決意
突然だが俺の父親は騎士団にいる。
元々は冒険者だった両親だがアルドの街を興すときに出会いしばらくし結婚。
母親のクミアは妊娠し引退、父親のローリッドは家族を守るため騎士団に入隊。
最前線の街を守る騎士団とあって給料もそこそこにもらっているらしく大きな贅沢をするほどでもないがとくに不自由することもなく暮らしている。
冒険者をやっていると顔も広くなるらしい。
なにが言いたいのかというと両親ともに戦いに慣れており友人も現役の冒険者であることがほとんどだ。
つまり俺が剣を持ち魔法をぶっぱなし楽しむためにどうすればいいかを簡単に聞くことができると、こういうことだ。
なにをするにしてもやはりモノを言うのは経験だ。
ましてや命のやりとりをする冒険者に至ってはそれがさらに顕著に表れる。
あいつもそれがわかっていれば、俺に今のような力があればあの時に…
そのようなことをうちに集まった30人を超える冒険者達は酒をのみながら口にする。
それを聞いて育った俺は5歳の誕生日に思い切って両親に冒険者になりたい旨を切り出した。
体は5歳とはいえ中身はすでに30を越えたおっさんだ。
今は子供とわかってはいても母親に泣きついたり甘えたりするのには抵抗がある。
それどころか泣いた覚えも我が儘で困らせた事もないはずだ。振り返ってみるとまったく子供らしいことをしていない。
最近は情報集めとローリッドの書斎で本を読んだり遊びにきた冒険者達に話を聞いたりしていた。どう見ても5歳児の行動とは思えないことをしてきた。
そのせいだろうか、両親も普通の子供とは少し違うことを分かっておりそこまで大きな驚きはしなかった。
が、誕生日に酒を目的としてか集まった他の冒険者からは少ししっかりしている子供、冒険者に興味を抱き始めたガキ、程度の認識であったらしく一瞬場が凍ったかのように騒ぎ声が止まった。
その後、集まった者が冒険者が大半ということで冒険者の苦しみや辛さがどんなものかも聞かされ諭されたがこの世界で生きていくことを決めた俺は頑として聞き入れず冒険者になりたいことを伝えた。
そうすると今度はこいつは大物になる、俺が面倒をみる、いや私がみる、武器はどうの魔法をどうのの大騒ぎになった。
それを静かに、しかしよく通る声で纏めていったのが父親のローリッドだった。
先に述べたとおり父親のローリッドは最前線の騎士団にいる。
そういうわけで家に帰ってくることが少なく、帰ってきても親バカ丸出しの表情でかまってきたり酒を飲んで帰宅してはクシアのお玉による制裁を受けたりしていて実力の程がわからなかった少しかわいそうな父親ローリッド。
そんな両親のクシアとローリッドは実は周りからも一目置かれる実力の持ち主であることがそれでわかった出来事でもあった。
そのお玉の速さ、正確さ、そして技のキレからクシアの実力はただ者ではないなにかを感じてはいたがまさかローリッドまで周りから認められていたとは…
そんなことがありつつも話し合いが行われ幸いにも条件付きで冒険者になることを許可してもらえた。
修行には友人の冒険者達が付き合ってくれるらしい。
さて、約束させられたことを簡単にいうと。
無茶はするな、自惚れるな、気を抜くな等の基本的なことから剣の修行は7歳以降、冒険者ギルドへの登録は10歳から、そして15歳までは家にいてもらう、とかこんなもんだ。
前者は気の持ち方。命のやりとりをする中で気の抜けた気持ちでいたらあっというまに魔物の餌になってしまう。まぁ当たり前のことだ。
後者に関しては剣を持つこと、振ること等はある程度体ができてかららしい
まあ5歳の体じゃ持てるわけもないよな。当然といえば当然だ。
あとはまぁ…単に親バカが発揮されただけだったりする。
ということで5歳から始まった冒険者への第一歩は魔法の勉強からスタートした。