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確認とレベル

 初戦闘でゴブリンを討伐した奏は、右手に戦利品として頂戴した棍棒を持ち、森から離れて広大な平原を考え事をしながら歩いている。ゴブリンの討伐証明部位である左耳を切り取って冒険者ギルドに持って行けば、少しのお金になるのだが彼はまだその事実を知らない。


 実際、奏はライトノベルといったものを読んだことがなく、母親からの異世界話もあまり真面目に聞いてなかったので異世界のテンプレ事情に疎い。しばらく歩き、周りに何もいないことを確認して彼は平原に腰を下ろし、大の字に寝転がった。



「これからどうするか……」



 広大な平原に吹く爽やかな風が奏の頬を撫でていく。そのまま徐々に目が閉じていき――




 危ない危ない。あまりの気持ち良さに寝るところだった。こんなところで寝たらいつかはゴブリンに見つかってしまう。平原に生息してるのがゴブリンだけとは限らないし気を付けないとな。そんな危険なところで大の字になっている俺が言えることじゃないけどね。でも、仕方ないんだ。だって爽やかな風が吹き抜ける広大な平原があったら誰だって寝転がりたくなるってもんさ。


 さて、一人で誰も興味ない、しょうもない言い訳をしてみたところで確かめたいことがあるんだよなぁ。


 まずは……


 ステータス!


 

サオトメ カナデ  男 天人 16歳


レベル1

HP15

MP20


攻撃力:12(+2)

防御力:10

素早さ:15

魅力:60

運:50


武器:棍棒(攻撃力+2)


【絶対能力】

時間停止(5s)

【特殊能力】

確認、空き(4)

【魔法】


【称号】

異世界人、勇者、絶対神の孫



 

 気になるのは一番下にある称号だ。これは意味があるのか?あの鑑定水晶には映らなかったみたいだけど、自分のステータスでは確認できるんだよな。あの王国は鑑定で俺たちを勇者だと判断するわけじゃなくて、勇者召喚で呼び出したから勇者だと判断しているわけか。


 まさか、自己申告なわけないだろうし。追い出したってことは、俺だけは勇者ではないと思ってるんだろうか。特殊能力や魔法を持ってなかったわけだし。ふはは、有能な人材を追い出したことを後悔するがいい。まだ、弱いけどな。


 それはさておき、称号はどういう意味があるのだろうか?教えて〈確認〉先生。




[称号]

何か大きなことを成し遂げたり、ある一定の条件や難度が高い特殊な条件などをクリアした者に与えられる。称号には様々な恩恵がある。



 

 おお、そうだったのか。異世界人は別の世界からアルガルドに来ることが条件で、勇者は別の世界から召喚されることが条件かな。絶対神の孫は……まぁ、たぶん神爺に孫だと認められるみたいな条件だろ。


 さっきゴブリンを倒しても称号が付かなかったのは、普通に弱い魔物とか倒してもダメってことか。そりゃそうか。倒すごとに称号が与えられたら大変なことになりそうだもんね。


 恩恵って何だろ?


 疑問に思い、称号にある異世界人、勇者、絶対神の孫をそれぞれ〈確認〉してみた。




《異世界人》

別世界から来た者に与えられる称号。特殊能力を1つ授かるという恩恵がある。


《勇者》

別世界から召喚された者に与えられる称号。特殊能力を2つ授かる他に、全属性に耐性が付くという恩恵がある。


《絶対神の孫》

絶対神に孫として認定され、それを受け入れた者に与えられる称号。常人よりレベルが上がりにくくなる代わりに、物理・魔法・特殊能力を問わず自分よりレベルの低い者の攻撃はすべて無効化される。




 神爺が言ってた勇者の特殊能力は3つって話は、異世界人と勇者の恩恵をセットにして考えてたからなのか。まぁ当然か。勇者として召喚されるのは必ず異世界人なわけだしな。


 運悪くアルガルドに〔神隠し〕で来た人は、異世界人として特殊能力を1つ授かるわけか。あと、勇者の全属性耐性って恩恵もすごいな。


 問題は、《絶対神の孫》だよ……。さっきゴブリン倒した時にレベルが上がらなかった理由はこれのせいか。普通レベル1がレベル9を倒したら上がるはずだもんな。


 ゴブリンを倒した後、少しの間この世界に絶望しかけたことは内緒だ。石で倒せるゴブリンがレベル9だったから、魔物と人とではレベルの上がる速度が違うのかもとは考えたが、ちゃんと理由があって安心したよ。


 でも、レベルがなかなか上がらない代わりに与えられるダメージ無効の恩恵はすごいな。自分より1つでもレベルが下なら、馬鹿みたいに高威力の攻撃の中でも何事もなかったかのように立ってられるってことだ。「今、何かしたか?」とか言ってみたいものだ。俺の無表情と合わせて相手に精神的ダメージを与えられるのは間違いない。


 そんなことする前に、時間停止で全部終わりそうだけども。


 

「とりあえずレベルを上げなきゃな」

 


 奏はそう呟きながら立ち上がり、再び周りに何もいないことを確かめた。



 今妄想したようなことを現実にするには、格上の敵を倒さないとなー。ちまちまとそこら辺のゴブリンを狩ってもなかなかレベルは上がらないだろうし、今の俺でも倒せる程度でほどほどに強い敵はこの辺にいないものだろうか?

 


 とりあえずレベル2になることを目標にして、棍棒を武器に再び平原を歩き始めた奏であった。


 気づくとゴブリンから逃げているうちに、王都より伸びる街道から遠く離れてしまっていた。街道沿いまで戻ることを目標に歩いている奏だったが、この先の街道でまさかの金髪ツインテール美少女と出会うことになるとは今の彼には知る由もなかった。





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