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森へ

 翌日。セレムは日の出と共に目を覚ました。昨夜は興奮気味でなかなか眠れなかったが、気づいた時にはもう朝になっていた。窓からは朝日が射し込んでいる。

 隣りで寝ていたギルは、既に起きて鏡の前で長い髪をとかしている。竜の谷の人々は皆早起きだ。

「おはよう、セレム」

 セレムが起きたのに気づいてギルが声をかける。

「おはよう」

 髪をといて髪飾りで髪を束ねるギルは、どう見ても女の子にしか見えない。

「先に行って食事の準備をしてくるよ」

 ギルは元気良く立ち上がると、部屋を出ていこうとする。

「ギルもシンと一緒に竜で出かける?」

 セレムが後ろから声をかける。

「僕は行かない。頼まれた髪飾りを仕上げたいし、ほんと言うと竜に乗るのはあまり好きじゃないんだ」

 ギルは振り向くと笑ってそう言った。

「最初の頃は竜酔いしてた。僕は家でアクセサリーを作ったり料理作ったりしてる方が好き。セレムは最初から竜に上手く乗れてすごいよ。レナみたいに竜使いの才能があると思う」

「そうかな?……」

「レナも行くと思うから、色々教えてもらうといいよ」

「うん……」

 ギルは走って出ていった。レナとはまだうち解けず、ろくに話もしていない。なんとなく嫌われていると、セレムは感じていた。


 朝食の後、セレムとシンとレナは竜に乗って飛び立った。セレムはシンと一緒に黒竜ハーンに乗った。セレムは三匹の竜全部に乗ったことになる。クリーム色のルピィは穏やかで優しくて、グレイのレピィは気が強く威勢がいい、そしてハーンは堂々とした威厳がある。竜達にもそれぞれ個性があった。

 セレム達を乗せた二匹の竜は、空高く舞い上がり風を切って進む。山を越え海を渡り、広い森の上空を飛んでいった。

「この辺で降りよう」

 木々が生い茂る森の中心に、湖が見えてきた。シンはその湖を目指して徐々に竜の高度を下げていく。後ろからレナの竜も続いた。

 二匹の竜は、ゆっくりと大きな湖の上に降り立った。軽く水しぶきが上がる。深い森の中の湖はひっそりと静まりかえっていた。透明な水に竜の姿が映る。竜は泳ぎも上手だ。まるで、竜の形の船に乗ってるようだった。

「雲行きがあやしくなってきたな。一雨きそうだ」

 シンはハーンを操りながら、空を見上げる。さっきまで晴れていた空に雲がたれ込めてきた。雨を誘う風も吹いている。

「雷が鳴らなきゃいいけど……」

 セレムは不安になる。

「あんたは雷が恐いの?」

 レナはセレムを見て鼻で笑う。

「……」

「ま、収穫物が雨に濡れないうちに引き揚げた方が良さそうだな」

 シンはそう言って、ハーンを岸辺に誘導した。

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