思い浮かべることで、そこに到達するまでのルートや位置情報を正確に把握できるようになる。対象との距離が海を挟んで別大陸にまで離れた時、能力の効果は徐々に薄れていく。
〈口封じ〉
自由発動型。相手の口を文字通り封じることで魔法の詠唱などを妨害する特殊能力。複数人に対して行使することも可能。効果範囲は自分を中心に半径15m以内。一度に封じられる時間は1分で、リキャストタイムは30分。
〈取得経験値2倍〉
常時発動型。魔物やモンスターを討伐した時に得られる経験値が2倍になる特殊能力。この効果は自分に対してのみである。たとえ複数人と協力しての戦闘だったとしても他人に効果が及ぶものではない。
〈千里眼〉
自由発動型。魔眼ではなく神眼の一種に分類される。何かを見ることに特化した特殊能力。常人では遠すぎて見ることができないものも細部まではっきり見ることができる。また、能力はこの遠隔視だけではなく本人の成長次第でさらなる能力に目覚める可能性もある。
《裁く者》
天使または天人が殺戮者の称号を持つ者を討伐した時に与えられる称号。断罪魔法の威力が大きく上昇する恩恵がある。
ふむふむ、なるほどね。すごく自分が強化された気がするけど、これは使いこなせないかもしれない。てか〈貫通〉強くないかこれ?突きという一点においてはこの特殊能力こそ最強なんじゃないだろうか。体に風穴があくほどの威力だもんなぁ。レクシャの〈伝力〉が内部破壊だとしたら、この〈貫通〉は外部から問答無用で突き入れる感じか。単純な厄介さでいったらレクシャの方が上かな。
そして、魔眼の一種かと思ってた〈千里眼〉はどうやら神眼だったらしい。あぁ、本人の成長次第ってワードが出てきてるよ……。ということは、まず間違いなくヤバい能力だよ!遠隔視だけでも相当すごいと思うけどね。やっぱ能力手に入れたことをパーティーはもちろん、オッサンに言っといた方がいいよな。元々はオッサンの友達の特殊能力だったわけだから、筋は通さないと。人としてダメな気がする。
というか《裁く者》の説明にある断罪魔法って何ぞ?火とか水じゃなくてそういう魔法もあるのかよ。そもそも断罪魔法を使えなかったらこの恩恵、意味ないじゃん!初級魔法すら使えない今の俺にはちょっと考えられないような魔法だ。流れからして天使や天人に関係した魔法なのかな?〈確認〉先生からの応答はない。どうやら自分で考えるべき事案らしい。
よし、一応確かめるべき事柄はもういいだろ。夕食時間まであと40分以上あるな。疲れたし少しだけ寝ようかな。
ベッドにドーン。
少しだけ眠った後、ふと両側から若干の圧迫感を覚えた俺は徐々に意識を覚醒させた。そして、交互に左右を見てみるとレクシャとルノワールに挟まれて眠る形になっていた。
えっ、なにこの状況……。