不眠症の竜
主人公はドラゴンさんです
彼の言う'うるさい'は夏場の蚊みたいな感じ
世界の始まり、という昔でも無いが
私はドラゴンなのでそれなりに長生きしている
人々が恐れたり、畏怖の対象や神格視される者も居るだろうが仲間の事は余り知らない、一族から除け者扱いされて、もう3000年程だろうか?雷を操る親父と喧嘩して一族から弾かれ、途方に暮れながら腹いせに山を砕いたり、天まで届く火柱を作ったりと遊んで居たのだが、次第に飽きてしまいとりあえず寝る事にした、寝ると一重に言ってもけっこう大変だったりする、ドラゴンは寝床にはかなりうるさい、親戚の氷雪を操る叔父さんなんて、北に氷の大陸を作って寝床にしてしまったくらいだ
それに比べたら私は大人しい部類だろうが、やはり寝床は気持ち良い場所がいいものだ、今私が居る洞窟も湿度も温度も丁度よく、他のドラゴン達もきっと気に入るだろう、ただ一つの大きな難点を覗けば
この寝蔵は人間というエルフに似た種族の巣の近くなのだ、形はエルフに似ているが脆弱な癖に野蛮で、魔力も然程無いのに横暴な何とも愚かな奴等なのだが、一番の問題は'うるさい'事だ
やれ建国記念だのやれ生誕祭だの、100年のあいだに何回祝い事をするつもりなのだ?だいたいあいつ等が来る2000年も前から私はここに住んでるのに引っ越しの挨拶すらない、実に不愉快極まりない連中だ、ここ数十年で巣が大きくなり更にうるさくなってきた、そろそろ我慢の限界かも知れない
一度ぐらい焼き払っても構わないだろうか?無駄に数も居る事だし少し減らしても大丈夫だろう?
そんな事を寝惚けながら考えていたらまたうるさくなってきた、大砲とか言う訳の分からん武器の音と、数だけは多い人間の怒号が地面に響いて、私の寝蔵に届いて来るのだが今度のはとても近い
どうやらほぼ真上で騒いで居るのだろう、良い度胸だ人間共め見てろよ?私の安眠を妨げる奴がどうなるか目に物みせてやる!
まず地を裂き大空に羽ばたく準備をする、これが中々難しく間違えると埋もれてしまう、そうならない為意外と慎重に地響きを立たせながら、頭上の土を払い退けて行く、その次は身体に着いた土や泥を洗う為に雷雲を呼ぶ、起き抜けに身体を洗うのは基本だろう?身体を洗った後は少し冷えた身体を暖める為に山に火を入れる、これでぐっと暖まるのだ
さて、私の安眠を妨げた愚かな人間共は何をそんなに騒いで居たのだ、ん?あれは私と同じドラゴン?あれと戦っていたのか?だからあんなに騒いでたのかまったく、つまり私の安眠を妨げたのはあのドラゴンなのだな?よし解った人間共よ任せるが良い、この私がアイツと話をつけてつけてやろう、だからもう少し静かにするんだぞ?
しかしあのドラゴン…何処かで見た気がするのだが、はてさて何処の誰だったか、おや?向こうは気付いている様子だ、どれ話をして見よう
余り大声を出さぬ様に、気を付けてっと
うむ、我ながら紳士的な会話の切り出し方では無いか、これなら相手も気軽に話せるだろう…、しかし返事が来ない何故だ?なにやらあのドラゴン別の誰かと話していないか?この私を無視して誰と話して居るのだ!?…あっ下に居る人間と話しとるのか、なになに?
アイツ、化物、強い、赤い、ドラゴン、一族、追放、強すぎ、化物、厄災、勝てない、逃げる、正解、早く
…誰が化物か誰が、 成る程あのドラゴンは親父と喧嘩した時の取り巻きの一匹か何かなのか、あっ本当にしっぽ巻いて逃げとる、人間程度に使役されるとは情けない奴よ、これで終わりかあっけない、さて人間共よこれで騒ぎの種は無くなったな?これからは静かに寝かせてくれよ?、私は寝床に戻るぞ?くれぐれも静かにな?
寝床に戻ってまた眠りに着こうとしてから数年後、また人間共が騒ぎ出したので何事かと思い耳を傾けて聞いてみたら、今度は国の守り神だの、竜神だのと騒いでおる、…やはり焼き払うべきなのか?




