大切なもの
「ギルや、今度は何を作っておるのかな?」
うとうととした眠りからから覚めたコルバは、居間のテーブルで木を削っているギルに声をかけた。
「これはね、セレムへのプレゼント。出来上がるまで内緒だよ」
顔を上げてギルが答える。
「ほぉっ、ほぉっ、それは楽しみじゃな」
コルバの膝の上で一緒に眠っていたフェアリも目を覚まして、大きく欠伸をする。
「フェアリも目を覚ましたね。そろそろ夕飯の準備しなきゃ」
ギルが立ち上がろうとした時、フェアリが突然鳴きだした。そわそわしながら、窓の方に首を伸ばしている。
「おや、ご主人様が帰って来たようじゃな」
コルバは目を細めて、窓の外に顔を向けた。
「あっ、ほんとだ。みんな帰って来た!」
竜達の背に乗った籠が山菜や果物でいっぱいなのを見て、ギルは外に駆けて行った。
「すごいね!大収穫だ」
ギルはセレムを手伝って、ポームのいっぱい詰まった籠を運ぶ。
「ルピィには上手く乗れた?」
「うん。ルピィは言うことを何でも聞いてくれるから、とっても乗りやすかったよ」
「そう、良かった。なら、セレムに任せても大丈夫だね」
「え?」
と、近くでシンとレナの笑い声が聞こえた。レナは楽しそうに何かシンに話しかけている。
「レナはシンといるとよく笑うね。僕の前ではちっとも笑わないのに……」
セレムはレナに目を向ける。
「僕は嫌われてるのかな?」
「そんなことないよ。レナはいつもあまり笑わないもん。シンだけは特別なんだよ、きっと」
「特別?……」
セレムとギルはポームの籠を家の中に運んだ。セレムの姿を目にすると、コルバの膝の上のフェアリが身を乗り出して鳴きだした。
「おぉ、おぉ、お待ちかねのご主人様のお帰りじゃ」
「フェアリ」
セレムはコルバの元に行き、フェアリを抱き上げた。フェアリはセレムにしっかりとしがみつき、甘えた声で鳴く。
「フェアリは本当に可愛いわね」
アリシアも家に入って来て、その様子を見つめる。
「すぐに大きくなってしまうのが、ちょっと残念だわ」
アリシアはフェアリの小さな頭を撫でて微笑んだ。
「私にも抱かせて」
「いいよ」
セレムはフェアリをアリシアに渡す。フェアリは嬉しそうに鳴きながら、アリシアの胸の中に体を埋めた。
「セレムは最近よく笑うようになったの」
その様子を眺めていたコルバは、隣りに立っていたギルに言う。
「セレムも?」
ギルはさっきのセレムとの会話を思い出す。
「そうだね。セレムも自分の竜が出来てよかったよね」
「ほぉっ、ほぉっ、セレムが明るくなったのは、それだけじゃないと思うがの」
コルバは目をいっそう細めて笑う。
「愛の力は偉大じゃな」
コルバは、セレムが笑顔でアリシアに話しかけているのを、満足そうに見つめた。
アリシアにあげたアンナの花飾りは、まだ綺麗に咲いている。壁に掛けていたその花飾りに、アリシアは霧吹きで水をかけていた。
「こうしておけば、まだまだ枯れないわ。作り方が上手いから長持ちしそうね」
「……」
セレムの心が少し痛んだ。アンナが心を込めて作ってくれた花飾りを、簡単に手放してしまった。「もう枯れた」と嘘までついてしまった。
「どうかした?」
黙り込んだセレムに、アリシアは言う。
「ううん、何でもない……」
水を浴びて元気に咲いている花を、セレムは複雑な気持ちで見つめた。
読んで下さってありがとうございます!
今回、場面の切りかえが多かったんで、ちょっと分かりづらいところもあるかもしれません。(^^;)少し余白を空けました。もうそろそろ先が見えてきたんで、ラストに向けて頑張ります!