表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/38

何かがいる

 現在、奏たちは依頼にあった10匹の内、残り5匹のコッコピーポを討伐するため再び森の奥へと歩きながら、先ほどのことについて話していた。


「でも、ドン・コッコピーポが現れるなんてびっくりしたわよ。わたし一人なら殺されてたかもしれないわ」


「あの魔物は通常、ここら辺のまだ森の浅い領域には出てこないはずだった……です」


「普通じゃない事態ってことよね。報酬が高くなる分には助かるけどね。Bランクの魔物討伐の件で、森に入ってる高ランクの冒険者たちから逃げてきたとか?」



 今回は、討伐証明部位の中にドン・コッコピーポのくちばしと爪が混じっているので、クエストが成功した時の報酬が高くなるらしい。やったね!


 ちなみに、このドン・コッコピーポは、魔物としてのランクはDだが新人冒険者たちの間では恐怖の対象とされているらしい。なぜかというと、俺が時間停止を使わなければ、直撃していたであろう串刺し攻撃による死亡率が異常に高いからだ。ゲームで言う初見殺しというやつかもしれない。



「こんな広大な森で、冒険者たちの影響が出るとは思えないけどな。もっと可能性は低くなるが、Bランクの魔物にテリトリーを荒らされたとかだったりしたら面白いよな」


「面白くないわよ!」



 そういう魔物同士の生存競争みたいなものに、俺は少年心をくすぐられるんだが、どうやら分かってもらえなかったようだ。これは俺が変なのかな?



「そういえば、コッコピーポの襲撃でうやむやになったが、伝力の説明の途中だったな」


「そう!そうだったわ!」


「私もどんな能力なのか気になる……です」



 説明の途中で、再び襲撃されないことを祈ろう。



「レクシャの特殊能力は相手に触れることによって初めてその真価を発揮するものだ」


「触れる……。手で触るってこと?」


「それはレクシャの応用力次第だ。まぁ、言葉で説明するより実践した方が早いな。ほら、俺の手を握ってみろ」


「て、てて手を繋ぐってこと!?ま、まだそういうのは早いわよ!」


「レクシャさんだけずるい……です」


「二人とも何を言ってるんだ。能力把握のためだ」



 とか言いつつ、俺は今猛烈にドキドキしている。でも、しょうがないよね!今まで、女の子と手を繋いだことなんてないのだから!


 それでも表情に出ないんだから、自分の事ながらびっくりだ。というか本当は触れるだけでいいんだけどね!これも役得ということで許してくれ。


 いかんいかん!このままじゃレクシャに考えてることがばれてしまう!何か一つの物事に集中するんだ。よしっ、これで行こう!


 ツインテールツインテールツインテールツインテールかわいいツインテールツインテールかわ――――



「……レクシャ早く手を握ってくれ」


「わ、わかったわよ。こ、これでいい?」



 レクシャは顔を真っ赤にしながら、奏の手を握った。



「……」


「……」



 二人は無言のまま手を繋いで、30秒経ってもその場から一寸たりとも動く様子がない。そこで心配になったルノワールが二人に声を掛けた。



「だ、大丈夫……です?」


「……ええ、大丈夫よルノちゃん」


「ルノワール、大丈夫だ問題ない」



 大丈夫と言いながらも、明らかに二人の様子がおかしいことにルノワールが首を傾げていると、まずレクシャが奏に一言告げた。



「カナデ、あんたってツインテールフェチだったの?」


「……悪いか?」



 奏の意外な一面を知ってしまって、顔を赤くして無言になるレクシャ。なんとも微妙な空気である。


 そして、次に奏がレクシャに一言告げた。



「レクシャは俺のことを随分と好意的に見てくれてるようだな」


「……ばか」



 まるで付き合う寸前の初心なカップルみたいな空気になっている二人を、ルノワールは死んだ魚のような目で見ていた。



「お二人とも、大森林でイチャイチャはダメ……です。危険……です」


「ご、ごめんねルノちゃん!でもイチャイチャなんかしてないわよ!」


「すまなかった、ルノワール。俺がツインテールフェチなばかりに……」



 ルノワールが真面目に二人を注意し、二人が反省したところで、爆弾を投下してきた。



「もし、イチャイチャしたいなら私も混ぜてほしいです……」



 ルノワールもルノワールで残念だった。




 



 奏のツインテールフェチ発覚後、伝力についての応用はすぐには無理なので、時間に余裕がある時に特訓することになった。そして、三人はコッコピーポ捜索の為再び歩き出していた。


 休憩を挟みながらもしばらく歩き、段々と森の中に差し込む陽光が弱くなってきていた。湿気が増え、より一層木々が生い茂っている。それが意味するのは、森の浅い領域から抜け出そうとしていることを意味していた。そして、奏たちが大森林に入ってから、ちょうど4時間が経過しようとしていた。



「浅い領域に、ここまでコッコピーポがいないのは、おかしい……です」



 ルノワールが言うには、コッコ隊長以外のコッコピーポたちは普通、大森林の浅い領域に住んでるんだってさ。さっきのコッコ隊長は、やはり何か理由があって浅い領域に出てきていたらしい。


 浅い領域と言っても、広大すぎて、まだまだ探してない所の方が多いんだから、他の場所を探した方がいいかもな。


 

 遠くを見ながらそんなことを考えてた時だった。



 ん?


 あの巨大な木の近くに倒れてるの、あれコッコピーポじゃないの?



「なぁ、二人とも」


「どうしたの?」


「?」



 どうやら二人は、まだ気づいていないらしい。



「あそこに倒れてるのってコッコピーポだよな?」


「あっ、本当だ!それにしてもなんであんなところで倒れてるのよ。食べられてるわけでもないみたいだし」


「冒険者が狩った……です?あそこはもう、浅い領域ではない……です」


「とりあえず行って確かめてみよう」



 倒れているコッコピーポの所まで行くと、そいつが既に事切れているのが分かった。胸に大きな風穴が開いた状態で……。さらに言えば、その死体は討伐証明部位がすべて残っていた。やったのは冒険者じゃないのか?



「魔物の仕業……です?」


「胸にこんな大きな風穴を開ける魔物なんてルナちゃん知ってる?」


「いえ、こんな死体初めて見た……です」


「これは警戒しておいた方がいいな。とりあえず討伐証明部位はもらっておこう」


「ちゃっかりしてるわね。まぁ、賛成だけど」


「剥ぎ取る……です」



 剥ぎ取りを終え、三人で話しあった末、ここら辺は危険なので陽光差し込む、浅い領域に引き返すという結論に達した。いざ引き返そうとするとレクシャが、遠くの方を見て、その場から動こうとしない。



「どうしたレクシャ?」


「ねぇ、あれって冒険者とコッコピーポたちじゃない?」



 レクシャが、俺たちが来た方向とは、反対の方向へ指をさしながらそんなことを言い出した。



「本当だ。それもかなりの数だ……」


「血の匂いもしてきた……です」



 レクシャが指をさす方を見てみると、確かに人とコッコピーポが倒れているのが見えた。もはや、嫌な予感しかしない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ