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出発前のあれこれ

 早朝、奏は窓から差し込む日の光を浴びながら、ふかふかのベッドで目を覚ました。いつものように3分間ぼーっとした後、行動を開始した。


 

 朝なのは分かるが今、何時だ?〈確認〉できるかやってみよう。



(現在)

午前6:00



 おお!できた……。


 便利だなぁ。昨日、宿に帰って、『かくれんぼ』の件についてもう一回謝ったから許してくれたのかな。


 しかし、アルガルドは暦と時間が地球と一緒だから非常に助かる。こっちに来た時に時差はあったけど、すぐに慣れたし、案外俺は順応が早いのかもな。自分のことなのに忘れがちだけど一応、天人だし。



 そんなことを考えているとドアがノックされた。



 このパターンは……。



「カナデ、起きてるわね?パーティー登録に行くわよ!」


「……」



 やっぱり、こちらの返事を聞かずに入ってきたなレクシャ。驚かないけどな。慣れって怖いね。しかし、野宿と違ってこういう時はちゃんと起きれるのか。いや~感心感心。



「な、何よ。人の顔じっと見ちゃって。何か顔に付いてる?」


「いや、ちゃんと起きられるんだなって」


「わたしを何だと思ってるのよ!」


「だってレクシャだし……」


「朝から喧嘩売ってんの!?買ってやるわよ!」



 よしっ、今日も安定してレクシャだな!安心した。



「……で、本当は?」


「え?」


「本当に一人で起きたのか?」


「……」



 少し問い詰めただけで、レクシャは無言になり、露骨に目を泳がせ始めた。



「レクシャ?」


「……起きた……わよ」


「知ってるか?人って嘘をつく度に寿命が一日減るんだってよ(嘘だが)」


「そんな!どうやったら戻せるの!?」


「え?」


「あっ……」



 レクシャに残念ツインテールの称号を贈呈したい。君は素直すぎるから、嘘をつくのに全然向いてないんですよ。面白いから教えてあげないけど……。まぁ、そういうところを全部含めて可愛いんだけどね!



「冗談はそれくらいにしておくとして、どうせルノワールに起こして貰ったんだろ?」


「最初から分かってたなら、こんなじわじわ追いつめるんじゃないわよ!」


「必死に隠そうとするのが面白くてつい……」


「この鬼畜無表情!さっさと準備しなさいよね!ばーかばーか!」



 レクシャが俺に小学生並みの悪口を言いながら、部屋を出て行った。鬼畜無表情って……。たぶん、人の悪口を言うのに全く慣れてないんだろうな。


 いい子だな~。




 準備を終え、三人で一階に降りるとジャックのオッサンが、受付付近で見たことのない女性と話していた。そして、ジャックのオッサンは俺たちの姿を確認して、笑いながら話しかけてきた。



「おい、坊主たち。昨日、冒険者ギルドに行ったはいいがパーティ―登録を忘れて帰って来たんだって?」


「な、なんでそれを、おじャックさんが知ってるのよ!」



 レクシャ……。慌てるのは分かるが、おじさんとジャックさんが混ざって、変な名前になってるぞ!なんだ「おじャックさん」って。ちょっと面白いのがくやしい。



「おじャックって誰だ!オレはジャックだ!それで、知ってた理由だが単に嬢ちゃんの声がデカかっただけだ」


「デカくないわよ!」



 いや、レクシャの声は確かに大きい。すごい可愛い声してるんだけどな。このツンツンした感じ……、どこかで聞いたことある声に似てる気がする。思い出せないが……。




「こらっ、あんまり若い子をからかわないの!全く、あなたの精神年齢の低さには妻の私もびっくりよ」


「ぐっ、ルミア……、痛ぇ!鎧の隙間からフォークを刺さないでくれ!」



 妻だと!?この人がジャックのオッサンの奥さんだったのか!フォークで刺すとか、なかなかに過激な人のようだ。赤茶の髪を後ろの高い位置で結んだ、ハイポニーテールをしている。背も高くて、若くて美人さんだな。やるな、オッサン!尻に敷かれてるみたいだけど、オッサンは幸せそうにしてる。仲の良い夫婦だな。


 しかし、ジャックのオッサンほどの防御力があっても痛いんだな。HPは減ってないし、痛みとダメージは必ずしも同時に起こるわけじゃないのか。日常の些細なことでも勉強になるな。


 ゴブリンを倒した時に、頭、胸、手、足の内、どこがよりダメージを与えられるか試してみたけど、結果は頭と胸だった。やはり、生物である以上、弱点は必ず持っているものだ。たぶん、ほとんどの生物は頭や胸が弱点の一つだと思うけど、どうなんだろう。手や足を狙った場合は、ダメージ自体は少なかったけど、行動を阻害できたし有意義な結果が得られた。


 あとは、また実戦あるのみって感じか。




「カナデさん、行く……です」


「……ああ」



 そんなことを一人黙々と熟考してたら、ルノワールがワイシャツの袖の部分を引っ張ってきた。なんて可愛らしい仕草だろうか!ああ、写真に収めたい!仕方ないから、脳内に保存しよう。



「肩のとこ破けてる……です」


「ああ、これか……忘れてたなそういえば」


「クエストから帰ったら服買う……です」


「ルノワールが選んでくれるのか?」


「わ、私でよければぜひ選ぶ……です!」



 ダメ元で聞いたら、選んでくれるって!女の子に服を選んでもらうとか幸せ全開だな!ここが俺の人生でピークじゃないことを祈ろう。


 よく見たら、耳の内側部分に、少しだけ白い毛が生えてるのがまた可愛い。そして、いつかその三角の黒猫耳を触らせて欲しいものです。


 なんだか最近、可愛いしか言ってない気がしてきた。まぁ、いっか!




「ほらっ、二人とも早くギルドに行くわよ!」



 おっと、レクシャが呼んでいる。そろそろ行きますかね。


 ジャックのオッサンと奥さんのルミアさんに見送られながら、俺たちは宿を出てギルドへ向かった。



 

 今日はパーティーとして、初クエストを受ける日だ。


 頑張らねば!



 ああ……、早くレベル上げたい。





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