序章 密室
交差する想い。痛みを感じる様な切なさが伝わったらいいと思います。
BLですが、性的な描写はあまり強調しないつもりです。
エロティックよりも痛みを感じて欲しい。
思った事、感じた事などありましたら、ぜひ一言聞かせて頂けると嬉しいです。
序章 密室
窓から差し込む真夏の光が、身体を焼く。
部屋に充満する、腐敗臭に吐き気が込み上げる。
滝の様に流れる汗が、意識を奪ってゆく———。
何故———あの男は来ないのか。
あの扉が閉ざされてから、もう二日が経ったはずだ。
いつもの様に餌を与えに現れるのではないのか。
鎖に繋いだまま、水を与え、食べ物を与え、欲望を吐き付けに———。
「……悠……」
隆弘は朦朧とした意識の中、すぐ横で倒れている悠に声を掛けた。
「……悠、悠、———返事しろよ……っ」
隆弘は床に這いつくばったまま、悠の乾いた唇にそっと触れた。
指先に微かな呼級が触れる。
———だが返事はなかった。
閉め切られた部屋には鍵がかかり、繋がれた足枷はどんなに引っ張ってもドアまでは届かない。
手の届く場所には何もない。
それはあの男が、絶対的に自分が必要だと知らしめる為に創った空間———。
あの男が現れなければ、死ぬ様に計算された部屋。
太陽が照りつける閉ざされた密室は、信じられない程に熱くなり、そこに本当に酸素があるのかさえ疑う程、二人の呼級を奪っていく。
(———逃げなければ。この足を切り離してでも———外へ)
(……そうしなければ———悠が死んでしまう)
隆弘は身体を引きずりながら恨めしく扉を見た。
ああもし自分に超能力でもあれば———そんな事を思ったその時、ふいにその扉が小さく開いた。
どうにもならない事ってあるんですよね。
でもあきらめられない。
どうしても諦めなければならないなら…。
破滅への入り口が口を開けて待っている。
そんなイメージの中で書いています。共感して頂けたら幸いです。