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隣の憑神さま  作者: 有瀬川辰巳
第一章
3/10

二幕 変貌する日常・午前

「ふわぁ・・・ふぅ・・・久しぶりに熟睡できた気がするな・・・」

 そんな独り言を呟きながら体を起こし、服を変えていなかったことにふと気がつく。昨日は疲れていたから、家について、二階の自分の部屋のベッドに横たわるなり眠ってしまったのだった。そういえば、今日は夢を見なかった。熟睡できたと感じるのはそれでだろうか。

「汗、結構かいてたんだな・・・気持ち悪い。お風呂に入って着替えたいな・・・あ、でも傷口が胸だから・・・体を拭くぐらいのほうがいいかな・・・」

 そんな独り言を呟きながら、階下のリビングへと向かう僕の鼻腔を出汁の匂いがくすぐる。いつもより起きるのが遅くなってしまったようだ。といっても、まだ7時ぐらいだと思うけど・・・まあ、母さんが帰ってきたんだから、自分が家事をやることもないか。

 そんなことを考えながらリビングのドアを開ける。

「おはようございますです、しんいちおにいちゃん」

 リビングに入った僕を迎えてくれたのは意外にも愛紗ちゃんだった。

「おはよう、愛紗ちゃん。早起きなんだね」

「はいです、今日は早くに目が覚めてしまいました」

「それでお手伝いしてくれたのよ~、愛紗ちゃんはいい子ね~」

 台所から母さんがそんなことを言う。

「へえ、お手伝いしてくれたんだ。ありがとう」

「おてつだいっていっても、ねぎを切っただけですよ?」

 小鉢の中に入れられている小口切りにされたねぎを見る。そこには母さんが切ったときよりもきれいに切られたねぎが入っている。

「十分だよ。それに、きれいに切れてるよ。ほら」

「そう、ですか? なら、よかったです・・・えへへ」

 そう言って褒めると、愛紗ちゃんは照れたような笑顔を見せた。その笑顔は、昨日と比べて自然な笑顔に見えた。

「そういえば、父さんはどこに?」

「まだ夢の中じゃないかしら~。あの人はあの人で疲れてたみたいだもの」

「そっか、でももうすぐ朝ごはんだよね・・・よし、愛紗ちゃん。僕と一緒に父さんを起こしに行こうか!」

「はいです! えいじさーん! 朝ですよー!」

「そうそう! 朝だー!」

 一緒に父さんの寝室まで行く。その途中の僕らはきっとイタズラをしにいく子供そのものだったろう。

(愛紗ちゃん、音を立てないように、そーっとだよ)

(はいです、しんいちおにいちゃん)

 そんなことを小声で話しながら、父さんの枕元にそっと近寄る。そして、僕が父さんの右側、愛紗ちゃんが左側に立ったところで、そっと目配せをする。そして僕が指を三本立て、一本ずつ折っていく。そして、それがすべて折られたタイミングで、僕と愛紗ちゃんは父さんの布団を引っぺがしながら

「「朝だー!」」

 と叫ぶ。

「ん・・・おぉ、愛紗ちゃん、起こしに来てくれたのか。慎一も」

「そうです! しんいちおにいちゃんとおこしにきました! えいじさん、もうあさごはんですよ?」

「そうかそうか。じゃあ起きないとね・・・もしも次があったら、もう少し優しく起こしてくれると嬉しいな。冬だから布団を取られると寒いんだよ」

 そういうと父さんはオーバーに震えて見せた。

「分かったよ。でも、とりあえずはもう起きてよ。父さん」

 そう言い残して父さんの部屋を出る。そして愛紗ちゃんと顔を見合わせて笑う。

「アハハ・・・こんないたずらみたいなことしたの、いつぶりだろう・・・凄く楽しいや」

「えいじさん、少しおどろいてました! わたしもなんだか楽しかったです!」

「そっか・・・フフ、それはよかったよ」

 笑いあいながらリビングへと戻ると、ちょうど母さんがテーブルに朝食を並べているところだった。

「あらあら、二人ともとっても楽しそうね~。私も行けばよかったかしら~」

「はいです! 楽しかったです! えいじさんのおふとんを、しんいちおにいちゃんといっしょにバッてめくって・・・えいじさん、少しおどろいてました!」

「あらあら~、それはとっても楽しそう・・・うふふ」

 そんな話をしながら椅子に座る。愛紗ちゃんの椅子はなかったのでお客さん用の椅子を使ってもらっている。

「やあ、おはよう・・・寒いね、今日も」

「それはもう、冬だもの~」

 父さんもリビングに入り、朝食が始まった。


‡   ‡


「ご馳走様でした。さて、父さんたちは今日何をする予定?」

 朝食を終え、本来ならまだ新婚(?)旅行中のはずだった父さんたちに予定を聞く。

「そうだね・・・まずは愛紗ちゃんを養子にする手続きをとらないといけないね。それ以外に予定らしい予定はないかな。幸衛は?」

「私は、そうね~。しいて言うなら食材の買出しかしら~」

「あ、買い物に行くなら手伝おうか? 荷物持ちくらいならできると思うから」

 母さんが買出しというときは大抵の場合結構な量を買ってくる。そう思って手伝いを申し出る。

「う~ん・・・手伝ってほしいとは思うけれど・・・しんちゃんには別のお願いしたいことがあるのよ~」

「別のことって・・・なに?」

 これといって思い当たる節はないけれど・・・。

「あのね・・・愛紗ちゃんの持ち物を一緒に取りに行ってあげてほしいの」

「それってつまり・・・愛紗ちゃんの家に行けばいいってこと?」

「そうよ~。愛紗ちゃんの荷物を取りに来た、といえば通してくれるようにしておく。って昨日話した刑事さんから聞かされているわ」

「そうなんだ・・・うん、僕はいいよ。でも・・・」

 愛紗ちゃんは大丈夫だろうか。だって、愛紗ちゃんの家に行くっていうことは、愛紗ちゃんの家族が殺された場所に行くっていうことなのだから。

 それに、愛紗ちゃんは家族が殺されるところを目の当たりにしたわけではない。刑事さんから聞かされただけ、というのが昨日の話から考えられることだけど・・・もしも、愛紗ちゃんがこんなに気丈に振舞っていられるのが、刑事が嘘を言っているだけ、そう考えているからだとしたら? 愛紗ちゃんが家に行くことは、家族が殺された証拠を目にしてしまうこととほぼ同義だ。もしも僕の仮定が正しいとしたら、愛紗ちゃんの心が壊れてしまう可能性だってありうる。

 そう心配したのだけれど。

「・・・しんいちおにいちゃんは、いっしょにきてくれるんですね?」

「・・・うん。でも、愛紗ちゃんにとってつらいものを見ることになると思う。だから、愛紗ちゃんは待っていてもいいんだよ?」

「・・・そんなの、全部分かってます。でも・・・しんいちおにいちゃんがいっしょにきてくれるなら、わたし、がんばれます・・・」

  どうやら、愛紗ちゃんは僕が思っているよりも強い心を持っているようだった。

「分かった・・・それじゃあ、一緒に行こうか」

「はいです・・・!」

 だけど、どんなに強い心を持っていても、まだ子供なんだ・・・きっと家族が殺されたことを証明するようなものを見てしまえばきっと取り乱す。だったら、そのときに支えるのは僕だ。妹を兄として支えなくては。そんな考えが頭に浮かぶ。

「それじゃあ、今日の皆の予定はこんなところだよね? じゃあ、僕はちょっと・・・」

 そう言って仏壇へと向かい、手を合わせる。そして、心の中で報告する。

 ――紫織、僕にまた妹ができたよ。だけど、今度こそちゃんと兄らしくいられるようにするから。紫織の最後のお願い・・・ちゃんと、守るからね。

 そうしていると愛紗ちゃんがいつの間にか隣に来ていた。

「しんいちおにいちゃん・・・このねこをだいている女の子、誰ですか?」

 そう聞かれて、一瞬どきりとしてしまうのは、いまだに罪を感じているからだろうか。

「この子は・・・紫織。遠坂紫織。僕の妹で・・・僕が殺してしまったも同じ人だよ」

 そう呟くと、あの日の風景がまぶたの裏に蘇ってくる。ああ、僕はきっとあの日から心の時間が止まってしまっているのかもしれないな。

「紫織はひき逃げにあって死んだ・・・それで、その車の運転手は、僕が喧嘩した相手のお兄さんだったんだ」


 ‡   ‡


 あのころ、僕は高校二年。紫織は一年だった。そして、高校の夏休み中のある日。僕はまた喧嘩をしに近所の神社の境内へと向かっていた。

『兄さん、また喧嘩?』

『・・・そうだけど。で、何か用?』

『もう、喧嘩なんてやめて・・・兄さんだって、喧嘩はいやだって言ってたじゃない・・・』

『・・・いやだけど・・・向こうから売ってきたんだ。だから、買わないと』

 そう。あのころはそう思ってた。

『兄さん、だけど・・・!』

『うるさいな! 黙ってろよ!』

『・・・っ!』

『・・・・・・』

『・・・ごめん、なさい・・・だけど・・・? ・・・! 兄さん、危ない!』

『え・・・』

 その声に反応した直後、僕は紫織に突き飛ばされて・・・。何するんだ、といって起き上がろうとしたら、紫織は車にはねられていた。


‡   ‡


「その後ね、紫織を撥ねた犯人はちゃんと逮捕された。だけど、それは違法薬物の所持によるものだった・・・紫織のことでは、僕の証言が不明確だ、ということで罪に問うことができなかったんだよ・・・ごめんね、愛紗ちゃんが辛い時にこんな話をして」

 思わず愛紗ちゃんにはなしてしまったけど・・・大丈夫だろうか。

「・・・おにいちゃんの言ったこと、難しくてよく分からないところもありました・・・でも、ひとつだけわかります」

 一呼吸あけて、愛紗ちゃんは後の言葉を続ける。

「わるいのは、はねたひとです。しんいちおにいちゃんは、ひとつもわるいところなんてないです」

「・・・そっか、そういう風に考えてくれるんだ・・・ありがとう」

 そう言って愛紗ちゃんの頭をなでる。今までも同じようなことを言われてきたけど・・・愛紗ちゃんに言われると、不思議と素直に受け止めることができる。だけど・・・やっぱり、原因を作ってしまったことに関しては責任を感じずにはいられない。だけど、それは愛紗ちゃんに言うことではないだろう。素直に、お礼を言っておく。

「さて、それじゃあ僕は下着だけでも変えてくるよ。愛紗ちゃんも準備をしておいてね」

「はいです。えいじさん。またおようふく、かしてくださいです」

 準備、か・・・どれだけの心の準備が要るのだろう。いや・・・それは愛紗ちゃんだけじゃなくて僕のほうもだな。僕とほとんど無関係の人とはいえ・・・人が殺された場所に行くのだから。


‡   ‡


 着替えを終えた僕は、すぐに愛紗ちゃんと出かけた。八重坂駅行きの電車は休日とはいえ、午前中だからだろう。人はあまり乗っていない。

「・・・・・・」

 家の外にでてから愛紗ちゃんは一言も喋らない。その理由は僕にだって分かる。だから、僕のほうからも話しかけられない。

 緊張しているからだろうか。昨日は揺りかごのような安らぎを感じた電車の揺れだというのに、今は目を覚まさせてくれる。

『次は、八重坂、八重坂駅です』

 流れる電車のアナウンス。

「愛紗ちゃん・・・そろそろ着くね」

「はいです・・・あんないは、わたしがしますから、しんいちおにいちゃんはちゃんとついてきてください・・・です」

「うん、ちゃんとついていくよ」

 愛紗ちゃんは緊張した、それでいてどこか泣き出してしまいそうな表情で僕にそう言ってくる。当然だ・・・いよいよ、だもんな。

「・・・しんいちおにいちゃん。わたし、きっとないてしまいます・・・きっと、めいわくだとおもいます。でも・・・」

 電車を降りながら、愛紗ちゃんはそう言う。僕はそれを聞いて思う。愛紗ちゃんはしっかりしすぎている。この年で自身の感情の整理をできるのだから。だけど、愛紗ちゃんが自覚しているようにきっと整理しきれないことも有るだろう。だから――

「大丈夫。迷惑なんかじゃない。だって、愛紗ちゃんは・・・愛紗は、僕の大事な妹じゃないか。つらいなら泣いていい。僕は愛紗が泣き止むまで、愛紗の近くにいる。愛紗を守る。だから、心配しないで?」

 だから、僕は愛紗ちゃんを・・・愛紗を安心させるために、そう言う。それは僕にとって当然のことでもあり―紫織との約束を守ることにもつながるのだ。だから、決めた。愛紗は僕の妹で、僕が守るべき家族だ。何が起きようと、最後まで守りきると。

「しんいちおにいちゃん・・・はいです・・・ありがとうございます」

「いいんだよ。それと、愛紗。敬語はやめていいよ。だって、僕は愛紗のお兄ちゃんなんだからね。敬語なんて使わなくていいよ」

しゃがんで、愛紗と同じ視線の高さになって、頭をなでながら言う。

「しんいちおにいちゃん・・・。おにいちゃんは、ほんとうに優しいですね。じゃあ、これからは・・・少しずつ、お母さんたちと話していたように話せるようにしますです」

「うん、ありがとう・・・それじゃ、行こうか。愛紗、案内してもらえる?」

「うん。おにいちゃん、こっち」

 愛紗に手を引かれ、僕は歩き出した。


‡   ‡


「ここが、わたしのおうちです・・・ひとと、黄色いテープがいっぱいです・・・」

 そう言って愛紗が指差した家の回りには、出入りする警察官数人。それに加え立ち入り禁止のテープが周りに張り巡らされている。それに、どうも野次馬もいるようだ。無関係そうな人たちが周りにいる。

「そうだね・・・」

 扉のところに立っている警察官に声をかける。愛紗の荷物を取りにきたことを伝えると、今朝母さんから聞いたとおりあっさりと通してくれた。愛紗に手を引かれ、家の中に入る。

 その途端、異臭が鼻を突いた。生臭く、どこか錆びた鉄を思い出させる匂い・・・血の臭いだ。

「・・・っ! 何でこんな臭いが・・・」

 その問の答えは、数歩歩いた先、おそらくリビングだったであろう場所を見たとき、一瞬で分かった。

 その部屋は、どこまでも赤い。それが壁紙の色だったらどれだけ救いになっただろう。

 その部屋は、どこまでも赤い。それが床板の色だったらどれだけ救いになっただろう。

 だけど、そんな救いはその部屋にはない。ただ、どこまでも血の赤で埋め尽くされている。真っ赤な床、真っ赤な壁。その赤は天井にまで飛び散っていて・・・その部屋で起きた惨劇をいやでも想像させる。いや、させようとする。

 だって、想像なんて出来るわけがない。だって、血だよ? 人の体の中に流れているものなんだよ? それが、一体何をすればこんなに流れ出すというんだ?

 僕は、ところどころに床板や壁紙本来の色を残す部屋を見て、呆然としながら、そんなことを考えていて――不意に、吐き気に襲われた。いや、それは当然の反応なのかもしれない。これだけの血を見て、平静を保てるような人、いるはずない。

 いるはずない――そうだ、愛紗は? 愛紗だって、そのはずだ。そう考えて、愛紗のほうを見る。だけど、そこに僕の知っている愛紗はいない。

 愛紗は、どこまでも冷め切った瞳でその光景を見ていた。無感情な瞳。感情のない表情。

「・・・わかっておった」

 愛紗の異様とすら言える無表情におびえすら感じたとき、不意に愛紗はそういった。だけど・・・その口調は、まるで別人。

「刑事に話を聞かされたとき、既にわかっておった・・・みな死んでしまったのだと。それでも・・・この光景はなんじゃ? 一体何が起きた? いったい何をすれば・・・これほど悲惨な光景ができる!」

 愛紗は叫びながら壁に手をたたきつける。そうしているうちに表情に、瞳に感情が戻ってきているのをかんじる。だけど、愛紗の口調はまるで別人のもののまま。

「あい、しゃ・・・?」

 こみ上げる吐き気を抑えながら愛紗に声をかける。すると、愛紗は僕が隣にいたことに初めて気がついたように、体をびくりとさせた。

「し、んいちっ・・・わっ、しは・・・どうすれば・・・これから、どうすれば・・・」

 愛紗は、僕のほうを見て、涙目でつっかえつっかえにそういうと、涙をこぼした。それで僕は、愛紗はあまりの光景に一瞬感情を失って、その後に取り乱したのだろう、と考えた。当然だ。これだけの光景を目の当たりにしてしまったのだから。

「大丈夫だよ」

 僕は、愛紗を抱きしめ、耳元で優しくささやく。

「大丈夫・・・愛紗は、僕の妹だ。母さんと、父さんの娘だ・・・みんなが、愛紗を守るから・・・大丈夫・・・」

 他に言うべき言葉があるかもしれない。でも、今の僕にはこれ以外に思いつかない。

「う、ん・・・うんっ・・・」

 神様は残酷だ。泣いている愛紗を見ていると、どうしてもそう思えてくる。どうして、こんなに幼い子供にこれほどつらい運命を背負わせることができるのだろうか、と。そう思えてならない。


‡   ‡


「・・・もう、平気・・・ありがとう」

 泣く愛紗を抱きしめていること、数分。あるいは、数十分たったかもしれない。愛紗は、搾り出すようにしてそういった。

「愛紗・・・本当に、大丈夫?」

「うん・・・かなしいけど、わたしがないても、おとうさんもおかあさんもよろこばないから・・・」

「そうだね・・・」

 愛紗は本当に強い子だ。あんな光景を見て、両親が殺されたと理解して。それでもなお、こんな風に気丈に振舞っていられるのだから。

「だけど、泣きたいと思ったら、我慢はしないで。僕がちゃんと近くにいるから。愛紗の悲しい気持ちを受け止めるから・・・」

 だけど、愛紗はまだ子供なんだ。大人だってこらえ切れない家族の死を受け止めきれるはずがない。だから、僕は愛紗に伝える。僕はいつだって愛紗を支えると。

「うん・・・ありがとう」

 そういう愛紗は笑ってはいない。だけど、それは無理をしていないということでもある。少なくとも、昨日の笑顔よりは、よっぽど自然な表情に見えた。

「はやくわたしの持ち物もっていかないと。おまわりさん達のじゃまになっちゃいます」

「うん、そうだね。それじゃあ、愛紗の部屋に案内してもらっていいかな?」

「うん、こっち」

 再び愛紗に手を引かれ、歩き出す。廊下の突き当りまで行き、右に曲がっると、“あいしゃ”とかかれたドアプレートがかけられている部屋があった。

「ここだね? それじゃあ・・・おじゃまします」

 扉を開けると、先ほどの光景とは真逆の日常の光景が目に映る。

 愛紗らしい、かわいい部屋だな、と思った。薄いピンク色を基調にそろえられた家具や壁紙。いろんな動物のぬいぐるみ。それと、なにやら難しそうな本に、木刀。これは愛紗の両親が置き場所に困って愛紗に預かってもらうことにしたのだろうか。

 もしそうだとしたら、この本が引き取られることは絶対にない。そう考えると、少しつらくなった。

「できれば、このへやのものぜんぶもって行きたいです。でも・・・」

「愛紗がそうしたいんだったら、僕は協力するよ。そのために大きなかばんを何個も持ってきたわけだし・・・それに、僕が思っていたよりはずっと少ないからね。何とかなるよ」

 これは事実。服とかかさばるものはほとんどないから、多分愛紗にかばん一つ分も持ってもらえれば何とかなるだろう。リュックサックもあることだし。

「ほんとうですか? じゃあ・・・おねがいします」

 任せて、といって背負ってきたかばんを床に下ろし、愛紗の部屋のものを手分けして詰め込み始める。僕はぬいぐるみだとか、僕が見たり触ったりしてもいいものを。愛紗は僕に見られたくないものをかばんに詰め込んでいく。

 数分後、愛紗の部屋のものはあらかた詰め終わった。

「愛紗、他にもっていきたいものはない?」

「うん、このへやのものは、だいじょうぶです・・・」

 そういう愛紗の手には、先ほど見かけた本と木刀が握られていた。

「それも、もって行くの?」

「はいです。ぼくとうは、おとうさんがくれたもの。本は、おかあさんがあずけてくれたものです・・・だから・・・」

 つまり、形見ということなのだろう。愛紗は本当に年不相応なほどしっかりしているな。

「そっか。それじゃあ、もって行かないとね」

 そう言って微笑みかけ、愛紗の持っているかばんをひとつ受け取る。念のためリュックサックも持ってきておいて正解だったな。

「ところで、この部屋のものは、ってことは他の部屋にも持って帰りたいものがあるの?」

「はいです。でも、ふくだからきていきます。だから、荷物にはならないですよ?」

「そっか。それじゃあ、その部屋まで連れて行ってもらっていいかな?」

 そういうと、愛紗はどこか困ったような顔をした。あれ? 何かまずいこといったかな・・・?

「おにいちゃん、わたしのきがえるところ見るですか・・・?」

 その言葉を聞いてどうして困った表情なのか理解した。

「ご、ごめん! そういうつもりで言ったわけじゃないんだ! えっと・・・部屋の前まで案内してもらっていいかな? 僕は愛紗が着替えている間部屋の前で待っているから」

 そりゃそうだよね・・・愛紗ぐらいの年の子だったら普通に恥ずかしいよね・・・。そんなことも考えないで一緒に部屋の中に入るとも取れるような言い方をしたのはまずかった。

「はいです。となりのへやなので、すぐですよ」

 そういうと愛紗は部屋を出た。僕もそのあとを追って部屋を出る。

「きがえるのに、すこし時間がかかります・・・でも、のぞかないでくださいね?」

 来るときとは逆に曲がったほうの部屋に入り際に愛紗はそういった。流石に苦笑する。どうも疑われちゃってるな・・・。

 そんなことを考えていると、部屋の中から何かを叩く音が聞こえた。

「ひっ、く・・・ぐす・・・」

 続いて、押し殺した泣き声。そうか・・・愛紗は、また泣いているんだな。さっきは、僕にあまり迷惑をかけないように、と無理して泣き止んだだけなのだろう・・・愛紗、本当にしっかりしすぎだよ。いや・・・落ち着いて考えろ。僕がしっかりしていないだけだ。常識で考えろ、自分。親が殺されたんだぞ。愛紗が数分で感情の整理をつけるなんてできるわけ無いだろ。くそ・・・何が愛紗のお兄ちゃんだ。ぜんぜんだめじゃないか。まったく愛紗の気持ちを分かってないじゃないか。愛紗を守れていないじゃないか。こんなんじゃあ、紫織との約束だって・・・ぜんぜん守れてないじゃないか。僕は・・・どこまでも兄失格だな。紫織の兄としても、愛紗の兄としても・・・。

(くっ・・・そぉ・・・っ!)

 本当は叫びたかった。それぐらい・・・自分がふがいなくて、許せなかった。だけど、そんな権利は自分にはない。愛紗の押し殺した泣き声は、僕にその意識を持たせるには十分すぎた。

 ごめん・・・ごめんね。愛紗・・・。

 捜査中の警察官の出すわずかな物音を聞きながら、僕はひたすら詫びていた。

「おにいちゃん・・・どうかしましたか?」

 愛紗のその声で我を取り戻す。

「いや、なんでもないよ愛――」

 振り向いた僕の視界に、愛紗がいた。いや、それは当然なのだが――

「きれい・・・」

 思わずそう呟いてしまうほどの美しさの愛紗が、そこに立っていた。

 先ほどまでと違うのは、服装だけだ。先ほどまでいたって普通の洋服を着ていた愛紗は、今は白無垢を思わせる純白の和服に身を包んでいた。それだけの違いなのに――あまりにも、美しすぎる。長い黒髪と白い和服のコントラスト・・・いや、そんな視覚的なものだけではなく、オーラとでも言うのだろうか。彼女が放つもの自体が変わったようにすら思える。

「きれいですか? えへヘ・・・ほめてもらえて、うれしいです」

 そう言って恥ずかしそうに笑う愛紗。その笑顔を見ていると詫びる暇などない、愛紗の兄として恥ずかしくない人間にならなくては、と思わされる。

「えっと・・・持ち帰りたいものは、もうないかな?」

 きれいと言ってしまった恥ずかしさと愛紗の兄としてふさわしくならねばという緊張を表に出さないようにしてそういう。

「はいです・・・このふく、おとうさんとおかあさんがわたしに、って選んでくれたものなんです。だから、どうしても持っていきたくて・・・」

「そうなんだ・・・道理で。よく似合っているよ」

 そういうと、愛紗はどこか不満げに頬を膨らませた。あれ? 変なこと言ってないよね・・・?

「ほめてくれるのはうれしいです・・・でも、さっきとおなじほめられ方のほうがうれしいです」

 え・・・さっきと同じほめ方・・・つまり、きれいだ、って言ってほしいってこと?

「それは・・・ちょっと恥ずかしいな。とりあえず、もういいんだったら帰ろうか」

 さっきは思わず言ってしまったけど・・・いくら愛紗みたいに小さい子相手とはいえ女の子相手にきれいなんて言うのは・・・さすがに抵抗がある。

 だからそれだけ言って帰ってしまおうとしたんだけど・・・。

「さっきと同じようにほめてくださいです。おにいちゃん」

 かわいい妹に抱きつかれながら言われてしまうと、その思いも鈍るというものだ。

「でもなぁ・・・やっぱりちょっと恥ずかしいよ」

「じゃあ・・・にあってないですか?」

「そんなことはないよ・・・かわいいよ」

「むぅ~・・・きれいっていってくださいです!」

 そう言って抱きついてくる愛紗は本当に可愛らしい。だけど、それは泣き出さないように無理やりそうしているだけなのかもしれない。

  それは僕の考えすぎかもしれない。だけど、少しでも笑顔になってもらうためにはどうすればいいか。それを僕はわかっている。

「・・・きれいだよ、愛紗」

 突然言ったからだろうか。愛紗はあわてた様子で顔を赤くし、手をわたわたと動かすと、

「あ・・・ありがとうです・・・」

 と、言うのだった。やっぱり突然すぎたかな・・・。

  そう思いながら出口へと向かおうとしたときだった。その声は唐突に聞こえた。

「失礼。少し時間をいただけませんか。私は警部の久世(くぜ)哲也(てつや)というものです。あなた方に、少し聞きたいことがあります・・・立ち話もなんです。近所の喫茶店にでも行きませんか」

 


‡   ‡


 その申し出を断るような理由もなかった僕達は、彼につれられて喫茶店へと向かった。

「店員さん。私にはコーヒーをブラックで。お二人もお好きなものをどうぞ。支払いは私が持ちますので」

「じゃあ・・・僕はカフェラテで。愛紗は?」

「・・・のどがかわいていないので、いらないです」

 オーダーを聞いた店員さんは店の奥に戻っていった。それをきっかけに、僕はなんとなく久世警部のことを観察していた。

 顔つきは厳しく、目付きは狼のように鋭い。まだ若そうではあるが、白髪交じりの髪はどこかふけた印象を持たせる。そして、無駄な肉の一切ついていない体つき。警部というだけあってしっかり鍛えているようだ。

 そうしている間に、店員さんが注文したものを持ってきた。久世警部が口をつけるのを見てから僕も一口飲む。

「慎一さんと、愛紗さん・・・でしたね。あなた達に聞きたいことというのは他でもありません。昨日のことです」

「でしょうね・・・。なんとなくそうだろうとは思っていました。ですが、僕からお話できることは無いに等しいです。何しろ、愛紗を追いかける男を見て走り出したところまでしか憶えていないもので・・・医者の言うことには刺されたショックで前後の記憶があいまいになっているのかもしれない、ということです」

「そうですか・・・記憶があいまいに、ねぇ・・・」

 ・・・何故だろう。何かいやな予感がする。僕から聞けないなら愛紗に話がむけられるから? いや・・・それ以外の何かを感じる。この感覚はなんだろう・・・。

「・・・そういえば、ここの隣ですね。昨日の事件があった路地は」

「・・・そうらしいですね。何があったのかすら憶えていませんが」

「しかし、妙だと思いませんか。隣の路地であなたを刺した男は逃げ出しているんですよ」

 いやな感覚が強くなる。もう少しで感覚の正体がつかめそうなほどに。

「妙、というと・・・何がですか?」

「いえ、私の考えですがね・・・おかしいんですよ。考えてみてもください。あなたは刺された。そして気を失った。それは昨日愛紗さんにご両親の話を伝えに行ったときに確認しています。なら、何故男は逃げ出したんでしょうね?」

 ああ、いやな感覚の正体が分かった。

 疑われているんだ。僕は。

 確かに、彼の話は理にかなっている。僕を刺して、男は逃げ出した。そんなのありえないじゃないか。男は既に愛紗の両親を殺している。いまさら人ひとりどうしようがどうだっていいはずだ。だから、僕を刺すという予定外のことにおびえて逃げ出したというのは考えられない。それに、そうだとしたら、目撃者の愛紗が何もされていないのはおかしい。

 じゃあ、何があったのか。愛紗が自力で追い払ったということはありえない。その程度でどうにかできる相手なら最初、家に押し入ったときにつかまっている。

 里奈さんがおまわりさんを呼んできてくれたおかげで逃げ出した? それも違う。だって、小町おばさん越しとはいえ聞いているじゃないか。里奈さんとおまわりさんがたどり着いたときには男は逃げ出していたと。

 じゃあ、残った可能性は? それは僕が何かをして男を追い払った可能性だ。だけど、そこにたどり着くとおかしい点が浮かび上がる。僕が刺されて気絶した。そのせいで前後の記憶がないといっていることだ。気絶するような場所を刺された状態で武器を持った男相手に何ができるというのか。つまり、僕が刺されたということと、僕が何とかして追い払ったということは両立しえないことなのだ。

 そこまで考えると、久世警部の立場で思いつく可能性はおそらく二つ。

 一つは、今僕が考えた可能性以外の何かによって男が逃げ出した。だけど、これは考えにくい。会社などのない街中、平日の昼間。通行人はほとんどいないし、車もろくに走っていない。それは、いつも通る道なのだから昨日の記憶がなくても分かっていることだ。

 そして、もうひとつの可能性。できれば、この可能性で僕に話を聞きに来ているとは思いたくないこと。それは――僕が何らかの理由で嘘をついているということ。だけど、そこにいたるには何か理由があるはずだ。僕の記憶にない何かが。

「・・・私が言っていることの意味。分かってくださったようですね?」

「ええ・・・なんとなくは。ですが、それは間違っていると思いますよ」

「・・・そうですか。よろしければ、そう思う根拠をお見せいただけますか? そうしたら、私もこの考えにいたった根拠をお話しますので」

 根拠。そんなものは・・・今すぐ見せられるのは、一つしかない。

 だから、僕は服の胸元までボタンを外し、傷を見せる。

「・・・この傷で十分ですか?」

「それなりに深いようですが・・・随分小さいですね。これで何故気絶したのでしょうね」

「さあ? 医者の言うことにはそういった薬品を使われたのでは、ということです」

「なるほど・・・ありがとうございます」

 そういうと、久世警部は再びコーヒーに口をつけた。

「さて・・・私のほうの根拠ですが、この店を出ないとお見せできないものでして。まあ、コーヒーを飲んでからにしようじゃないですか」

「いいですよ・・・僕はそれほど急いでいませんから」

「愛紗さんも、お時間は大丈夫ですね?」

「はい・・・おにいちゃんがだいじょうぶなら、わたしもだいじょうぶです」

 カフェラテに手を伸ばし、一気に半分くらいを飲み干す。

「・・・急いでいないというわりには、なかなか早く飲むのですね」

「ええ、急いではいませんが・・・自分にぬれ衣がかけられそうなんですから。その根拠を早く知りたいと思うのは当然だと思いませんか?」

「なるほど、ごもっともで・・・ですが、もう少しごゆっくりどうぞ。恥ずかしながら、猫舌な物でして。そんなに早く飲まれては随分お待たせすることになってしまいそうです」

「そうですか・・・」

 そういわれて、気付く。ここであまりあわてると、相手にとっては僕が嘘をついているかもという疑念を強くさせてしまうかもしれない。もう少しゆっくり飲もう。

 ゆっくり・・・ゆっくり・・・そう意識してカフェラテを飲むこと数分。久世警部がコーヒーを飲み終えるのとほぼ同じタイミングで僕もカフェラテを飲み終えた。

「では、行きましょうか。すこし、ご足労願いますよ」

「分かりました・・・行こう、愛紗」

「うん・・・」

 そう応える愛紗はどこか不安げだ。当然か。ここは昨日追いかけられていた場所のすぐ近くなのだから。

「さて、愛紗さんにはいやなことを思い出させるでしょうが、ついてきていただきますよ・・・何しろ、私の見せたい根拠とはこの路地の奥にあるものでして」

 路地の奥? それって・・・つまり愛紗が逃げ込んだ場所で、僕が刺されて気絶していた場所だよな。そこに何か根拠があるのか・・・?

「突然ですが、血液というのは普通の人にとってはいやなことの象徴だと思うのです。血が出るということは怪我をしただとか、常に痛みを伴うことですから・・・しかし、私たち警察にとってはそうでもない」

「・・・? と、言うと・・・?」

「ダイイングメッセージというものがあるでしょう。あれは被害者が最後に残す証拠であり、血液で綴られていることが多い。そしてそれと同じように血液は・・・時には自身の考えの裏づけにもなる」

「何が言いたいのかさっぱりで・・・? ・・・!?」

 路地の奥、少し曲がったところを見たとき、警部の言っていることを理解した。

 壁と地面に広がる赤黒い染み。それは、紛れもなく血痕だ。目にしてもいたって平静を保っていられるのは、さっきもっと凄まじい光景を見たからだと思うほどの量の血液の痕跡。それが僕の目の前に広がっている。

「・・・私があなたを疑う理由。分かっていただけましたね? 先ほど見せていただいた傷。あれからではこの量の出血はありえない。それ以前に、この量は完全に致死量です。だから・・・私はあなたを疑うのですよ」

 確かに・・・久世警部の言っていることは本当のことだろう。医学に詳しくない僕ですら、この量は致死量だろうと分かるのだから。

「さて・・・率直に言わせていただきましょう。慎一さん、あなたのしたことを認めてはいただけませんか? 殺してしまったことは事実だとしても、あなたのしたことは紛れもない正当防衛です。今なら罪もまだ軽い。ですから、愛紗さんを襲った男の遺体をどこに隠したのか、教えていただけませんか?」

 違う、僕は何もやっていない。その言葉が口をついてでようとした――だけど、出せない。

 だって、僕はその前後の記憶がないのだから。

 記憶を失うのは、脳にダメージを受けたとき以外にも、心に深い傷を負うような出来事があったときにも起こると聞く。もしも、僕にとっての心に深い傷を負うような出来事というのが殺人だとしたら? それは・・・ありえることなのではないか?

「僕は・・・あの時一体何をしたんだ・・・?」

 うぅ・・・頭がいたい・・・。

「・・・違う」

 ひどく痛む頭に、その声が響いた。

「私たちは何もしていません。あの男の人が逃げた理由なんて分かりませんけど・・・お兄ちゃんを刺した後にあの男の人が逃げ出したんです。それが・・・全部です」

 凛とした声。その声は、愛紗のものだ。

「お話はもうお終いですか? でしたら・・・失礼します」

 そういうと愛紗は僕の手を引いて路地の外へと歩き出した。

「お兄ちゃん、大丈夫ですか!?」

 路地の外へ出るなり、愛紗は僕にそう聞いてきた。

「ん・・・頭が痛いだけ・・・そうだ、ポケットに薬が・・・」

 荷物を置くというより落とすようにして手を開け、ポケットの中の薬を取り出し、飲み込む・・・ふぅ、少しは落ち着いたかな。

「しかし・・・びっくりしたよ。愛紗はあんなふうな喋り方もできるんだね」

「えっ!? あ・・・えーと・・・えへヘ・・・いざというときのとっておきです・・・わすれてくださいです」

「うん、忘れておくよ」

 だけど、すごい迫力があったなぁ・・・。愛紗みたいな小さな女の子がしているとは思えない喋り方だった。

「しかし・・・まさかこんな事態になるとはね・・・」

「だいじょうぶです! おにいちゃんがけいさつにつかまるようなことをしていないのはわたしがよくしっていますから! だから・・・」

「うん・・・ありがとう」

 そう言って愛紗の頭を軽くなでる。本当に愛紗は強くて、優しい子だな。

「さて、今度こそ帰ろうか。もうすぐお昼だからね。きっと母さんが待ってるよ」

「はいです!」

 しかし・・・こんな事態になってしまうとは思わなかったな。こうなると、記憶を失ってしまっているのが本当に苦しい。愛紗は、僕は何もしていない、といってくれるけれど・・・状況だけみれば苦しいと思う。最悪の場合、愛紗が僕をかばおうとして嘘を言っているという可能性も・・・いや、これは考えすぎだな。

 うん・・・深刻に考えたって仕方ない。僕にできるのは待つことぐらいじゃないか。何があろうと僕が無実だという証拠が見つかるまで待つだけだ。

 そう考えながら、その場を後にした。





第二幕 了


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