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隣の憑神さま  作者: 有瀬川辰巳
第一章
7/10

六幕 日常と非日常

「変態なのよ!」

 朝起きると、床から生えてきた小夏さんがそんなことを言っていた。

「えっと・・・小夏さんが変態なのはなんとなく分かっていましたが、どうしてそんなカミングアウトを?」

 そういうと、わざとらしくおっと間違えた、という顔をする小夏さん。

「大変なのよ。本田剛志の潜む場所が分かったの。それは・・・」

「多分昨日化物との戦いがあった廃ビルでしょう?」

 あの影の男が出てきた謎の扉もあったことだし、多分そこのはずだ。昨日家に帰ってから狐子さんとそう話した。

「昨日こやつと話し合ってその結論に達したが・・・それ以外の場所なのか?」

 僕と狐子さんが畳み掛けるように言うと、小夏さんはどこか泣きそうな表情をした。

「正解・・・そこであってるわよ・・・あとは狐子の力の回復を待つだけね・・・がんばってね・・・」

 そういうと小夏さんは窓から飛び降りた。昨日もやっていたし、大丈夫だろう。

「ちょっとは心配してちょうだいよぅ!?」

 窓の外からの声を聞きながら着替えをする。今日は大学に行く日だ。ずいぶん久しぶりな気がするけど土日をはさんだだけなんだよな・・・。

 万が一の可能性を考えて狐子さんも同行してくれることになったけど、皆や教授に納得してもらうための理由も考えてある。ばっちりだ。

「ちょっとー? 慎一くーん? 聞いてるー?」

 外からの声を聞き流しながら部屋を後にした。さあ、まずは一日のエネルギー源、朝食だ!


‡   ‡


「ねぇ、いくらスルースキルが高いからってあそこまでスルーする必要あるの?」

「あー、はい。すいませんでした。とりあえず小夏さんは他の人には見えないんですからそろそろ黙ってください」

「一日でずいぶん扱い方が変わったような気がする・・・しくしく」

「こやつがおぬしに正しい接し方を出来るよう教えてやったからな」

 狐子直伝だと考えるとなんかいいかも! と騒ぐ小夏さんを他所に、僕は駅のホームに立つ二人に手を振っていた。

「あらあら、美人ぞろいなことで・・・両手に花じゃない、慎一君。というわけで、狐子はもらっていきますね。狐子まで入れたら手が足りないでしょう?」

 視界の隅で狐子さんに手を弾かれる小夏さんを見ながら二人といつもの挨拶をする。

「おはよう、二人とも」

「おはようございます。あら? もしかして・・・その女の子が愛紗ちゃんですか?」

「え? 愛紗って誰だよ? アタシ、初耳なんだけど・・・」

 そういえば双葉にはまだ話していなかったな。

「まあ、僕の妹だよ。詳しい話は皆集まってからね。」

「そうですか。愛紗さん、私は紫藤里奈といいます。よろしくお願いしますね」

「妹、か・・・アタシは千歳双葉。よろしくな」

「えっと、遠坂愛紗です・・・お願いしますです」

 自己紹介をする二人に頭を下げながらそういう狐子さん。

「あぁ~ん・・・狐子かわいい~。食べちゃいたいな~・・・性的な意味で」

 ・・・つっこみたい。でも二人には見えていないからそうするわけにもいかないな。

「狐子とずっと一緒にいたい気持ちは山々だけど、遠坂市が私の受け持ちな以上そういうわけにも行かないわね・・・二人とも、いってらっしゃい!」

 そう言って手を振る小夏さんに僕も手を振り返す。もちろん、二人に気付かれないようにこっそりとだ。

 電車に乗り込み狐子さんも交え雑談すること数分。あっという間に大学近くの駅、近衛坂駅についた。

「おっはようございまぁ足払い!?」

 そしていつもどおり礼尾に対処する。今日はちょっと控えめだけど。

「すがすがしいほどいつもどおりだな。本当にこの間の金曜日に刺されたばかりの人間かよ・・・ところで、その女の子誰?」

「ん、妹。事情は皆集まってからね」

「お、おう・・・なんだ、この急展開」

 明らかに戸惑っている礼尾。土曜日にあったときに話しておけばよかったかな・・・。

 そんなことを考えながら大学に入り、考世学部の教室に入る。

「んにゃ、みんな、おっは~・・・むっはぁ、そのかわいこちゃんは一体誰かにゃ~?」

 手をわきわきさせながらせまりくる凛香先輩から少し距離をとる狐子さん。愛紗としての対応をしているのだから、当然か・・・。

「えっと、それじゃあ説明をさせてもらいますね」

 そう言って昨日の夜狐子さんと打ち合わせをしたとおりのことを話す。金曜日に助けた女の子だということや、家族を殺されてしまったために僕の家で暮らすことになったことなどだ。

「私は昨日も聞きましたが・・・やはり、重たいですね。愛紗ちゃん、私のこと、よかったらお姉さんだと思って接してください。遠慮しないで甘えていいんですよ」

「そうだね~、私も頼りないかもしれないけど、この中では一番の年長者なんだから頼ってくれていいよ~」

 双葉と礼尾も同意を示す。やっぱり、みんな優しいな・・・。

「はいです・・・みなさん、ありがとうございますです」

 狐子さんがそういい終えると、ちょうどチャイムがなった。

「えー、みなさんおはようございます・・・おや、その女の子が愛紗さんですか? ご両親から連絡がきていましたね。皆さんが勉強に集中できるよう静かにしていてあげてください・・・といいたいところですが、みなさん普段わりと騒いでいますよね」

 教授の言葉にみんなで苦笑する。たしかに、普段から騒いでいるよな・・・。

「まあ、ここはめったに人も通りませんし、近くに他の教室もないので、騒いでも大丈夫ですよ。緊張せず、ゆっくりしていってください。それとみなさん、今日もプリントでお願いします」

 そう言って小脇に抱えていたプリントを教卓におくと、教授は出ていった。

「相変わらず、教授は忙しそうだねぇ、っと・・・げ、アタシの苦手科目だ。慎一、ヘルプ」

「右に同じー。慎一、ヘルプ!」

「二人とも~、こっちに先輩がいるよ~? そりゃ慎一君は成績素晴らしいけど~・・・」

「ふふ。まあ、ゆっくりやりましょう、凛香先輩」

 こうして、僕のいつもの学校生活が始まった。


‡   ‡


 楽しい時間はあっという間に過ぎ、昼になった。

「さて、今日も俺一人で寂しい思いさせんじゃねーだろうな?」

「ん~、今日朝食べなかったもんにゃ~・・・うん、今日は私も食堂行くよ~」

「先輩、あざっす! それじゃ、いきましょう!」

 はは、礼尾本当に嬉しそうだな・・・この間一人で学食に行ったのがよっぽど寂しかったんだな。

「それじゃあ、アタシ達も昼にすっか。慎一、今日はアタシもちょっとつまませてくれよ」

「いいけど、今日は母さんが作ったやつだよ?」

「そっか・・・まあいいや、慎一の母さんのもうまいだろうし」

 そう言って机の上に広げた僕の弁当をつまみ出す双葉。ちなみに母さんも狐子さんが学校に行くことを知っているから量が多い。おかげで結構重かったんだよね・・・。

「うん、結構うまいな。でも慎一の作ったほうがうまいんだな・・・」

「ふふ、慎一さんは料理が上手ですから」

「何でお前が嬉しそうなんだよ・・・」

 そう言いあいながら二人も弁当箱を出す。

「そういえば、慎一さん。土曜日のこと、覚えてますか?」

 土曜日のこと? あの日は影の男に倒されて、狐子さんの正体を知って・・・あ。

「もしかして・・・いやな予感がするから一緒に帰ろう、って言ってたこと?」

「そうです・・・もう、憶えていたのなら何で言ってくれなかったのですか? 所詮予感は予感ですが、慎一さんに何か起きるのではないかと気が気ではなかったのですよ?」

「ごめん、今思い出したんだ・・・ごめんね、心配してくれてありがとう」

 怒っている里奈さんに謝る。あの日は実際にひどい目にあったんだよなぁ・・・でも、そのおかげで狐子さんの正体を知れて、守りたいと思っている相手が戦いに身を投じていることを知れたんだ。決して悪いことばかりだったとはいえない。

「まあ、落ち着けよ。アタシだっていやな予感を感じちゃいたけどさ、こうして何事もなく学校に来ているってことは別に何もなかったんだろ? 慎一」

「うん、まあね」

 いろいろあったけど、あんなことを話しても信じないだろうし、そもそも話すわけにもいかない。二人まで巻き込むわけにはいかないもんな。

「だそうだぜ? アタシたちのカンは外れた、ってわけだよ。よかったじゃねぇか。何事もなくて」

「それは・・・まあ、そうですね。何事もなかったならよかったです。でも、もしまた同じようなことがあったらそのときは一緒に帰りましょうね」

「うん、分かったよ。心配してくれてありがとう」

 それにしても、女のカンって凄いなぁ・・・偶然だろうけど、二人とも予感が的中してる。もしもまたいやな予感がする、なんていうようだったらそのときは気をつけて帰ろう。

「そんなことよりもよ・・・アタシは愛紗のほうが気になってるんだなぁー、これが」

「え・・・わたし、ですか?」

 急に話をむけられて困惑した様子の狐子さん。いや、それは演技かな?

「そうですね・・・愛紗さん。慎一さんのことはどう思っているのですか?」

「どう、って・・・おにいちゃんのことはだいすきですよ?」

 狐子さん、どうしてそんな返しを・・・! なんか聞いてて恥ずかしい・・・というか、里奈さんが凄まじく怖いオーラを出している!?

「まあ、子供らしい可愛らしい答えだな。家族として好きって意味だろうから、そんな怖い顔するな、里奈」

 ややあわてた様子でそういう双葉。さすがにこんな顔をしていると双葉もあわてるか・・・いや、僕も僕でどうして里奈さんがこんな顔をしているのか分からなくてあわてているけど。

「・・・そうですね。愛紗さん、怖い顔をして申し訳ありません。それで、慎一さんのことが好きだというのはどのように好きなのですか?」

 ますます怖い顔をしてるよ、里奈さん! どうしてそんな顔をするの!?

「落ち着け、里奈。悪いな、愛紗。こいつはこういうやつなんだ。あんまり気にしなくていいぞ」

「そうなんですか・・・りなさん、わたしは、おにいちゃんとけっこんしたいぐらいにはだいすきです」

「煽るな愛紗!? ますます里奈が凄い表情になってっから!」

 なんだ・・・どうして里奈さんはこんな表情をするんだ!?

「里奈、落ち着け。お兄ちゃんと結婚する、なんてお兄ちゃん大好きな妹だったら誰だって言うことだよ。お父さんのお嫁さんになる、と同じくらいよくある言葉じゃねーか!」

「お兄ちゃん大好きな妹・・・?」

「そこに注目するな! 大丈夫だ、法律の壁があるから!」

「そう、ですね・・・そうですよねぇ!」

 ・・・なんだろう、打って変わって凄くうれしそう。

「・・・ねぇ、一体何の話をしているの・・・?」

「あっ・・・い、いえ。何でもありません!」

「・・・だそうだから、そういうことにしておいてやれ。慎一」

 なんだろう・・・女の子って神様が話していることと同じくらいよく分からない。

「う、うん・・・分かったよ」

 とりあえず頷いておこう・・・双葉も双葉で凄いあせっているような顔をしているし。

「・・・ったく・・・アタシでも我慢し・・・お前は・・・」

「だって・・・さんが・・・」

 なんだろう、顔を寄せて二人が話しているけど・・・内容は聞き取れない。まあ、こうやって話しているぐらいなんだから聞かないほうがいいよな。

(里奈という娘、生真面目ゆえからかうには楽しいのぅ・・・)

(あまりからかわないであげてください、よく分かりませんがかわいそうですから・・・)

(よく分からぬとは・・・やれやれ、確かにかわいそうじゃな)

 狐子さんとこっそり話をする。かわいそうって・・・自分でからかっておいてその言い方はどうなのだろう。

「ういーっす! なんだかんだでテイクアウトのメニュー頼んでお前らと食べることにし・・・なんだ、この空気?」

 戻ってきた二人が戸惑うくらい、この場所の空気は異様なものとなっていた。

「お二人とも気にしないでください。何でもありませんから・・・」

「んっふっふ~・・・先輩はなんとなく分かっちゃったけど・・・リナちんがそういうならなんでもないってことにしておこうかにゃ~」

「え? ああ・・・なるほど」

 二人ともなぜか納得している様子・・・なんでだろう、その場にいた僕はよく分からないのに・・・。

「まあ、あんま触らないでやってくれ・・・里奈も反省してるから」

「そうですね・・・ちょっと大人気なかったです。ごめんなさい、愛紗さん・・・」

「きにしないでくださいです。ところでふたばさん、わたしのことが気になるって・・・なんのことですか?」

 言われて思い出した様子の双葉。そういえば里奈さんがおかしくなった原因は双葉の愛紗のほうが気になる、って言葉だったな。

「ああ・・・まあ、里奈と同じっちゃ同じだよ。アタシ達に見せないプライベートの慎一のこととか聞きだせねーかなー、って思ってさ」

 双葉・・・なんでそんなことを聞こうと思ったのやら。

「うーん・・・おにいちゃんはとってもやさしいです。かみをあらったとき、かわかしてくれたりします。とってもじょうずなんですよ?」

「優しい、か・・・もうちょっとこう、普段知れないようなところ知らないか? たとえば、普段服に隠れているような体のパーツだとか・・・」

「双葉、何でそんなこと聞くの?」

「うーん・・・おにいちゃんはおふろあがりはちゃんとパジャマを着ているので・・・わからないです」

 狐子さんもなんでちゃんと答えるの!?

「なんだよ、慎一と風呂入ったことないのか? 妹なのに」

「おにいちゃんとおふろ、ですか・・・? そうですね。おにいちゃん、かわいい顔をしているので・・・本当に男の子なのか・・・確かめたいですね」

 あれ、後半の口調が愛紗じゃない!? 狐子さんだ! 狐子さんいきなり何を言っているんだ!?

「言うねぇ・・・よし、今から脱がすか・・・♪」

「あれ、セクハラ? セクハラだと捉えていいのかな、今の発言は」

 割と本気の表情でせまり来る双葉から距離をとりながらそんなことを言う。

「心配するな、お前ら。慎一はちゃんと男だから。むしろでかいから」

「礼尾は礼尾で何をさらっと言っているの!?」

 テイクアウトの丼をかきこみながらそういう礼尾。たしかに礼尾は高校の修学旅行のお風呂のときに僕の裸を見ていたけれど・・・!

「ヘぇ・・・いいギャップだな・・・」

「慎一さんって、その・・・なんですね・・・」

「もうやめて! はい、この話はおしまい!」

 うう・・・礼尾の馬鹿・・・なにをいきなりばらしているんだよ・・・。

「・・・そうなんですか・・・うふふ・・・」

 狐子さんが意味ありげな視線でこっちを見てくる・・・やめて、なんか悪いことしたなら謝るから本当にもうやめて・・・。

「ま、そんな馬鹿話している間にごちそうさん、と。」

「私も・・・ごちそうさまでした」

 里奈さんと双葉が言ったのがきっかけになったようにみんな食べ終わる。僕も、ごちそうさま・・・うう、恥ずかしい・・・なんでこんなことに・・・。

「えっと・・・みなさんは今日はこれからどうしますか? わたしはたまには残ろうかと思っているのですが・・・」

 ほんのり赤い顔でそんなことを言う里奈さん。うぅー・・・! こんな表情じゃあ一緒にいるだけで恥ずかしい・・・! 帰る、今日は絶対に帰る・・・! 僕も顔がほてってきた・・・!

 そう思った直後、そのほてりを冷ます感覚が背筋に走る。え・・・こんな昼間に、悪魔・・・!?

「里奈も残るんだから慎一も残れよ、そのほうが面白そうだしよ・・・」

 そういう礼尾。でもそれどころじゃない。僕は慌てて狐子さんのほうを見る。狐子さんは僕の感情の揺れだけで把握したのか、黙って頷いている。

「・・・ごめん、今日はちょっと帰らないといけない理由があるんだ。帰らないと・・・」

 知らず知らず、声が真剣になっていたのかみんなが少し動揺している。

「きょうはわたしがおにいちゃんにおねがいをしたんです! みなさん、ごめんなさいです」

 慌てずフォローを入れてくれる狐子さん。助かった・・・不審に思われるところだった。

「そっか。かわいい妹の頼みなら真剣にもなるわな。これ以上いじれないのは残念だけど、しっかり頼みを果たしてやれよ、慎一」

 そう言って笑う礼尾たち。みんなに手を振りながら部屋を後にし、扉を閉め、全力で駆け出す。

「おのれ・・・なぜこのような時間に! ぬしよ、道案内は頼むぞ!」

「はい、任せてください! まずは大学を出ますよ!」

 昼食時が過ぎ、次の授業が始まったためか、人がいない校内を一気に駆け抜ける。この感覚は・・・駅のほうからだ。

 この時間帯なら人はほとんどいないはず・・・そう思いながら街中を駆けていく。

「・・・! ここです!」

 感覚がすぐ近くまでやってきたその場所は、僕と狐子さんが出会ったあの喫茶店の隣の路地・・・!

「やれやれ・・・遊ばれておるような感覚じゃな・・・何はともあれ、行くぞ」

「はい・・・そうだ、狐子さん。これを」

 狐子さんに短刀の形にしたマダチを渡す。

「すまぬ・・・じゃが、おぬしはどうするのじゃ?」

「ご心配なく・・・メリケンサックで十分です」

 そう言って狐子さんに拳を見せる。言ったとおり、拳にはメリケンサック状にしたマダチをまとわせている。

「そうか・・・それでよいのなら、いざ!」

「はい!」

 声を掛け合って路地の中へと駆け込む。狭くて二人並んでいくことは出来ないため、狐子さんが先を走っている。

「やれやれ、一度に大量にこれないのは敵も同じか・・・」

 そういう狐子さんの眼前にはあの風景が歪んでいる場所が存在し・・・そこから続々と口に手足が生えたような化物が湧き出してきている。

「まあ、ここはわしに任せてもらおう!」

 そう言って駆け出す狐子さん。無数の化物を前にしても一切ひるんでいない。さすがに金色の戦姫、といったところだろうか。僕もその後ろをいつでもフォローに入れるように邪魔にならず、遠すぎない距離を走る。

 飛び掛ってくる化物。短剣を構えた狐子さんはその口の中に勢いよく突きを繰り出す。引き抜くと同時に化物は灰に帰る。

 しかし、あまりにも敵の数が多い。若干おされているように見える。

「くっ、術さえ使えれば・・・せめてもう少し力が戻りさえすれば・・・!」

 言いながら眼前の化物に短刀を振り下ろす狐子さん。しかし、その短刀を化物に掴まれてしまう。まずい、浅かったのか!

「・・っ! しまっ・・・た!」

 短刀を掴んでいる化け物を飛び越えて別の化物が狐子さんに襲い掛かる!

「伏せてください!」

「っ!」

 あわてて前に出る。そして、狐子さんが伏せたことで出来た余裕・・・その空間に全力の一撃を叩き込む!

「すまぬ! ・・・こやつら、両方から来る気か」

 短刀を掴んでいた化物を倒し、奪い返す狐子さん。しかし・・・その間に化物はぼくたちをはさむように陣取っていた。

「跳躍力だけはよいようじゃな・・・ぬしよ、いけるか?」

「任せてください! 僕はあなたの式神ですから!」

「ふっ・・・前線に出したくないといった時が、遠い昔に感じられるな・・・」

 狐子さんの背中を任せられた・・・そのことが嬉しい。戦いの最中だというのに、笑い出してしまいそうなほどに。

 一気に駆け出し、最も近くにいる化物に一撃。二撃、三撃。そのたびに化物の体にはメリケンサックにつけたとげ状の穴が開く。そして、さらにもう一撃。それで化物は倒れ伏し、灰に帰る。

 とはいえ、数が多い・・・誰かに見られる前に倒さないといけないのだから、一体に四撃もかけていては時間がかかりすぎるか?

 そう思っている間にも化物は飛び掛ってくる。まずい! あわてて一撃を繰り出すと、化物の口の中に手が入り・・・かすかな痛みを感じるとともに化物が灰に帰る。

 こいつら・・・口の中が弱点なのか? なら・・・噛み付こうと飛びついてきたところにカウンターを繰り出すのが一番早いな。そう判断し左手のメリケンサックの形状を変化させる。その形状は、右腕を覆うような装甲。薄いものだけれど・・・化物の牙が腕にかするのを防ぐには十分だ。

 あとは、冷静に・・・飛び掛ってきた化物の口の中めがけて一撃入れるだけだ。そう、冷静に・・・動揺することなく・・・。

 飛び掛ってくる化物の口の中に落ち着いて一撃を叩き込む。すると、先ほどまでなかった赤いしぶきが飛び散り、視界が赤く染まる。くそっ・・・目に返り血が入ったのか?

 しかし、そのようなことで動揺している余裕はない。そうしている間にも化物が飛び掛ってくるからだ。見づらいけど・・・これなら、何とか戦える!

 しかし、化物を一体倒すごとに赤いしぶきが飛び散り、視界がますます赤くなっていく。そして、そのたびに見づらくなる。考える余裕がなくなっていく。

 考える・・・? なにをだ? 考える必要なんてない・・・ただ、目の前の敵を狩ることだけ考えればいい。

 ふと、そんな考えが浮かぶ。でも・・・そうだよな。考える必要なんかない。ただ敵を倒すことに集中すればいい。

 そう思い至ったとたんに体の動きが滑らかになったように感じる。迷いがなくなったから・・・か?

 動きが早まっていくと同時に視界の赤の濃さもまた深まっていく。でも、それがなんだ? 敵の位置はこのいやな感覚で・・・気配で分かる。今の僕に視界なんて要らない。そう感じるほどに敵を次々に狩れている。

 そして、正面の敵を狩りつくし、背後の敵に――

「何をする!?」

 その声で我に帰る。それと同時に視界の赤が薄まっていく・・・。

「狐子・・・さん?」

 視界の赤が消え、僕が拳を繰り出そうとしたその場所に、狐子さんが立っていることに気がついた。

「すいません・・・なんか、視界が真っ赤になって・・・気がついたら・・・」

「穢れがたまっておるのか・・・? 確かに数は多かったが・・・ぬしよ、すぐに小夏の元へ行き、浄化を受けよう」

「はい・・・分かりました」

 今どうなったのか・・・自分でもよく憶えていない。僕はなぜ、狐子さんに向かって殴りかかろうなんてしたんだ・・・?

「小夏と相談の必要があるやも知れぬ。事情を聞かせてくれ」

「分かりました。実は・・・」

 誰もいない電車の中、狐子さんに経緯を説明する。といっても、自分でもよく分からないわけだけど・・・。

「赤いしぶき・・・? 馬鹿な、あの程度のものに血など流れておらぬ」

「でも、実際に見えたんです。視界が赤くなったのも、最初はそれが目に入ったからだと思って・・・」

「なるほど・・・じゃが、わけが分からぬな・・・先例がない。低級の悪魔を倒して赤いしぶきがでるなど、聞いたためしもない」

 そう言って首を傾げる狐子さん。狐子さんが聞いたことがないなんて・・・僕は一体どうなってしまったんだ?

「なに、心配するな。おぬしほど穢れに対する反応が高い人間も聞いたことがない。もしかしたらあまりにも穢れに対する反応が高いために穢れが視覚化されただけやも知れぬ。感覚が変わるなどよくあることじゃ。今までになかったとしてもそれで説明がつく」

 そういう狐子さん。狐子さんがそういうなら信じられる・・・はずなのに、胸につかえたものが取れない。狐子さんに殴りかかろうとするようなこと・・・それはいったいどんな変化によってもたらされたのか、分からないから。

 いや、穢れによるものかもしれないといっていたということは、僕が悪魔になりかけて、そのせいで狐子さんを敵だと認識した可能性もある。でも、この説明だと、僕は憎むべき敵である本田や、化物以外の何者でもない影の男のようになりつつあるということで・・・。

「ぬしよ、考えるな」

 そう思ったとき、狐子さんがそういった。

「不安なのは分かる。じゃが、分からぬことをこうではないか、ああではないかと憂い、悩むのは愚かなことじゃ。無意味に心を煩わせることなのだからな。大丈夫じゃ。ぬしは人間、そうでなくては今もこうしてわしとの契約を続けることは出来ぬ。神と悪魔の力は相反するもの。それゆえ、神と悪魔の間で契約が交わされるなどありえんのじゃ」

 そう言って、僕の不安をぬぐおうとしてくれているのか微笑む狐子さん。狐子さんの言うとおりだな。とりあえず、最悪の事態。僕が悪魔になっているということはないと知れただけでもよかった。それだけで僕の不安はひとつぬぐうことが出来たのだから。

「ありがとうございます・・・少し、気が楽になりました」

「うむ、それならよかった」

 そうして僕らは微笑みあった。

「あの・・・少し、頭をなでてもいいですか? 少し、心が楽になりそうな気がして・・・」

「うむ、よいぞ。わしも、おぬしに頭をなでられるのは、正直まんざらでもない」

 そう言ってくれる狐子さんの頭をそっとなでる。ああ・・・やっぱり髪、サラサラだな。触っていて、凄く気持ちがいい・・・このまま、ずっとなでていたいな。

「なに・・・やっとんじゃー!」

 叫びながら小夏さんが突然床からはえるように登場するまではそう思っていた。確か、狐子さんに対して愛紗にしていたように接している僕のことを殺したいと思うぐらい嫉妬していたはずだもんな・・・あわてて頭から手を離す。あ、でもなにやってるんだってことはもうばれてる?

「はぁ、はぁ・・・まったく、狐子の気配を感じたから様子を見に来てみたら・・・しぃ~んいぃ~ちくぅ~ん?」

「そのようなことはどうでもよい。それより、慎一に何らかの変化があるのならさっさと治してやってくれぬか」

 何かぶつぶついっている小夏さんにそういう狐子さん。

「あー、確かに変化してるっちゃしてるわよ・・・ずいぶん力が大きくなってる。でも・・・それは穢れによるものね。浄化しちゃうから、社まで来てちょうだい」

 そう言って小夏さんは姿を消した。

「だそうじゃ。となると・・・おぬしは強くなったのじゃな。赤いしぶきとやらもその変化に伴うものじゃろう。きっとそういうことじゃ。安心せよ」

「そうですね・・・言われてほっとしました」

 駅について、家の前を通り過ぎて神社へ向かう。もちろん、あの道は避けて、だ。

「来たわね、狐子、慎一君」

 神社にたどり着くと、巫女服姿の小夏さんが立っていた。

「さて、浄化だけど・・・ずいぶんたまってるわね。何回戦ったのよ」

「一回じゃ。数が多かったからそのせいじゃろう」

「それはそれは・・・狐子もちょっとだけど回復してきたわね。浄化が終わったら耳と尻尾見せてよ」

 小夏さんの言葉に頷き本殿のほうへと歩いていく狐子さん。

「それじゃあ、始めるわよ・・・」

 そういう小夏さんの表情には前回のようなふざけた雰囲気は感じられない。本格的に危ないほどたまってはいないけど、それなりに穢れが溜まっているらしいな。

「神、小夏の名の下に契約を執行する・・・浄化を司る聖母よ、この人間の浄化にその力の一端を貸したまえ!」

 小夏さんがそういうと白い光が僕の周りを囲み、僕の心臓の位置に集中していく。

「んっ・・・あ・・・っ!」

 それと同時に、全身から黒い霧のようなものが発せられる。これが穢れだろうか。全身の倦怠感が取れていくのを感じる。

「はあぁっ・・・!」

 小夏さんが力を込めると、その霧は小夏さんの正面に集中し・・・消えていった。

「・・・っふう、浄☆化☆完☆了! さ、狐子。力の回復具合、みせてちょうだい」

 小夏さんの言葉に頷く狐子さん。すると、狐子さんの頭の頂点と腰の辺りに光が集まっていって、弾けた。

「ふむ、完全に不可視化の術をかけると解くときにも一苦労じゃな」

「すいません、狐の耳と尾が出ていると愛紗として接する自信がなくて・・・」

「む、気にするな。わしもおぬしのおかげでこの程度の余裕は出来ておるからな」

 そう言って笑う狐子さん。しかし、わざわざ術を解除させてまで狐子さんはなにがしたいのだろう?

「~~っ、フルもっふ!」

 そう言って狐子さんの尾めがけて飛んでいく小夏さん。えー・・・これだけのため?

「クンカクンカ! モフモフ! きゅんきゅんきゅい! でも、昔よりちょっと毛質が落ちているわね・・・やっぱり、力が回復しきってないのね。でも、それなりだから本田ってやつとも戦えるんじゃない?」

 毛質で分かるのか・・・さすがに数百年の友達というだけある。

「そうかも知れぬが・・・確実性を考えれば今週末まで待ってほしいところじゃな。あやつもそのほうが自由に動けるわけじゃからな。そうじゃろう?」

「え? あ、はい。そうですね・・・妹のことを考えると今すぐにでも行きたいところですが、週末のほうが学校とかなくて生活に縛られないのは確かです」

 大学は病気とでも言って休めばばいいけど・・・まあ、そのほうが確実だというのなら週末までまとう。

「さて、それじゃあ、より確実性を高めるために特訓しておく? 慎一君」

 小夏さんの言葉に頷く。確かに、僕が強くなることも、確実に本田を倒せるようになる要素なんだよな。

 出来るものならこの手であいつを殺したい。紫織の復讐のために・・・でも、それが無理だというのなら、あいつの使役する下っ端の化物を倒して、狐子さんが確実にあいつを殺せるような状況を作り出す。それが・・・僕のするべきことだと感じる。

「それなら・・・狐子をもうちょっとモフモフしたいところだけど、特訓を始めましょうか」

 名残惜しげに狐子さんの尾から離れながらそういう小夏さん。こうやってふざける余裕があるのは、それだけ狐子さんの力に余裕があるということなのか、それとも余裕がないのをごまかすためなのか・・・どちらでもいい、狐子さんが十分に戦えないのなら、僕がその分を補えばいいだけの話だ。

「さて、今日はどんな特訓をしましょうか?」

「いろいろな形でマダチを使えるようになっていたほうがいいと思うんです。どのような状況でも対応できるように・・・ですから、先代の所有者である小夏さんならではのアドバイスを聞きたいですね。そのあと実践、という形で」

「なるほど・・・もっともね。いいわ、私が使っていた形状とかを教えてあげる」

 そうして、小夏さんは話し始めた。


‡   ‡


「・・・私が使っていた形状の説明は以上ね。実践に移りましょうか。まずは三つくらいね」

「分かりました。それじゃあ・・・二刀流」

 呟いてイメージする。二振りの日本刀を持っている自分の姿・・・。

「・・・うん、いい感じね。でも、二刀流は使いこなせれば強い分マダチを使う量も多い。いうなれば、攻撃特化の構え・・・装甲は捨てていると考えてちょうだい」

「分かりました。次は・・・ガントレット」

 再び呟きイメージする。今度は、両腕にマダチをまとわせる・・・。

「メリケンサックの応用ですかね・・・形状をもうちょっと攻撃的な感じに出来そうな感じです」

「そうね。だけどメリケンより防御力に秀でた形状だと思うわ。相手の攻撃を受け止められるなら、だけど・・・」

「そうですね、それなりの実力がないと役に立たないと思います」

 攻撃特化、バランスとくれば、あとは防御特化だろう。となると・・・。

「盾!」

 声に出して形状を変化させていく。左手のほうにマダチを集中させて・・・と。

「防御専用の型ね。まあ、やろうと思えば盾で殴ったり出来るでしょうけど・・・」

「まあ、この形にしてまで攻撃しようとは思いませんよ。この形にするときは完全に防御に徹するときにします」

 賢明ね、と呟きながら頷く小夏さん。しかし、突如その表情が変化した。

 その理由はすぐに分かった。いやな感覚・・・気配を感じる。だけど、それはいたって小さなもので・・・勘違いだと思える程度の気配。

 化物よりも小さな気配・・・これが穢れだとしたら、一体何がせまってきているのだろう?

 その答えは、すぐ明らかになった。

「・・・またお会いしましたね。お兄さん」

 鳥居の向こうに立っていたのは・・・雪慈ちゃんだった。

「どうして・・・君が・・・!」

「・・・悪魔側に知っている人物が多いのね。これが運命のいたずらというやつだとしたら・・・ずいぶん悪質だわ」

 そういう小夏さん。それをよそに雪慈ちゃんは西洋のお嬢様がする挨拶のようにスカートの端を軽く持ち上げる。

「土地神様とはお初になりますね。わたくし、白坂雪慈と申します。この土地を任された悪魔、本田剛志様の配下の末席のものです。今回は、本田剛志様より伝令の役を任せられました」

「そう・・・なら、口上はいいわ。ここに来た目的を語りなさい、悪魔のしもべ」

 かしこまりました。そう言うと雪慈ちゃんは顔を上げた。

「我が主より申し付かったことはただ一つ。開戦の時間です」

 そう言って微笑んでみせる雪慈ちゃん。

「我が主のいったとおり伝えさせていただきます・・・チンタラやるつもりはねぇんだ。テメェらが俺の居場所を察しているのは分かってんだ、さっさときやがれ。今晩十二時までにテメェらがこねぇというのなら、テメェらとやりあうために用意した軍勢を街中に繰り出させるぞ・・・以上です。口上は無用とのことですので、これ以上無意味なことを言わず、帰らせていただきます」

 そう言って立ち去ろうとする雪慈ちゃん。

「待って!」

 その背中に声をかける。僕には、どうしても納得できないことがあるからだ。

「どうして? あいつは紫織を殺したやつなんだよ!? 僕が憎いのだとしても・・・どうしてあいつと組んでいるの!?」

 ゆっくりと振り向く雪慈ちゃん。どうして・・・どうしてよりにもよってあいつと!?

「決まっているでしょう・・・? あなたを殺したいからです。私も主の配下の者として戦いに赴くつもりですので・・・出会った時は、全力で殺しあいましょう」

 そっと微笑みながらそんなことを言う雪慈ちゃん・・・そんな・・・そこまで、僕が憎いのか? 紫織を殺した本人よりも、僕が憎いのか!?

 そう思いながら、雪慈ちゃんを見送ることしか、僕には出来なかった。

「今晩、か・・・どう? 狐子、行けそう?」

「・・・一対一なら、五分五分といったところか。あとは慎一しだいじゃが・・・」

 狐子さんのその声は耳に入る。意味も理解できる。でも・・・僕は、雪慈ちゃんの言葉に打ちのめされ、その言葉に返事をすることも出来ない。

「・・・きつそうね。どうする? 結界を消してしまえば、あのビルごとあいつを消し飛ばすことは出来るけど・・・」

「そうじゃな・・・確実性のないわしが行くより、多少どころではなく騒ぎになるとしても、ぬしに任せたほうがよいのかも知れぬ・・・」

 ビルごと消し飛ばす・・・? そうするほうが確実・・・? でも・・・それじゃあ・・・雪慈ちゃんも・・・。

「・・・待ってください。いけます。だから・・・」

「・・・本当に? 行けばあの子と戦うことになるわよ? その覚悟は・・・できているの?」

「・・・はい。でも、戦う前に、話をさせてください。殺さねばならないとしても・・・その前に、話をさせてください」

 どうしてあいつなんかと組んでまで僕を殺したいのか・・・いや、違う。今になってみると、あの微笑には嘘があるように感じた。だから、あの微笑の裏に隠されたものは何なのか、それを聞かなくては。戦うにしても、それを知らなくては、戦うなんて出来ない。

「だそうだけど・・・どうする? 狐子」

「・・・分かった、話を出来る状況でないのなら、わしが何とかして時間を稼ごう。ただし・・・もし、殺さねばならぬとしたら、そのときは止めるでないぞ。止めようとしたら・・・」

「大丈夫です。敵になってしまっているのなら・・・そのときは、せめて苦しませないであげてください」

 頷く狐子さん。自分の手にかける覚悟はない。だけど・・・。

「そうと決まれば、今日の訓練はこれでおしまいにしましょう」

「いえ、少しでも強くなりたいので――」

「だめよ。今夜が決戦と決まったのなら、少しでも体力を温存すべき。分かるでしょう?」

「・・・そう、ですね」

 少しでも強くなれば雪慈ちゃんをとめることができるかもしれないと思ったけど・・・そうだよな。体力を温存しておかないと・・・でも、少しでも強くならないと・・・。

「どうしてもというのなら、邯鄲の夢見筒での訓練でもするとよい。多少の術訓練程度なら戦闘に支障を及ぼさぬはずじゃ」

「うーん・・・そうね。でも、ちょっとだけよ。万が一を考えると今から睡眠をとって体力を回復させておいてほしいぐらいだもの。やる?」

 もちろんだ。迷うことなく頷く。

 すると、小夏さんは手招きをして社務所の中に入っていった。そうか、現実では眠っているような形なのだから、どこか安心できるような場所でないといけないよな。

「さて、おぬしらが向こうにいっている間、わしがおぬしらを守ろう。ゆっくりやってくるとよい」

「はい・・・ありがとうございます」

 狐子さんの言葉に答えを返し、僕もまた社務所の中へと入っていった。










第六幕 了

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