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鬼畜無表情vs外道強奪者

 マルスはいきなり攻撃してくるわけでもなく、その場から動かない。



「君さぁ、なんでぼくの支配が効かないの?顔を合わせてから10分は経ったのにおかしいよねぇ」


「は?」



 そして、不貞腐れた様子でしゃべり始めた。



「ぼくが何も考えずに一人で喋ってると思った?君をこの冒険者たちのように、支配するための時間稼ぎだったのに……、つまんないなぁ。まずは君を操って、ぼくが連れてきた冒険者たちを抵抗虚しく殺させようと思ったのに。はぁ……。イライラするから、まず君と仲が良さそうなこの人に死んでもらおうか」


 マルスはそう言って、横に立っているジャックのオッサンの心臓に剣を突き刺そうとした。鎧など気にした様子もなく、おそらく特殊能力で胸に風穴を開けようとしているのだろう。亡くなった冒険者たちのように……。


 

 その瞬間、迷うことなく俺は時間停止を発動させた。


 許された時間は10秒。ためらっている場合ではない。



「この外道が……」




 俺は即座にマルスとの距離を縮め、まず剣を持っている方の手首の内側を、黒狼石の短剣で勢いよく切り裂いた。称号の下剋上により、こちらの攻撃力がマルスの防御力とほとんど差がない状態なので、皮鎧を纏っていない部位ならば難なく切り裂ける。


 硬化能力だけが心配だったが、どうやら自由発動型だったらしい。能力が発動している様子はない。


 奥深くまで切り裂かれたマルスの手首からは、止めどなく血が流れ出ている。続けて握る力が弱まったその手から剣を奪い、さらに攻撃力を上げた状態でマルスの喉元に奪った剣を突き刺した。ここまでで使った時間は7秒。


 さらに残り3秒を使い、短剣でマルスの両目を素早く連続で切り裂いた。時間停止中は相手のHPが減らないので、もしもの時の保険である。



 時間停止が解けた直後、マルスは声にならないうめき声を上げてその場に倒れた。目、喉、右手首からはそれぞれ大量の血が流れている。これだけボロボロにも関わらず、奴のHPは奇跡的に2だけ残っていた。



 マルスは必死に何か言葉を口にしようしてるみたいだが、声帯を切り裂かれているためただ口をパクパクしている。


(なにが、起き……た?なぜ、ぼくが……倒れてるんだ?死ぬのか?選ばれし、このぼくが。……ありえない!ぼくは女神に愛されているんだ……。痛い、死にたくない、ふざけるな!誰か……、誰か助けてくれ……!こんなの嫌だぁ……)



 マルスは仰向けで倒れながらも、最後の力を振り絞り、空に向かって何かに縋るように必死に手を伸ばしている。当然、その手をとる者は誰もいなかった。数秒後、マルスの手は力なく地面に落ちた。



 血の匂いが漂う中、俺は少し離れた所からマルスが絶命したのを見届けると、ジャックのオッサンたちの所へと急いだ。




「ジャックのオッサン大丈夫か?」


「ああ、大丈夫だ。よく分からなかったが見事だったな!」



 オッサンのステータスを〈確認〉したところ、ちゃんと能力が戻っていた。これで戻ってなかったらどうしようかと思った。というかオッサン見てたのかよ。



「なんだ意識があったのか」


「体が言うことをきかなかっただけだからな。まぁ、なんていうか、ありがとよ!マジで死ぬかと思ってたからな」


「無事で何よりだ」



 その後、オッサンの後ろにいた冒険者たちも口々にお礼を言ってきた。そして、俺がFランクの冒険者だと分かると全員驚愕していた。そりゃそうか。ルーキーだとは思わないよな普通。Bランクの魔物にも挑んでるわけだし。


 しかし、本当に無事でよかった。結局、限定支配の詳細は分からなかったけど。なんで俺には効かなかったんだ?あと、どうやら人を殺してもレベルは上がらないらしい。頭の中に音が鳴らなかったからね。



 ああ……、人殺しか。状況的には仕方なかったけど、やっぱ精神的にきついな……。いくら相手が外道でも冷静になると色々考えちゃうよなぁ。この世界では悪人は死んで当然みたいな感じだし、俺も慣れてきて、その内何も思わなくなったりしてな。それはそれでどうかと思うけども。



 俺がそんなことを思っていると突然、万能無限箱の中からテレパシーが飛んできた。



(カナデ無事なの!?)


(師匠!返事をする……です)


(ああ無事だ。ツッコミたいことがあるが今は二人を箱から出すことが先だな。ちょっと待ってろよ)



 一瞬、ジャックのオッサンたちがいる状況で出現させるのもどうかと思ったが、既に見られていたことを思い出し、どうでもよくなってしまった。


 扉を出現させ、出る許可を出すと扉が開いてひょっこり二人が顔を出した。そして二人は、こちらの姿を視界に収めると勢いよく扉から飛び出し、ぺたぺたと体を触り始めた。



「カナデ!無事でよかった!怪我はない!?」


「心配した……です!」



 おお!俺は今、女の子に体をぺたぺた触られてるぞ!幸せだ!気分は最高だ!いつまでも悩んでる場合じゃないな。結果からして大切に思ってる人たちを守れたんだ。これ以上の結果があっただろうか?いや、ない!



「二人とも心配かけたな。全部終わったから大丈夫だ」


「よかった。中にいる間は外の様子が分からないから……」


「師匠なら勝つと信じてた……です」



 こんなに心配してくれるなんて、なんていい子たちなんだろうか!ルノワールはもう俺のことを完全に師匠と呼ぶことにしたらしい。まぁ、好きにさせとこう。


 それより、ツッコミたいことがあるんだった。



「それにしても、箱の中でどうやってテレパシーを飛ばしてきたんだ?」


「ああ、そのことね。どうにかしてカナデの様子を知りたかったからルノちゃんと一緒に箱の中を調べてみたんだけど、扉以外何にもないのよ。それで扉に触れたらどういうわけか、カナデにテレパシーを飛ばすのに成功したってわけ!」


「そういうわけ……です」


「なるほど……。全然分からん」



 どうやら、箱の中の扉に触れると俺に何かを伝えられるらしい。扉は俺の一部ってことになってるのか?俺の特殊能力なんだから間違いではないのか。まぁ、細かいことはいいか。


 このタイミングでジャックのオッサンがこちらに声を掛けてきた。



「いちゃいちゃするのは構わないが、一つ聞きてぇんだがよ」


「どうした?」



 レクシャが顔を赤くしながら、いちゃいちゃに対して異議を申し立てているが気にしないこととする。



「あのBランクの魔物をどうやって街まで運ぶ気だ?ボバートは全身素材らしいぞ。しかもあれは変異種だから相当金が入るぞ」


「ああ、それはだな」



 俺はエクス・ボバートの死体の前まで行き、万能無限箱へと繋がる扉を出して開いた。すると思惑通り扉より大きいボバートの死体は吸い込まれるように箱の中へと入っていった。うん、ホント万能。


 

 ジャックのオッサンは呆れた顔で、「なんでも入るんだな、その箱……」と呟いていたけどスルーする。


 そして、亡くなった冒険者たちとマルスの死体を箱に入れて、皆でディーレの街へと帰還した。


 帰る途中、ほんの少しだが目に違和感を感じた。そこで、なんとなく異常はないか自分のステータスを見てみることにした。



サオトメ カナデ  男 天人 16歳


レベル6

HP125

MP147


攻撃力:118(+1)

防御力:106

素早さ:124

魅力:60

運:50


武器:折れた青銅の剣(攻撃力+1)


【絶対能力】

時間停止(10s)

【特殊能力】

確認、万能無限箱、貫通、水中呼吸、追跡、口封じ、取得経験値2倍、千里眼、空き(3)

【魔法】


【称号】

異世界人、勇者、絶対神の孫、下剋上、裁く者







 ……ん?


 



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