一つ目・・・・・(3)
僕は今時速百二十kmで走っているところなのだが、なぜ校舎という狭いところでこんな速さを維持しているのか。それは、
「フッ!」
このように、壁を蹴って方向転換しているのである。重心をコントロールして極最小限の壊れ方で済むようにと、なかなか神経をつかう作業だが、 まあそんなことももうしなくてもいい。
ほら、
ようやく運動場にでた。肺も機能していないので息も乱れていない。別に心臓もバクバクとビートを刻んだりしない。
そして、右足を思い切り回転させ『テケテケ』の前に刀を突き出す。右足から妙な音と共に鈍い痛みがはしったが構わない。どうせこいつを喰らえば直る。
しかし突き出した刀は『テケテケ』には当らなかった。『テケテケ』が身をかがめたせいである。そして『テケテケ』はえびのように沿って僕の腹目掛けてその部分を断ち切ろうとした。
それを二歩ほど下がる事で回避し右腕を突き出す。しかし、それは殴るための行動ではない。
その突き出した右手は『案の定』関節部分で断ち切られた。痛みをこらえ、こちらも『テケテケ』の左手をぶったぎった。
とくに『テケテケ』は苦しがったりはしない。それはそうだ。
この刀は妖刀でもないし退魔刀でもないのだから、
だがその瞬間『テケテケ』は初めて言葉を発した。
「ドウシテ?ドウシテ仲間ニナッテクレナイノ・・・ワタシノナカマニナッタホウガイイ、イイ、イイノニ」
「・・・・・」
僕は答えない。
「ナニカイッテヨ、ネエイッテ・・・?」
それが何も意味のない事だと知っているから。
僕が言わなければならない言葉は、たった一つ。合言葉を言うだけ。
「『地獄ニ帰レ』」
そう言った瞬間、
「アアアアアアアアアア!!!!!!」
『テケテケ』の体が、ボロボロと、ポロポロと崩れ、ドロドロと、デロデロと、ズルズルと溶けていく。
「アアアアアアアア!!!!!!!ナニヲナニヲナニヲナニヲ!?」
「合言葉を唱えただけだ」
「アイコトバ!!??」
「お前にお帰りになってもらうようにな。どうだ『テケテケ』さま?これは聞いたか?」
そう聞いてみたが絶叫しているせいで何も聞こえていないようだ。
「まあ、これは結構その場しのぎ感が高いからなあ」
ボソボソと独り言を言う。
そして、喰らう為の準備を始める。
その時『テケテケ』は・・・いや、いじめられていた少女は顔を上げた。 あげて・・・しまった。
「ヒイいッ!ばケモノ!」
「化物に呼ばれたくはないよ」
そして、なにも躊躇なく、『喰らった』。
●
やってくれましたかね?
そう思いながら私は教室の教卓の上にいた。
「よいしょっと」
そう言いながら、立ち上がるとンーッと背伸びをした。背中がパキパキという音を立てる。
「さっき、いきなり音が消えましたが成功したのでしょうか?」
そう、この無音 七がヒトトセさんに言われたことはただ、この教室で何があってもじっとしてろということだった。(なかなか女の子を守ろうとしてくれるいいひとだー)そして立ち上がる。
すると、コンコンと言う音を立ててノックがあり、
「春夏秋冬だ」
「はいはーい」
そして私はドアを開けた。
●
僕はトロンッとした顔でドアの前に立っていた。
まあ、今回食べたのが結構おいしかったというのが九割、無事終わったというのが一割ぐらいだ。
そしてコンコンと言う音を立て、ノックをして中に入った。
しかし、
「あれ?」
彼女はどこにもいなかった。
一応教室内にいるか探したのだが、どこにもいなかった。
「まさか、二つ目?」
そう思い、七不思議で該当するものを探すと、
あった。
二個目の七不思議は怪異現象だ。
それは、
『僕を呼んだ?』