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エピローグ

 草原を吹き抜ける風は、柔らかな草花の香りを運んでくる。穏やかな春の日差しの中に、全ての景色は優しく包まれている。

 なだらかな丘の上にあるラルフの墓の前に、セレムは佇んでいた。セレムの隣りにはフェアリがじっと座っている。もう小さなフェアリではない。真っ白な体と丸い目は変わっていないが、今ではルピィよりも大きな竜に成長していた。

 あれから半年が過ぎ、季節は春に変わっていた。数週間前、シンとアリシアとレナとギルが、竜の谷に帰ってきた。嬉しい再会。楽しい日々。そして今日、シンとアリシアはまた南の国に戻っていく。

「兄さん、フェアリと一緒に南の国に行って来るよ」

 セレムは、持ってきた花束をラルフの墓に供えた。横のフェアリは顔を上げていななく。フェアリの背にはセレムの荷物が乗せてある。レナとギルが竜の谷に残ってコルバとゆっくり過ごしている間、セレムはシンとアリシアと共に南の国に行くことに決めた。遠い南の国へは長い旅になるが、フェアリには長旅に耐えられるだけの体力がついている。フェアリは、子供の頃のまま元気でやんちゃに育っていた。

 フェアリの成長にはかなわないが、セレムも半年前に比べると身長も伸びて日に日に大人に近づいている。今に、ラルフのことを『兄さん』と呼ぶのが変に思えてくることだろう。

 やがて、春の霞んだ空の上に二匹の竜の姿が見えてきた。シンとアリシアは、南の国に帰る途中にセレムの村に立ち寄る予定だった。その姿を確認すると、セレムはフェアリの背に乗った。

「フェアリ、行くよ」

 フェアリは大きくいなないて、羽を羽ばたかせ、ゆっくりと上空に舞い上がって行った。だんだんとラルフの墓が小さくなっていく。春の風に乗り、セレムは更に高度を上げていった。

「あ……」

 森の上空に近づいた時、セレムは光るものを目にした。鳥のように、森の上を飛びまわっている。いつか、レナが森で目にしたというあの光りだろうか?

「ラルフ?……」

 一瞬だけ、セレムの目にはラルフとコーリーの姿に見えた。そして、それは森の中へとスッと消えていった。

「ありがとう、ラルフ」

 ラルフとコーリーは、セレムを見送ってくれたのだろうか?光りが消えた森を見つめ、セレムは微笑んだ。そして、空へと羽ばたいて行った。



 季節がめぐり、遙かな時が過ぎゆき、竜の姿がこの世から消えていった後も、竜の谷のことは語り継がれ、人々の記憶に残っていった。

 セレムの竜フェアリは、随分と長生きをして、セレムの子孫の代まで村と竜の谷を守り続けた。そして、村の森はいつしかラルフの森と呼ばれるようになった。深く険しい森で、道に迷いそうになった人の中には、竜に乗った少年の姿を目撃する者がいるという。そして、その姿を目にすれば、必ず森を抜けることが出来る。

 ラルフとコーリーの守る森では、人々が迷うことは決してなかった。     完

最後まで読んで下さって、ありがとうございました!ついに完結することが出来ました!

この物語で一番書きたかったことは、セレムの心の成長です。だんだんと大人に近づいてゆくセレムを描きたかったんですが、上手く伝わったでしょうか?(^^;)その後のセレムがどうなったか?誰と結ばれたか?は、私自身も分かりません。読者の方々の想像を大切にしたいので、お任せいたします。

長い間お付き合いありがとうございました。これからも、短編、長編と書いていきたいと思います。

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