新たな仲間
さすがの奏も自分が何をやらかしたのか理解し、あれは告白じゃないと誤解を解いた後、きちんとした説明を始めた。誤解を解いた時、ルノワールは少し残念そうにし、レクシャは安心したような顔をしていたのだが、奏は全く気付かなかったようである。
「今から言うことは内密にしてくれ。これはレクシャにもまだ言ってなかったことだが、俺には人のステータスを見る特殊能力がある」
「カナデ、そんな能力持ってたの!?すごいじゃない!」
「それは、鑑定と同じってこと……です?」
この二人だし、ステータスが見れることを話してもいいやと思って話し始めたけど、反応的にもう少し詳しく説明しても大丈夫そうだな。というかこの説明しないと、ルノワールに言った告白みたいな言葉の意味が伝わらないしな。
「いや、鑑定より高性能だ。自分のステータスを見た時と同じように、相手のステータスも見えるんだよ。さらに、つい先ほどできるようになったことだが、なぜかルノワールの凶星についても見ることができた」
「すごいけど……女性にはちょっとしたセクハラねそれ」
「すごい……です!」
ぐっ……、レクシャは絶対そう言うと思ってたが、いざ言われるとダメージがあるな。まぁ、予想よりだいぶ優しい言い方だったから助かったが……。
「それで見た結果から言うと……」
「言うと?」
「なん……です?」
このタイミングで俺とレクシャが頼んだ料理が運ばれてきた。もはや頼んだこと忘れてたよキラーバイソンさん。
「凶星っていうのは運が5以下になった人に付けられる称号だった。ルノワールの言う通り、本人を含め周囲を不幸にする効果があるみたいだ」
「そんな!」
「やっぱりですか……」
いや、ここで話は終わりじゃないからな二人とも。
「それで、凶星にはまだ特性があって、夜の間はその効果がかなり薄れること。それと、幸運な人の傍で行動してれば不幸は大幅に軽減されるらしい」
「これはすごい情報だよルノちゃん!男の人じゃ信用ならないから、女の人で幸運な人を探すわよ!」
「は、はい……です!」
これは早めに俺の運のことを言ってあげた方がいいな……。
「幸運の話なんだが、実は……」
「待って!言わなくても分かってるわよ、カナデ……。幸運な人なんて探しても、そうそう見つからないってことぐらい!だけど、ルナちゃんを見捨てるなんてできないわ!」
「レクシャさん、ありがとう……です。でも、そうです。現実はそんなに甘くない……です!」
「……」
もしもし、お二人さんや?
なんか二人で悲劇のムードを作ってるとこ悪いけどさ、人の話は最後まで聞こうよ。
でも、女の子同士の友情も見てて、いい絵になるな~。マーベラス!
しかし、見てたらずっとこんなやりとりが続きそうだし、幸運な人を探す旅に出られても困る。そろそろ、口を挟むか。
「二人とも、最後まで話を聞いてくれ」
「「?」」
あっ……、こっち向いた。やっと聞く姿勢になったな。
「幸運な人物を俺は知っている」
「「!?」」
「幸運どころか激運だと思う」
「カナデ、ルナちゃんに紹介してあげて!」
「激運……。お願いします……です!」
今この瞬間、場は整った!
「それは……俺だ」
「「……」」
あれ?なにこの空気。
無反応ほど悲しいものはないから!やめてよそういうの!
「二人ともちゃんと聞こえてたか?」
「いいから早くルナちゃんに紹介しなさいよ!」
「お願いします……です」
えっ?嘘でしょ?直前に言った俺の言葉なかったことにされたの?
いかに日頃の行いが重要なのかが分かるな。
「本当に俺は運が高いんだよ。こんなことで冗談は言わない」
「分かったわよ。それで、どれくらい高いの?さっき激運って言ってたくらいだから相当なんでしょ?」
「気になる……です!」
よかった。一応、話を聞いてくれる流れに戻せた。
二人は激運が気になって仕方がないみたいだな!ルノワールに至ってはおっとりした目をキラキラさせている。ナデナデしてもいいですか?
また、焦らすのも気が引けるのでさっさと言おう。
「運50だ」
「「!?」」
二人が固まっている。
それはもう目を見開いて固まっている。俺の無表情が、二人の目の前でゲス顔に豹変したらこんな顔するんだろうな。
「返事がないと不安になるんだが……」
「えっ?あーっとゴメン!もう一回言ってくれる?」
「私も、言って欲しい……です」
もう一回て……。
自分のステータスの数値を何回も言うのって、よく考えてみたらすごい恥ずかしいんだけど!それになんとなく小者っぽいし!
もはや拷問だよこれ。
「運……50だ……」
「すごいじゃない!やっぱりカナデは一目見た時から、只者じゃないって思ってたのよ!」
「運50なんて、聞いたことない……です。カナデさん、本当にすごい……です!」
二人が俺を称賛してくれてる。嬉しいのだが、精神攻撃の恐ろしさを垣間見たぜ!もう自分からステータスの数値は言わないようにしよう。
そして、レクシャよ。しれっと嘘をつくな!一目見た時って、ゴブリン3匹と戦ってた時だろ!俺と最初に目が合った段階でほとんどキレてたじゃねぇか!
「ああ……、それで俺とルノワールが一緒にいることで、凶星の効果がなくなると思う。提案なんだがレクシャ。ルノワールも入れてパーティーを組みたいのだがいいか?もちろんルノワール自身が俺たちとパーティーを組むのが嫌なら、別の方法を考えるが」
「わたしはこれ以上ないくらい、いい案だと思うわ!ルノちゃんとパーティーを組むのは大歓迎よ!こんな聞き方ずるいかもしれないけど、ルノちゃんはわたしたちとパーティーを組むのは嫌?」
「そんなことない……です!誘ってくれて、嬉しくて!まだ信じられなくて、嫌なわけない……です!本当に、私なんかが入ってもいい……です?お二人と、一緒に居てもいい……です?」
ルノワールはそう言って、涙を堪えきれなくなり泣き出してしまった。
おそらく、ずっと一人で悩みをあの小さな体に背負い込みながら生きてきたんだろう。まだ、ルノワールは14歳だ。時には人に甘えたいときもあっただろう。そうじゃなくても、出来るだけ人との関わり合いを避けるのは、つらくて寂しかったはずだ。
奏はそんなことを思いながら、ルノワールと彼女をそっと優しく抱きしめているレクシャの二人を見つめていた。