暗い森で
霧の立ちこめる薄暗い森の中を、セレムはひたすら走って行った。
「アンナ!フェアリ!」
白い霧がかかり、辺りの様子が見えない森に向かって叫ぶ。まだそんなに遠くへは行っていないはず。何度も通り慣れている森なのだが、進むに連れて方向が分からなくなりそうだった。
セレムは立ち止まった。日の当たらない森の中は、ずいぶん寒くなってきた。
「アンナ!フェアリ!」
セレムはもう一度森に向かって声を上げた。静かな森にセレムの声がこだまする。だが、森は静寂を保ったままだった。このまま進んだら、道に迷って森から出られなくなるかもしれない。もうすぐ日が暮れて、夜になってしまう。
「……」
引き返して村の人達の助けをかりた方が良いかもしれない。セレムが考えていると、ポツポツと雨粒が木々の上から落ちてきた。
「フェアリ……」
この瞬間にも、フェアリはどこかで寒さに震えている。アンナは森で迷ってしまったんじゃないだろうか?セレムの不安は募っていく。早く探し出さなければ!
雨足が強くなってくる森の中を、再びセレムは駆けだした。
「アンナー!」
声を限りに叫びながら森を進んで行くと、雨音に混じって何か聞こえてきた。
「アンナ!」
更に歩いて行くと、足元の方で声がした。
「セレム!助けて!……」
声のする方に目を向けると、急な下り坂になっている足場に滑った後があった。セレムが上から覗くと、坂の下にアンナが座り込んでいた。アンナは泣きながら足首をさすっている。降りしきる雨で、全身ずぶ濡れだ。
セレムは滑らないよう注意しながら、アンナの元まで降りていった。
「フェアリはどこ?」
アンナは泣きじゃくりながら、首を振った。
「急に霧が出てきて、道が分からなくなって……そしたらフェアリと一緒に滑って転んだのよ。そのままフェアリはどっかに行っちゃったわ」
「なんでフェアリを連れて森に行ったんだよ?!なんで嘘ついたんだ!」
フェアリがいなくなったことの焦り、アンナに対する怒りがこみ上げてくる。
「絶対許さない!このままフェアリが見つからなかったらどうするんだ!」
滅多に怒らないセレムのきつい表情にアンナは怯える。
「だって、セレムはフェアリのことばっかり……竜の谷に行ってばかりなんだから!あたしのことなんかちっとも構ってくれないんだもん!フェアリなんていなくなれば良いと思ったのよ……」
アンナはしゃくり上げながら、思いをぶちまける。
「足をくじいて歩けない……お願い、家まで連れて帰って……」
「!……」
勝手にフェアリを連れ出したアンナは許さない。今更泣き言を言っても、自業自得だ。それより、フェアリは今頃雨に打たれ、寒さに震えているかもしれない。早くフェアリを探しに行かないと。
セレムはアンナを置いたまま、森の奥に進もうとした。雨は一層激しく降り始め、体を打ち付ける。
「行かないでよ!……1人にしないで……」
アンナは雨に打たれて泣きじゃくる。顔は青ざめ、寒さのため体が震えていた。いつもの元気で強きなアンナの面影はなく、とても小さく弱々しく目に映る。
「……」
セレムは数歩進んだ所で引き返し、アンナに手を差しだした。
「立てる?……」
アンナは涙を手で拭うと、セレムの手に捕まって立ち上がった。足首がズキンと痛んだが、どうにか歩くことは出来た。
「足が痛い……」
「我慢して村まで歩こう」
アンナはセレムに支えられながら、森の道を歩いた。ずっとうつむいたまま、「ごめんなさい」と繰り返し涙を流していた。セレムは硬い表情で、黙々と歩いて行く。雨は容赦なく2人の体を叩き続けた。
読んで下さってありがとうございます!
もう後少しのところで、なかなかストーリーが進みません…暑さで頭の回転が悪くなってます。暑さのせいにせず、執筆も頑張らなくては!でも、暑い。^^;^^;
「フェアリ〜!」何処にいるの?(^^;)