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パーティー登録とコッコピーポ

 ルノワールを新たに仲間に加え、三人は西エリアの冒険者ギルドの前まで来ていた。現在の時刻は午前6:35。既にギルドの出入り口では、冒険者たちが出たり入ったりしている。



「私はいつものように気配遮断を使って入る……です」


「ルノちゃんが言うなら仕方ないけど、わざわざこっちが遠慮しなきゃいけないのが腹立つわよね!ルナちゃんは何も悪いことをしてないのに!」



 ルノワールが普通に冒険者ギルドに入ると、変な目で見られたり、嫌味を言われたりするので、いつもは気配遮断を使ってギルドに入るらしい。素材買い取りの受付では遮断を解くので、その際に冒険者たちにばれることは何回かあったが、普通はばれないそうだ。


 俺としては、ルノワールと一緒にいることで変な目で見られることに関して、別に何とも思わない。俺も地球にいた頃から、見られることに関しては慣れてるからだ。



「いや、普通に入ろう」


「どうして……です?お二人に迷惑をかけることになるんですよ?」


「カナデ、わたしもそれに賛成だけど何か考えがあるの?」



 考えか……。これじゃあ、誰も得をしない展開だからなぁ。



「レクシャも言ってたが、単純にこっちが遠慮しなきゃならない理由がないからなんだが……。ここのギルドを訪れるたびに、こんなことしてるようじゃ、ルノワールの境遇はこれまでと何も変わらない。俺たちと何事もなく行動している姿を周りに見せつけて、ルノワールに対しての認識を改めさせてやろう」


「カナデさん……」


「そうね!それでこそカナデよ!」



 まぁ、一番の理由は、こんなに可愛い猫耳少女と俺が一緒にいるところを周りに見せつけてやることなんだがな!不幸属性が消えたルノワールは、これまで以上に最強に可愛い存在だから、きっと周りの男どもは嫉妬するはずだ。これまで、ルノワールを忌避していた奴らは後悔することだろう。「なんで俺たちはこんな素晴らしい猫耳美少女に冷たくしていたんだろう」と。


 ふっふっふ。今更、後悔しても遅いのだ。ルノワールの近くにいる男は、激運である俺しかあり得ないのだから!小者っぽい考え方なのは分かっているが、やめられないし、止まらない。


 そして、俺はルノワールに対しての忌避の視線の代わりに、男たちの嫉妬の混じった敵意の視線を向けられる存在になるわけだ。


 一見すると穴しかない、微妙だけれども完璧な作戦だ!男の嫉妬をなめてはいけない。この作戦は成功すると俺は信じてる!


 あと大事なのは、ルノワールのフォローだな。



「それに、俺たちはルノワールのことを迷惑だなんて思わない」


「そうよ!ルノちゃんはこんなに可愛いんだから!」


「カナデさん、レクシャさん。お二人に出会えた私は幸せ者……です」



 レクシャと一緒に行動してて思うことだが、なんだか俺と思考が似てきてないか?元から持ってたのかは知らないけど、可愛いことが全ての理由であるみたいな考えを、レクシャも持ってる気がするんだが……。


 ルノワール……、俺たちと出会えて幸せって、嬉しいことを言ってくれるよ全く。俺たちもルノワールと出会えて幸せだから、お互い様だね!



「じゃあ、行こうか」



 

 こうして奏たちは、ギルド前で互いの絆を深めた後、ギルドの中に入っていった。






 



 奏たちがギルドに入り、二人の後ろにいるルノワールの姿を冒険者たちが見つけた途端、ギルド内は一瞬静まり、直後にざわめき出した。



「あれって、ルノワールだよな……顔は可愛いんだけどな」


「気をつけろ、近づきすぎると不幸がうつるぞ」


「一緒にいる男は誰だ?」


「昨日も見たけどあの金髪の女の子、好みなんだが……」


「あら~、いい男がいるわねん。食べちゃいたいわねぃ」



 入った直後にこれか……。


 一瞬、恐ろしい寒気を感じたが何だったんだろうか?


 ルノワールは俺とレクシャの服の裾をぎゅっと掴んでいる。


 

 

 奏とレクシャはルノワールを二人の間に移動させ、周りの視線から守るようにミザリーの所へと向かった。



「ミザリーさん、おはようございます」


「あっ!カナデさん、おはようございます。昨日、言ってた通り来てくれたんですね!今日からクエストを受けるんですか?それとも、こちらの受付で登録し忘れたことがありましたか?」



 今日も犬耳が活発に動いていて何よりです、ミザリーさん。カウンター越しで見えにくいが、ちょこちょこしっぽが揺れてるのが視認できた。しっぽ可愛いよしっぽ。



「ええ。クエストも受けますが、その前にパーティー登録をしようかと」


「パーティー登録ですね。リーダーとメンバーを教えて下さい」



 えっ、そんなのあったのか。リーダーとか全く決めてないんだけど……。ここは、冒険者として先輩であるレクシャかルノワールにお願いしようかな。



「リーダーはカナデよ!そして、メンバーはわたし、レクシャ・レッドフォードと、ほらルノちゃんもっ」


「ルノ・ヴィノワール……です!」



 おいっ!相談もなしにリーダー決めるんじゃないよ!というか俺がリーダーなら、なおさら相談しなきゃダメでしょうが!ルノワールも同意してるみたいだな……。解せぬ。


 それにしても、ミザリーさんはルノワールに対して特に何も思わないみたいだな。ルノワールが名前を言っても自然にしてる。また、ミザリーさんへの好感度が上がってしまった。



「はい、レクシャさんにルノさんですね。リーダーはカナデさんで、3人パーティーでの登録で間違いないですか?」


「間違いないわ!」



 レクシャ、リーダーにされた俺とさっきから全く視線を合わせないよね。このまま勢いで乗り切ってしまおうという魂胆が丸見えだぞ。



「パーティー名はどうします?」


「パ、パーティー名?どうしよう、考えてなかったわ」



 パーティー名とかもあるのか。かっこつけて、洒落た名前にしたら絶対後悔しそうだな。



「パーティー名は後からでも変更できますし、現時点で考えつかない場合は、保留でも大丈夫ですよ!」


「……どうするカナデ?」



 ここで俺に振るのか。今まで散々勢いでやってきて、ここで俺に振るのか。流石だぜレクシャ。君をなめてたよ。



「ここは、保留でお願いします」


「保留ですね。では、これから登録しますので皆さんの冒険者プレートを10分ほどお預かりします。登録完了まで少し待ってて下さいね」



 奏たちは各自の冒険者プレートを預け、待っている間、ギルドの左隅にあるクエストボードを見ていた。先程まで居た、他の冒険者たちは既にクエストに向かっており、ギルド内には人が少なくなっている。流石に朝から酒を飲んでる輩もいない。



 

 ルノワールが一つのクエストを手に取って、二人に見せた。



「これなんてどう……です?」


「コッコピーポ?」


「コッコピーポ10匹討伐ね!西門から出て真っ直ぐ行った所にある大森林にいるみたいね」



 なんだコッコピーポって。すごくかわいらしい響きじゃないか。とても討伐対象になるような魔物には思えないけど……。


 コッコピーポってどんな魔物なの?教えて〈確認〉先生。



『コッコピーポ』

ゴブリンにくちばしと鋭い爪を付けたような青色の魔物。身長はゴブリンより少し高い140cm程。また、ゴブリンより凶暴で、獲物を見つけると甲高い奇声を上げながら、襲いかかってくる。雑食だが新鮮な肉を好んで食べる。別名:鳥ゴブリン




 ……。


 よしっ!討伐決定。


 かわいらしい魔物を想像してたから、不意打ちをもらった気分だ……。


 というか誰だ!こんなファンシーな名前付けたの!小一時間、名前を付けた奴を問い詰めたい。それとも、鑑定でコッコピーポって出たから、コッコピーポなのか?あれ、どっちが先なんだ?鶏が先か、卵が先かみたいになってきたな。どっちでもいいか。どうせ、コッコピーポはコッコピーポなんだし。



 ああ……、コッコピーポのこと考えすぎて頭痛くなってきた。




 こうして、奏たちのパーティーとして最初のクエストはコッコピーポ討伐になった。




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