表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/38

ルノワールの実力

 レクシャがいい子になる宣言をし、ルノワールの威嚇をなんとか静めた後、本来の目的のリュックを扉の中に入れた。リュックは吸い込まれるように、黒い空間に消えて行った。



「すごいわね!本当に入ったわ!」


「リュックが黒いのに食べられた……です!」



 ありゃ、ルノワールはまだ怖いみたいだな。こればっかりは慣れてもらうしかないな。その内、この能力の便利さに酔いしれるだろうさ。だって、超便利だもん、これ。



「でも、これだけ荷物が少ないって怪しまれないか?」



 現在、奏たちのパーティーの荷物は、レクシャとルノワールが、それぞれ腰に少し大きめのポーチを付けているだけである。



「これから行く大森林だと日帰りの予定で、クエストを受けてる冒険者もかなりいるし大丈夫よ。討伐証明を入れられるものさえ持ってればね。泊まり込みで討伐をする冒険者は、結構な荷物を持ってるけど」


 レクシャの言葉に、ルノワールが続く。


「それに、クエスト中は、冒険者が他の冒険者を気にする余裕はない……です」


「そうなのか」



 ほう、考えてみればその通りだな。みんな自分のクエストのことで頭がいっぱいだもんな。どうやら、自意識過剰だったらしい。あらやだ、恥ずかしい。



「でも、たまに討伐証明以外に毛皮とかを売れる魔物もいるから、日帰りでも大きい荷物を持ってる冒険者もいるわ」


「結局はそれぞれの冒険者次第……です」


「なるほどね」



 うんうん。とりあえず気にする必要はないってことだな!了解した!



「ここで、ずっと話しててもしょうがないし、そろそろ行くか」


「そうね!待ってなさい、コッコピーポ!」


「行く……です!」





 


 


 オルレオ大森林。そこは太古の昔から存在し、様々な生物が暮らす、自然豊かな場所。そして、未だに数多くの秘境が眠っているとされる場所である。しかし、人々は知らない。遥か昔、この場所が魔境の一つであったことを。




「Bランクの魔物って大変じゃない!コッコピーポどころじゃないわ!」


「でも、出くわす可能性は低い……です」



 現在、奏たちは大森林を目の前にして、ここに出現したというBランクの魔物について話していた。奏が大森林に入る前に、武器屋で聞いた情報を二人に話したからである。



 本来、Bランクの魔物とは、討伐するために平均Bランクのパーティーが2つ以上必要とされている。レベル10以下の新人冒険者がいるパーティーなど、まず遭遇してしまった段階でデッド・エンドである。


 ちなみに、今回奏たちが遂行するコッコピーポ10匹討伐は、Dランクの依頼である。現在、ルノワールがCランクの下位なので、受けることができた依頼だ。




「確かに、こんなに広い大森林で出遭う確率なんて低いわね。でも、これでディーレの街に冒険者が多かった理由が分かって、スッキリしたわ」


「私も理由までは知らなかったので、納得……です」



 うん。二人の会話を見守ってたけど、うまくまとまったみたいだな。



「よし、行こう」



 

 こうして、奏たちパーティーはオルレオ大森林へと足を踏み入れた。


 

 大森林の中は、陽光がよく届き、比較的明るい場所だった。


 ここはアルガルドなので、姿かたちは想像できないが、様々な種類の鳥っぽい鳴き声がいたるところから聞こえてくる。


 

 奏たちはコッコピーポを探すために、周りを注意深く見回しながら森の中を歩いて行った。



 森に入ってから、30分ほど経った頃、パーティーの先頭を歩いていたルノワールが突然、足を止めた。ルノワールの聴覚は、かなり発達してるので、すぐに状況の変化に気づける。可愛らしい黒猫耳をピクピクさせて、周りの様子を探っているようだ。


 そして一言。


「前から来る……です」と呟いた。



 数秒後、前方の木々の間からそいつは姿を現した。全身青色で、ゴブリンにくちばしと鋭い爪を足したような姿。間違いなく説明で見た、ファンシーな名前のアイツだ。


 ステータス〈確認〉っと。




 コッコピーポ オス 


 レベル10

 HP:42

 MP:0


 攻撃力:28

 守備力:19

 素早さ:18

 魅力:4

 運:9

 

 能力:切り裂き





 ゴブリンと違い、武器は持ってないな。いや、持ってないように見えるけど、能力からして鋭い爪がアイツの最大の武器なんだろうな。


 まずは、ルノワールの戦闘を見てみたい。



「ルノワール頼めるか?」


「了解……です」




 結果、コッコピーポの命は一瞬で散った。


 コッコピーポがこちらの姿を確認するや否や、「キエィィィィィ」と本当に奇声を上げながら突っ込んできた。その様子は、ゴブリンと同じくキモいという感情を奏に抱かせた。


 

 その突っ込んでくる様子を、冷たい目で見ていたルノワールは、意外と素早いコッコピーポの切り裂き攻撃を軽く躱し、瞬時にコッコピーポ背後に回り込み、首を掻き切った。首から青色の血が勢いよく吹き出し、コッコピーポは地面に倒れこみ、そのまま動かなくなった。


 一撃である。それも、おそらくオーバーキルだ。



 奏とレクシャはその光景を静かに見つめながら、素直にこう思った。


 

 ルノワール強くね?と



 そして、奏とレクシャは本気で決意した。



 レベルを上げようと。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ