表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/42

雨の森

 ハーンとレピィの二匹の竜を湖に残し、セレム達は深い森の中に入って行った。竜の谷の森より木々が茂り、中に一歩足を踏み入れると辺りは薄暗かった。聞こえるのは、遠くでさえずる鳥たちの声と草木をかき分け歩く音だけだ。

「見つけた!」

 突然レナは声を上げ、大きな木の根元に駆け寄って行った。

「レッドツリーのキノコだ。いっぱいあるよ」

 幹が赤みがかった木の根元から、レナはキノコを採り上げた。キノコも赤っぽい色をしている。大きな木のまわりには、たくさんのキノコがはえていた。

「こりゃ大収穫だな。珍しいキノコだから、高く売れるぞ」

 シンもキノコを採り、持ってきた籠に入れる。セレムは初めて見るキノコだった。派手な色のキノコは毒をもっていることが多く、セレムは採るのをためらった。

「これ、食べられるの?」

「当たり前だろ、毒キノコなんか採らないさ」

 かがんでキノコを採っていたレナは、むっとしてセレムを見上げる。

「ほんとに何も知らないんだから」

「……」

「滅多に採れるキノコじゃないからな。今晩食べてみるといい。普通のキノコとは比べ物にならないくらい美味しいはずだ」

 シンに言われ、セレムも赤いキノコを採ってみた。鼻に近づけると食欲をそそる美味しそうな香りがした。

「竜使いは、植物やキノコの名前を覚えなきゃならない。セレムも少しずつ覚えていくといいな」

「うん」

 セレムはキノコを籠に入れた。自分が竜使いになれたらどんなに素敵だろう、とセレムは考える。


 持って来た籠がいっぱいになった頃、森に湿った風が吹いてきた。木々がざわざわと揺れている。

「そろそろ帰ろうか。一雨きそうだ」

シンは立ち上がって空を見上げる。

「もう少し遠くまで行ってみようよ。雨なんてすぐ止むさ」

 レナは不服そうな顔をする。

「明日また行けばいい。今日はこれで充分だろ」

 シンがそう言った後、ポツポツと雨粒が落ちてきた。

「濡れないうちに帰ろうぜ」

 シンはキノコの入った籠に布をかける。遠くの方で小さく雷の音がした。セレムは不安気に空を見上げる。

「突っ立ってないで、あんたも籠を運んで」

「……」

 レナが声をかけるが、セレムは棒立ちのまま動けなかった。雨はだんだん強く降り始める。

「もう!キノコが濡れるじゃないか」

 レナはセレムが使っていた籠に、急いで布をかけた。

「どうした?セレム」

 シンはセレムの様子を不審に思う。と、辺りが突然光り、大きな雷の音が鳴り響いた。

「ギャーッ!!」

 セレムは悲鳴を上げ、両手で耳を押さえてうずくまる。 早鐘のように心臓が打ち、体中が震えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ