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それぞれの強さ

 エクス・ボバート戦を終えた奏たち三人は、精神的疲労から別の存在がいる可能性を忘れて、その場に座り込んでいた。そして、レクシャの伝力について振り返っていた。



「しかし、ぶっつけ本番でよく成功させたな。失敗したらとか考えなかったのか?」


「わたしもあんなにうまくいくとは思ってなかったわよ!二人が協力してくれなきゃ出来なかったことだし。それにあの時は必死で、失敗とか考える余裕がなかっただけよ」


「伝力は相手に近づけさえすれば、ほぼ確実に相手の内側にダメージを伝えられる……です。これはすごいこと……です」


「遠距離攻撃が主体の相手には難しいけど、それを言ったら贅沢よね」


「何もかも自分でやろうとしたらダメだ。そのためのパーティーだろ」


「そうよね!いずれ、わたしたちがアルガルド最強パーティーになるんだから!(そして、ゆくゆくは最強クランを作ったりなんかして……えへへ)」



 アルガルド最強か~。そもそもこの世界にいくつ大陸があるかも分かってないのにな。今いるレグルス大陸さえ相当デカいって言ってたし、まずは大陸一のパーティーかな。まぁ、そういう調子に乗りやすいところがレクシャらしくて可愛いんだが。



「お二人ともレベルが上がった……です?」


「そういえば、まだ確認してなかったわね」


「ああ、俺もまだだ」



 まだステータスを見てなかったことを思い出し、三人それぞれ自分の目の前の空間を見つめ始めた。



サオトメ カナデ  男 天人 16歳


レベル6

HP125

MP147


攻撃力:118(+1)

防御力:106

素早さ:124

魅力:60

運:50


武器:折れた青銅の剣(攻撃力+1)


【絶対能力】

時間停止(10s)

【特殊能力】

確認、万能無限箱、空き(3)

【魔法】


【称号】

異世界人、勇者、絶対神の孫、下剋上




 おお!?どこからツッコもうか迷うな……。


 とりあえず俺のステータスの上昇率はいつも通り異常だな。常に異常という矛盾。はい次。


 ついに停止時間が伸びたぁぁ!孫が成長したよ神爺。見てる?レベル5が最初の条件だったのかな。


 で、見逃すところだったけど、称号がさらっと増えてる。下剋上だってさ。獲得条件は〈確認〉するまでもないけど、一応お約束としてやっておこう。



《下剋上》

自分とレベルが40以上離れている、格上の存在を倒した時に与えられる称号。自分よりレベルが上の存在との戦闘時、攻撃力が+100される恩恵がある。



 かなりすごい効果だな。+100って言ったら普通の人間からしたら相当高い数字だよな。天人の俺を基準にすると、おかしくなるから考えないようにしよう。この称号は、レクシャとルノワールに付くことに最大の意味があるね。


 というか今さら気づいたが、パーティー戦って全員に経験値が入るんだな。トドメを刺した人だけとかそういうのじゃないわけね。今回は、全員が攻撃に参加したからかな?レベルが上がりづらい俺が一気に2つもレベルアップしたんだから、レクシャとルノワールはどれくらい上がったんだろう。勝手に〈確認〉してもいいが、この二人には許可を取ってからにしようかな。紳士ってことで二人からの好感度が……ムフフ。


 一応パーティー戦での経験値の入り方を〈確認〉しときますかね。



『複数人での経験値分配』

経験値分配の条件は、攻撃に参加し、各個人が魔物相手に一定以上のダメージを与えること。戦闘時、いくら近くにいたとしても、ダメージを与えていない者は経験値を一切獲得できない。止めを刺した者に対するボーナスはない。



 なるほど。だから、ドン・コッコピーポの時は二人に経験値が分配されなかったのか。しかし、そうなってくるとパーティーで盾役になる人って、不利だよね。ある意味一番、つらい役割なのに……。ドMでもないかぎり盾役をする人は少ない気がするなぁ。


 そういえば、ジャックのオッサンとかもあれだけ防御力が高くて、ガッチガチの鎧着てたのに、盾とかは持ってなかったもんね。確かデカい斧だけだったはずだ。


 もし、盾役の人がパーティーにいた場合、なんとかしてその人が攻撃して、ダメージを与えられる機会を作ってあげなきゃいけないのか。やっぱり、一人一人が攻撃を回避できるのがベストだな。


 おっ、レクシャとルノワールもステータス確認が終わったみたいだな。



「カナデ、ルノちゃん……、わたしもついに10レベルを超えたわよ!これでもうカナデに役立たずなんて言われなくて済むわ!称号もあったし言うことなしね!」


「おい、俺はそんなこと一言も言った覚えはないぞ」


「レクシャさん、おめでとうです!私もかなりレベルが上がってました……です!称号もあったです!」


「ありがとうルノちゃん!おめでとうルノちゃん!」


「もしもーし」



 聞いちゃいないな。ここでも女同士の友情を発揮しちゃってるよ。


 レクシャさんやい。俺がいつ役立たずなんてひどいことを言いましかねぇ。まるで、俺が鬼畜みたいな言い方だな。ちょっといじわるしてるだけじゃん!


 あと、レクシャの頭の中では、俺は既にレベル10以上だったんだな。レクシャのためにも、俺が未だにレベル一桁だということは黙っておこう。



「そういえばカナデはレベルどれくらいになったの?思い返してみると一回も聞いたことなかったわね」


「確かに、カナデさんは謎が多い……です。特殊能力の件もそうですし」


「……」



 うへぇ。黙っておこうと誓った傍からこれかい!いつかは聞かれるとは思ったけど……。


 まぁ、こんなこともあろうかと、少しは回避方法を考えてあるんだけどね。



「なんでそこで黙るのよ……、まさか!」


「なんだよ」


「あまりにも自分のレベルが高すぎて黙ってたのね!レベルの低いわたしたちに気を使って……、なんだか悪いことしたわね。ごめんなさいカナデ。あんたに追いつけるようにわたしも頑張らなくちゃね!目標が近くにいると、やる気が出てくるわ!」


「そうだったんですか?でも、それならあの目にもとまらぬ速さも納得……です!私も師匠に追いつけるように頑張るです!」


「……ああ、二人とも頑張れ」



 あれ?この勝手に二人が勘違いしていく流れ……、昨日も経験した気がするけど気のせいかな?まぁ、勝手に勘違いしてくれる分には、助かるし構わないんだけどね。


 実際、俺は一言も自分から高レベルだと言ってないんだし、無罪決定だね。


 あっ、そういえば二人のステータスをまだ〈確認〉してなかった。



「なぁ、二人のステータスを〈確認〉してもいいか?今後パーティーで活動する上で、リーダーは現状を把握しておくべきだと思うのだが」


「いいわよ。わざわざ聞いてから見るなんて律儀ね」


「どうぞ、好きなだけ見て下さい……です」


「それじゃあ遠慮なく」



レクシャ・レッドフォード 女 人間 15歳


レベル14

HP120

MP62


攻撃力:115(+5)

防御力:101

素早さ:107

魅力:35

運:20


武器:鉄の双剣(攻撃力+5)


【特殊能力】

 伝力

【魔法】

 なし

【称号】

下剋上




ルノ・ヴィノワール 女 猫獣人 14歳


レベル23

HP158

MP54


攻撃力:146(+13)

防御力:114

素早さ:205

魅力:33

運:15(-10)


武器:黒狼石の短剣(攻撃力+13)


【特殊能力】

気配遮断

【魔法】

 なし

【称号】

凶星、下剋上




 めちゃくちゃ上がってんじゃん!普通はこんなに上がるの!?


 これを見ると、俺とレクシャが比較的バランスタイプ寄りで、ルノワールは素早さ突出タイプだな。




「ど、どうだった?わたしのを見た感想は?」


「私の、変じゃなかった……です?」


「すごい上がったな。パーティーのリーダーとして二人を誇りに思うよ」



 二人の言葉がエロく感じてしまうのは、俺が変態だからだろうか?俺ってそんなムラムラしてたかな?否!俺が変態だという事実は一切ない。これは男なら誰でも感じることだ。うん。そうに違いない。そうであってくれ。



「ほ、誇りだなんて、カナデは大袈裟なのよ!でも、ありがとう」


「これからもお役に立てそうでよかった……です!」



 ああ、俺は幸せ者だなぁ。こんないい子達とパーティーを組んでるんだから。



 奏がそんなことを思っていると……。


 

 ルノワールの黒猫耳が突然ピクピクと動き始めた。


 

 そして――




「たくさん人が来る……です」



 一言、そう呟いた。



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