双子の竜使い
小さな村の中心である教会近くは、商店街や宿屋もあり唯一活気のある場所だった。セレムとアンナが教会裏の広場に着いた頃には、人だかりも出来て人々で賑わっていた。
「見て、見て!大きな竜!私、竜を見るの初めてよ」
アンナはセレムの手を引っ張りながら、竜のいる広場に足早に歩いていく。
「……」
セレムが竜を見るのも久しぶりのことだった。ラルフの竜コーリーは、優しい目をした雌の竜。薄緑色の柔らかく温かい体をしていた。
今、セレムの目の前には、薄い灰色をした竜と薄いクリーム色の二匹の竜がいる。コーリーよりは小さい気がする。二匹とも羽をたたんで大人しく佇んでいた。
「向こうで男の子と女の子が何か売ってるわ!」
アンナは竜より竜使いの運んできた品物に興味があり、人だかりの方へと駆けていった。セレムは無言でアンナを見送り、二匹の竜達の方へと近づいて行った。頭を垂れてじっとしていた竜は、人の気配に気づき頭を上げる。
コーリーと同じ優しい目をした竜達。竜達は小さくいななくと、じっとセレムを見つめている。セレムの口元は自然に弛んでいった。
「コーリーみたいだ」
セレムは竜のすぐ側まで歩いて行って、クリーム色した竜の背中をそっとなでた。竜はセレムを嫌がりもせず、つぶらな瞳を瞬かせる。懐かしい竜の匂い。温かな体。いつの間にか、セレムは竜の背に顔を埋めて目を瞑っていた。
「竜が好きなの?」
突然、甲高い声がし、セレムははっとして顔を上げる。少し癖のある栗色の長い髪を一つに束ねた竜使いが、セレムに笑顔を向けていた。 年はセレムとあまり変わらないように見える。
「この子はルピィ、あっちのグレーの子がレピィ」
そう言って竜使いはバケツに汲んだ水を竜達に差し出した。二匹の竜はバケツに顔をつけながら、美味しそうに水を飲み始める。セレムはまたコーリーのことを思い出す。コーリーもラルフが持ってきた餌や水を、美味しそうに食べたり飲んだりしていた。
「後で竜に乗ってみる?」
熱心に竜を見ているセレムに、竜使いの子は親しげに話しかける。
「……」
セレムが戸惑っていると、アンナが走って戻って来た。アンナはいつも走っている。アンナは竜使いを一瞥すると、セレムの腕をとって引き寄せた。
「セレム、向こうに行きましょう、珍しい果物がたくさんあったわ」
「でも…」
セレムは竜と竜使いが気になる。アンナはセレムに微笑みかけている竜使いを睨んだ。他の少女がセレムと仲良くするのは大いに気になる。特に美少女なら尚更。
「あんた、向こうで果物を売ってる男の子の妹なの?顔がよく似てるわね」
アンナが目を向けた先には、栗色の短い髪をしたもう1人の竜使いが、皆の前で商売をしていた。手際よく品物を売りさばいている。
「う〜ん、きょうだいなのは確か。双子だから。でも、向こうにいるのは姉のレナで、僕は弟のギルだよ」
「あんた男なの?…」
言葉に詰まったアンナを見て、ギルは明るく笑った。