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万能無限箱

 二つ目の特殊能力、万能無限箱を授かったので、奏はとりあえず詳細を〈確認〉してみることにした。



〈万能無限箱〉

常時発動型。上限無く、無限に収納できる箱を空間に出現させる特殊能力。人や物といった、生物・無生物問わず収納することができる。箱の中は、外より時間の流れが極端に遅い。箱の中で、生物専用・無生物専用など個別の空間に分けることも可能。人が箱に入る場合、箱から出る場合、どちらも万能無限箱保持者の許可が必要。ただし、保持者本人は箱に入ることができない。



 

 

 すげぇ……。本当に万能すぎて涙が出そうだ!出ないけど。


 とりあえず、これだけは言えることがある。


 人が入れるという事実を、レクシャとルノワールには黙っておこう。ルノワールは大丈夫かもしれないが、レクシャはほぼ確実に一回箱に入ったら、出てこようとしないだろう。怠けようとするに金貨2枚賭けてもいい。「その能力があれば、わたしたちが歩く必要ないわね!」とか言い出す可能性が非常に高い。


 俺は箱に入れないので、必然的に歩くのは俺だけになるわけだ。


 それって、もはや一人旅ですよね。


 目的地に向かって、一人黙々と歩く俺。そして、箱の中で飲み物でも飲みながら「もうすぐ着く?」と質問するレクシャ。俺が「まだ」と答えると、「遅い……です」と言うルノワール。


 最悪だ……。そんな展開は嫌すぎる。でも、ネガティブな妄想が頭から離れない!


 

 まぁ、実際にレクシャとルノワールがそんなことするわけないけどね!優しい子たちだからね!信じてるよ!信じてるけど、やっぱり人の出入りについて教えるのは、まだ保留だ。色々、試した後だな。


 


 あと、この能力は便利であると同時に危険でもあるな。


 極端な話、人を捕まえて箱に入れてしまえば、決して出れない無限牢獄の完成だ。俺が許可しないと、出られないってのはそういうことだ。いずれ悪党専用空間ができたりして……。ああ怖い怖い。




 



 さて、レクシャとルノワールには物を入れて運べる便利な特殊能力くらいの説明で納得してもらおう。



「二人とも聞いてくれ。その荷物どうにかなるかもしれない。人に聞かれたくないから、とりあえず門から出てしばらく歩こう」


「どうにかなるって……。どうにかしてくれるなら助かるけど。何かカナデが、とんでもないこと言い出す未来が見えるわ!ルノちゃん覚悟はいい?」


「大丈夫……です!たとえカナデさんが子持ちだったとしても、私は大丈夫……です!」



 レクシャは時々、妙に鋭いんだよな。これが以心伝心ってやつなの?それだけ仲が良いってことかな。やったね!


 ルノワールさんや……。君は一体何の話をしているのかね。誰が子持ちだ誰が!経験もないのにパパになるなんて、一生経験できないパターンだよそれ。もし、そうなったら童貞パパの育児日記でも書こう。





 三人は、西門から出て大森林方面へしばらく歩き、周りに誰もいないことを確かめると歩くのをやめた。



「誰もいないわね。さぁ、カナデいいわよ!どんなことでも受け止めてあげるわ!」


「いらっしゃい……です!」



 レクシャの今の発言には、ほんのちょっとだけどエロスを感じた。懐の深い、いい女っぽいけど、実際はただの好奇心なんだよなぁ。目がキラキラしている。子どもか!


 

 今回は、焦らさないでさっさと言ってしまおう。



「じゃあ言うけど、俺の特殊能力は一つじゃない」


「「!?」」



 おっ、驚いてるな。



「俺の二つ目の能力、それは……」


「そ、それは?」


「な、なん……です?」



 この二人見てると、つい焦らしたくなっちゃうな。


 反応が可愛いから仕方ないね!



「万能無限箱だ」


「万能?」


「無限箱……です?」



 二人が首を傾げている。まぁ、能力名だけ言っても分からんよね。



「子どもでも分かるくらい簡単に言うとだな、何でも入る箱だ」


「ちょっとだけ喧嘩売ってるように聞こえるけど、今は流してあげるわ。何でも入るって、本当に何でも?」


「このリュックも入る……です?」


「ああ、確実に入る。無限らしいからな」



 ルノワールからリュックを受け取り、箱が出現するイメージをした。


 

 直後、奏の目の前、いつもは自分のステータスが現れる、何もない空間に黒い扉が出現した。


 レクシャとルノワールの二人は目を丸くして驚いていたが、奏は違うことを考えていた。


 

 これは箱とは言わないよね。


 扉って……。人が入れる証明みたいなものじゃん!ちょっと!どうなってんの!


 案の定、レクシャが今まさに扉を開けて入ろうとしていた。肝心のリュックを置いて……。



 そして――



 ドゥム



 と鈍い音がしてレクシャが見えない壁に阻まれた。


 どうやら扉は開けられても先に進めないらしい。



 そうだった。箱保持者の許可が要るんだっけ……。危なかったー。レクシャの好奇心をなめてたよ。まさか、あんな得体のしれないものに入ろうとするとは……、無謀過ぎるぜレクシャさん。



 ドゥム


 

 ドゥム


 

 ドゥム



 断続的に、鈍い音が聞こえてくる。


 諦めろよ!レクシャ……。


 どうしても入りたかったらしく、涙目になって突撃しては見えない壁に阻まれている。


 かわいそうになってきたので一言アドバイスをした。



「いい子にしてたら、入れるようになるよ」



 途端に、レクシャの目がキラキラを取り戻し、「わたし、いい子になるわ!」と宣言していた。本当に扱いやすい女の子である。可愛い。



 ちなみに、ルノワールは扉が開いたあたりから、扉に向かって「フシャー!」としっぽを立てて威嚇をしていた。不気味で怖いもんね。仕方ないよね。可愛い。


 


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