表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/38

ルノワールという少女

 いきなりの猫耳少女出現に戸惑い、揺れるしっぽを凝視し固まる奏。それとは対照的に「ええ、大丈夫よ」と自分の隣の席を勧めるレクシャ。奏の場合、しっぽに気を取られすぎである。



「ありがとう……です」


「いいわよ別に。カナデもいいわよね?」


「もちろん」



 おっと、いけない。地球では上下左右自由に、自然な動きで揺れるしっぽを持つ猫耳少女なんて、いなかったもんだから思わず見とれてしまった!ミザリーさんのしっぽはカウンター越しでよく見えなかったから仕方ない……。


 しかし、ミザリーさんという犬耳少女の次は、猫耳少女か……。昨日は、レクシャに出会えたわけだし、俺はなんて幸せ者なんだろうか。宿屋のジャックのオッサンやケイミーちゃんもいい人だし……、この出会いに感謝しないとな。


 そんなことを思っているうちに猫耳少女が既に座っていた。



「あの……せっかく、お二人のところを……ごめんなさいです」


「べ、別に二人だからって、や、やましいことはしてないわよ!」


「そ、そうですか……」



 レクシャよ。誰もそんなこと追求してないだろ……。なぜ自分から変な方向に行ってしまうんだ!いまさっきまで、猫耳ちゃんにしっかりとした対応してたじゃん!猫耳ちゃんが困ってるよ。ここは俺とバトンタッチだな。



「すみません、この人少し変な子なんです」


「そ、そうなんですか……」



 レクシャが「誰が変な子よ!誰が!」とか騒いでいるが気にしない。


 まだ、戸惑っている猫耳少女を今のうちに観察してみると、黒いひらひらしたワンピースみたいな服の上から、レクシャと同じような薄い胸当てをしている。


 えっ、何?その薄い胸当て流行ってるの?レクシャのステータスでは胸当ては装備として反映されてなかったけど……。防御力ないってことだよねそれ。異世界ならではのファッションっていうやつかな?


 なんか、不思議なオーラを感じる子だしステータス〈確認〉やっとくか。




ルノ・ヴィノワール 女 猫獣人 14歳


レベル18

HP109

MP35


攻撃力:92(+13)

防御力:80

素早さ:152

魅力:33

運:15(-10)


武器:黒狼石の短剣(攻撃力+13)


【特殊能力】

気配遮断

【魔法】

 なし

【称号】

 凶星



 

 はい、出ました!この子何かあるなと思ったらこれだよ。レベルが俺とレクシャより高いのは、よくあることだ。素早さがかなり高いのも、まぁ理解できる。特殊能力からしてかなり優秀そうだ。


 でも、運が-10されてるのはなんでだ?それでは、運が5しかないことになる。俺が最初に遭遇したゴブリンでも運7はあったので、ゴブリン以下の運になってしまってるのかこの子……。


 となると……怪しいのはこの称号にある凶星だな。というかこれしかない。こんな不吉な称号もあるのかよ!この子、大丈夫なのか?


 調べたいけど、他人のステータスにある能力や称号を詳細に〈確認〉しようとしても何も起こらないんだよな~。これは、レクシャに試して実証済みだ。自分のはできるのになぁ。何か条件でもあるんだろうか?




「あ、あの……そんなに、見つめられると……その……です」


「……すまん」



 やってしまった。この〈確認〉は相手の目の前にあるステータスを凝視しないといけないからなー。どうしても、相手に見つめていると思われるのが難点だ。チラ見で解決できればいいんだが……。うん、無理そうだ。自然な感じで相手を観察する技術の方が簡単だろう。



「あんた、またやってたの?わたしの時も見つめてた時があったわよね。き、急に見つめられると結構恥ずかしいんだからね!次からは事前に一言入れてから見つめなさいよね!」


「斬新な怒り方だな」


「お二人とも……仲が、いいんですね……」



 レクシャのその言い分だと、俺は「今から君を見つめるよ」とか言えばいいのか?自分で想像しといてなんだが、思わず吐血しそうなくらいキモいな。却下だ却下。


 仲は確実にいいのかもな!人から言われると照れるが……実はすごい嬉しかったりする。レクシャも恥ずかしいのか若干顔が赤くなっている。かわいい。







「よしっ、せっかく相席したんだしこの子に自己紹介するわよ!わたしはレクシャ・レッドフォード。そして向かいの席にいるのがカナデ・サ……、カナデよ。そう、カナデよ!」



 ルノちゃんも料理を注文し終わり、全員で料理を黙って待ってるのも微妙なので、レクシャが自己紹介を始めた……って、レクシャが全部言うのかよ!そして、紹介するなら責任持ってちゃんと言いなさい!絶対コイツ俺のサオトメを忘れてやがるな。



「よろしく、お願いします……です。レクシャさん、カナデさん。私は、ルノ・ヴィノワール……です」


「よろしく!ルノちゃん?ヴィノちゃん?何て呼んだら一番いいの?」


「ルノちゃん……って呼んで、もらえたら嬉しい……です。でも、ルノワールって呼ぶ人も多い……です」


「じゃあ、わたしはルノちゃんで!そして、カナデはルノワールね!」


「あ、あの……こんなに、仲良くしてもらったのは初めてだから、本当に嬉しい……です」



 そう言って恥ずかしそうに顔を俯かせた。俺にルノワール呼びを強制したレクシャには不満があるが、ルノワールもいい響きだし別にいっか。


 そんなことより!なにこの黒猫耳美少女!可愛いんだけど!超可愛いんですけど!おっとりした目元なのもすごくいい。


 レクシャも同じことを思ったみたいで、「なにこの子!可愛い!」とか言いながら、ルノワールを抱きしめていた。



 しかし、最後のルノワールの言葉には考えさせられるものがあるな。こんなに可愛らしいのに「仲良くしてもらったのは初めて」と言っていた。気になりだしたら止まらない俺は、意を決してルノワールに、さっきの言葉の詳細を聞いた。




 ルノワールは一瞬話すかどうか迷う素振りを見せたが、何かを決意した表情になり、自分の境遇について話し始めた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ