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消えた能力の行方

 ぞろぞろと奏たちの前に現れたのは、10人程の武器を持った冒険者らしき集団だった。


 そして、その中には――



「オッサン……」



 見覚えのある鎧を着て、これまた見覚えのある大斧を持ったジャック・ハーミルトンの姿があった。



「坊主たち!無事か!?」



 ジャックのオッサンは、こちらの姿を目にした瞬間、慌てた様子で安否の確認をしてきた。急いで来たのだろう。肩が大きく上下している。



「ああ、なんとか」


「わたしたちはこの通りなんとか無事よ。でも、あの人たちは……」



 レクシャはそう言って、視線を少し遠くに倒れている冒険者たちに移した。



「あいつらとは若い頃ランクを競ったりしたことがある。冒険者としての腕は確かだったんだが……。ったく……、死んじまったらそれまでだってのによぉ。無茶しやがって……」



 その場にいる全員が沈黙してしまった。


 ジャックのオッサンの知り合いだったのか……。



「それでも坊主たちは生きてたんだ。最悪の結末じゃねぇ。武器屋のババアに、ルーキーが大森林へ行ったと聞いた時には気づかなかったが……。まさか坊主たちだったとはな」


 

 別に俺たちを助けにきたわけじゃなかったのか。



「ジャックさん、これが回収した冒険者たちのプレートとカードよ」


「ん?おお回収しといてくれたのか。礼を言うぜ」


「冒険者としてこれくらい当然よ」


「その当然をしない奴も……って、あれ?なんでこいつ特殊能力の所が空欄なんだ?確か、千里眼って能力を持ってたはずだぞ」


「そうなの?でも、ステータスカードに記載されるのは本人が亡くなる直前の情報よね。本当にその人は、千里眼っていう能力を持ってたの?」


「ああ、間違いねぇ。実際、俺は目の前でそいつの能力を見てるからな。遥か遠くまで見える能力だって言ってたぞ」



 どういうことだ?持っていた特殊能力が消えることなんてあるのか?そういうのは勘弁してほしいなぁ。特殊能力がいきなりなくなることはあるのか教えて下さい。〈確認〉先生お願いします。



『特殊能力・消失の可能性』

外的要因を除き、有している特殊能力が消えることはない。この場合の外的要因とは、他者からの特殊能力による干渉が多い。



 それって……、特殊能力に特殊能力で干渉するってことか?


 ということは、千里眼をどうにかした犯人がどこかにいるってことだよね。うわぁ、雲行きが怪しくなってまいりました。犯人はこの中にいる的な展開になるのかな?俺は、推理とか無理だからレクシャかルノワールにやって欲しいけど、二人ともかなり残念要素持ってるからなぁ。


 まぁ、この話は未解決事件として一旦保留にしよう。


 そもそも、なんでオッサンたちはここに来たんだ?そして、どうやってここまで追ってこられたんだ?この広い森の中で、この場所をピンポイントで特定するとかできるものなのか?



「う~ん。わたしの頭でいくら考えたところで、能力が消えるという謎は解けないわ。ルノちゃんはどう?」


「そういうのは……苦手です」


「なら、こういう時はカナデを頼るしかないわね!頑張って!」


「……」



 レクシャさんや。それ無茶振りとかいう次元じゃないぞ。〈確認〉持ってる俺じゃなかったら確実に迷宮入りですから。


 まぁ、謎とかは〈確認〉を使えばさらっと解決できるんだけどね。ここは頭を使って考えたふりをしながら解決という流れでいこう。そして、周囲の俺に対する評価を上げていこう。



「坊主、何か分かるのか?」


「ええ、まず何らかの理由で千里眼という能力が消えたことは間違いないでしょう」


「何でいきなり口調が丁寧なんだよ……。それにしても、やっぱりか!それで消えた原因は分かったりするのか?」


「特殊能力が消えたのは外的要因からとみて間違いないでしょう。なぜなら、特殊能力が自然に消えることはありえないからです」



 ここで、レクシャが俺の手に触れ、テレパシーを飛ばしてきた。すっかり慣れたものだな。



(どこからそんな知識仕入れてきたのよ!最近まで討伐証明部位とかも知らなかったのに)


(……あれはわざとだ。どこか抜けてる奴の方が警戒しないだろう。レクシャのためを思ってしたことだ)


(わ、わたしのため!?じゃあ、しょうがないわね)


(……ああ)



 許せ!レクシャ!男はいつでも格好つけたい生き物なんだ。



「自然には消えないのか。じゃあ、その外的要因ってのは……」


「ええ、間違いなく何者かの仕業です」



 決まった!


 何の推理もしてないけど、なんとなく決まった空気を感じる。



「マジかよ……」



 ジャックのオッサンが驚愕している。オッサンと一緒に来た冒険者たちも、かなり動揺しているようだ。



「それで、今度はこちらからの質問なんだが、ジャックのオッサンたちはどうしてここに?」


「ああ、それは……」



 ジャックが奏の質問に答えようとした時、唐突にそれを遮るものがいた。



「ぼくがここまで彼らを連れてきたんだよ」



 突然、冒険者集団の後方から声がして、ラフな格好の金髪の優男が前に出てきた。そして、ジャックのオッサンの横に並び立った。


 このタイミングでわざわざ出てくるとか、こいつ何者だ?



「どういうことだ?」


「説明をするより先に、ぼくの自己紹介をするね」


「……」


「ぼくの名前はマルス・チェンバースだよ。よろしくイケメンさん。でも、君ってすごく頭がいいよね。ぼくは素直に君を尊敬するよ!かわいい女の子にもモテるみたいだし、君の能力って――――」



 いやいや、名前とか聞いてないし。説明をしろよ!それにしても、何で強引に名乗り出てきたの?あのまま、ジャックのオッサンが話すんじゃだダメだったのか?何か途轍もなく怪しいなこいつ。底知れないっていうか、なんというか……。あまり、いい感じはしない。


 しかも、ずっと一人でしゃべってるし……。危ない人なのかな?


 とりあえず、ステータスだけでも〈確認〉しとくか。あとで、後悔すんのも嫌だし。



マルス・チェンバース 男 人間 24歳


レベル53

HP257

MP185


攻撃力:284(+24)

防御力:243(+23)

素早さ:265

魅力:31

運:29


武器:レダの剣(攻撃力+24)

防具:メルゼスの皮鎧(防御力+23)


【特殊能力】

強欲な手、貫通、必中、水中呼吸、追跡、チャージ、フリーウォーク、限定支配、口封じ、誘導、魔法威力増大・中、取得経験値2倍、千里眼、硬化

【魔法】

初級水魔法、中級風魔法、中級土魔法

【称号】

強奪者、殺戮者、驕る者




 



 あっ、犯人見っけ。




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