表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/42

二匹の竜

 雷と雨は一晩中続いた。結局セレムは明け方近くまで眠ることが出来なかった。忘れたくても忘れられない過去の恐怖。ラルフが亡くなった時も激しい雨と雷が鳴り続けていた。あの時以来、セレムにとって嵐は忌まわしい存在となった。

 耳をつんざく雷鳴、叩きつけるような大粒の雨、竜のいななき、ラルフの苦しげな顔!鮮明な映像がぐるぐると夢の中に表れ、セレムは悲鳴を上げて飛び起きた。

 既に夜が明けて嵐は去り、雨もあがっている。セレムは深呼吸し、額に浮かんだ汗を手で拭った。心臓はまだドキドキと高鳴っている。

 セレムはベッドから起きあがり、カーテンを開けた。朝の光が部屋に射し込んでくる。昨夜の嵐が嘘のようだった。窓を開いて空を見上げてみると、雲の浮かぶ空にうっすらと虹が架かっていた。穏やかな景色に、セレムの心は次第に落ち着きを取り戻してくる。

「あっ?…」

 空を見ていたセレムは小さく驚きの声を上げる。虹の浮かんだ空に二つの影が浮かんでいた。二つの影は羽ばたきながら、段々と近づいて来る。大きくなった影は、二匹の竜だった。竜の上には一人ずつ人が乗っているようだ。竜達はゆっくりとセレムの家の上空を通り過ぎて行った。

 山の向こうの谷に住んでいるという、竜使いの人々と竜なのだろう。今は村まで降りてくることはあまりないが、ラルフは時々谷間まで出かけていたらしい。はっきりとは覚えていないセレムだが、何度かラルフと一緒に谷間に行ったことがある。

 竜の飛んでいった空をぼんやりと眺めていると、アンナの声が聞こえてきた。

「セレムー!」

 昨日と同じように、アンナは息を切らせながら元気に駆けてくる。

「おはよう!ねぇ見た、竜が村にやって来たわ」

 アンナはセレムの部屋の窓まで来ると、笑顔を浮かべて言った。

「うん」セレムは短く答える。

「見に行きましょうよ!教会の裏の広場に行ったらしいわ。母さんも行っていいって言ったから。きっと谷間の珍しい食べ物を売りに来たんだわ」

 セレムが断る理由もなく、アンナは今にもセレムの手を引いて連れて行きそうな勢いだった。

「うん、今着替える」

 満面に笑みを浮かべてじっとセレムを見つめるアンナの顔の前で、セレムはカーテンを引いた。

読んで下さってありがとうございました。
ちょっとずつ書き進んでます。(^^;)ちまちまと書いていきます。よろしく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ