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■第7章 Don't look back in anger

その日は12月24日のクリスマスイブであった。

今年は珍しくホワイトクリスマスという事もありいつもは活気の無い街もクリスマスセールの飾りつけで華やかに見えた。さすがにこの日は駅前も活気付いていた。クリスマスソングが流れサンタの格好をしたバイトの女の子がケーキを売っている。クリスマスソングは毎年聴いても飽きないすごい曲だとミチルは前から思っていたが今年のミチルはクリスマスソングが一体どんな歌詞なのかネットで検索してみたりもしていた。

今日ミチルは千尋と駅で22時に待ち合わせていた。

千尋は今日もバイトだったが終わって一緒にクリスマスイルミネーションを見に行く約束をしていたのであった。

時刻は21時45分だった。この時間になるともう家族はみんな帰り着いている時間なのかクリスマスケーキのバイトの子もいなくなっていた。ディナーの時間帯なのか人通りも疎らになりかけクリスマスの電飾だけが今日を盛り上げようと頑張っていた。

そしてその時ミチルは歩いて駅に向かっていて駅はもう目の前であった。

「(余裕で間に合うな。)」ミチルは思った。

すると駅の裏路地の方から走って逃げる中学生らしき2人組とすれ違った。

「ほっとけよ。」すれ違いざまにその中学生がもう一人に言った。

ミチルは不思議に思いその路地を覗いた。

すると3人の不良中学生らしき集団に殴られている一人の中学生を見つけた。

ミチルは迷ったが助けに入った。

不意を突かれた3人の不良中学生達は散って逃げた。

「おい、大丈夫か?」ミチルは殴られてうずくまっている中学生を抱き起こしながら言った。

顔を見ると結構まじめそうな子だった。

口が切れて頬骨から血がにじんでいた。

それを見てミチルは眉をひそめた。

ミチルはさっき街角でもらっていたポケットティッシュを渡した。

「ううっ・・」中学生は泣くのをこらえていた。

「あいつら・・僕を見捨てて逃げたんだ・・。」その中学生がポツリと言った。

あいつらとはすれ違った二人のことだろうとミチルは思った。

そう言葉にするとその中学生は声を押し殺しながら涙を流した。

「ああ・・。そういう奴らもいるさ。」ミチルは中学生を見ずに言った。

「通る人はみんな無視で・・・。どうして助けてくれたんですか?」

「別に・・。」

「・・似てたから。かな。知ってるやつに。」

「まあいいよ。それは。オレも用事あるしお前も早く帰りなよ。あ、その前交番行ったがいいかも。」ミチルは言った。

「あ、はい。」

中学生は丁寧にお礼を言い、走ってその場を去った。

ミチルは時計を見た。

「やば。もう55分だ。」

その時だった。

ブチッ!!

すぐに激痛が走った。

振り向くとさっきの不良の一人だった。

見るとミチルのわき腹にナイフが刺さっていた。

ほんの一瞬の出来事だった。

「カッコつけやがって!そういう偽善者が一番ムカつくんだよ!」

「ざまあ見ろ・・。」不良は薄ら笑いを浮べると走ってその場から逃げて行った。

ミチルはハッとした。

そしてそれは昔ボロボロのミチルが部室で見たあの後輩田辺の薄ら笑いを思い出させたからであった。

ミチルは地面に倒れ込んだ。

なんとか出血した場所を押さえはしたが刺したナイフを抜かれたため大量の血が流れ出ていた。

赤い鮮血と路地に溜まった白い雪の鮮やかなコントラストを見てミチルは昔のことを思い出していた。

過去の自分と今の自分。そして千尋のことを思い出した。そしてまたそれらを客観的に感じている自分に気付いた。

「(うっ・・これってのが俗に言う走馬灯ってやつ・・かな・・・・。)」

「千尋・・」

意識が薄れていく中ミチルは最後にそう思った。


数分後ミチルは救急車で病院へ運ばれていた。

駅は人が刺されたという事で救急車とパトカーで大騒ぎだった。

千尋もミチルの携帯に救急隊員が出たことから急いで病院に駆けつけた。

ミチルの意識はまだ無かったが手術も輸血も無事済み命に別状は無いだろうということだった。

ナイフが抜かれていたため出血は多かったものの刃渡りが比較的小さなナイフだった事、早期に発見できた事により出血多量寸前で処置出来たのであった。

またミチルの両親は実家が遠方という事と雪の悪天候のため到着は明日になるとのことで、病室では特別に許可をもらい千尋がミチルに付き添っていた。

千尋はベットの意識の無いミチルを見つめ、ずっとミチルの手を握っていた。

もう7時間近くなるがなかなか意識は戻らない。

既に時計は午前5時を指していた。

「んっ・・」ミチルがゆっくりと目を覚ました。

「ミチル・・。」千尋はミチルの手を強く握った。

「千尋・・」

「オレ・・」ミチルは途切れ途切れになりながら言った。

「そうよ!助かったのよ。あなたが助けた子がミチルの名前を聞こうとまた戻ってきて。早く発見されたから助かったのよ!。」千尋は説明した。

「そっか・・。いい事も・・あるね・・。」ミチルは力無くだが笑った。

「バカねもう少しで出血多量で死ぬとこだったんだよ!。」千尋は涙目で言った。

ミチルは千尋の目が泣き腫れているのが分かった。

「千尋・・もしかして・・ずっと?」

千尋は何も言わなかった。そして涙が頬に流れた。

「ありがとう・・。」ミチルは千尋に言った。

ミチルは一度目を閉じゆっくり息を吸ってはいた。

そしてまた目を開けた。

それから少しの間お互い何もしゃべらなかった。

「今日、ごめん・・。大遅刻だよね・・。」とミチルが口を開いた。

そして少し微笑んで千尋が言った。

「ホント・・。待たせすぎだよ・・。」

「遅刻・・5回で・・アウトだったよね・・。」ミチルが言った。

「そう。だからあと2回しかないよ。5回目はペナルティなんだからね。」

「そっかあ・・。あと2回もあったか・・。」ミチルはゆっくりと言った。

「あと2回もじゃなくてあと2回しかだよ。」千尋が釘を刺した。

「いや・・・・もう必要・・ないと思うからさ・・。」ミチルは千尋を見て言った。

「え?」千尋が言った。

ミチルは言った。

「チヒロ・・。愛してる。」

そして涙混じりの優しい笑顔で千尋は答えた。

「知ってるぜ ベイビー。」


(終わり)


最後にちょっと独り言です。もしもよければ読んでください。





第1章「始まりと過去」では主人公ミチルは千尋と出会い今まで誰にも話したことのない自分の過去を千尋に話し結果千尋と付きうことになります。


この章でミチルは誰も知った人がいない大学へ行きたかったのは人との関わりを避けたいという気持ちの中にこんなになってしまった自分をどんな方法にしろ変えたい、今のままではダメだと自分の隅で無意識に思っていたからです。

ミチルは千尋に過去を話したのは千尋といれば自分も変われるかもと思いはじめていたからだと思います。

また後の章で100万回生きたねこの話を千尋がしますがそういう意味でも千尋の中ではミチルとの出会いにネコが関係していたのは感慨深いものという設定です。

ミチルが心を落ち着けるため間奏部分を繰り返し弾くのはループ音が人間に心地よい影響を与えるというのを無意識に感じてるという設定です。

「罰則」を短編で書いた時は音楽やるなら3年間は必要とか思ってミチルは大学4年にしてたんですが大学4年は就職とか絡んでくるし今回は大学3年という設定に変更しました。

あと洋楽のバンド名がいろいろ出てきます。一応メジャーどころをピックしたつもりですが話を理解しづらくしてしまってたらすみません。

またミチルは大学3年10月までに7,8人の女の子と付き合ったと書いてますがミチルは殆んどバンド関係に時間を注ぐので付き合った女の子は相手をしてもらえず怒ります。それでミチルは面倒くさく感じ、じゃあ別れようと言うパターンで7,8人という設定です。


第2章「ギターピック」ではミチルは心の拠所である音楽を象徴するお守り的存在のギターピックを失くし、大切に思っていた中学の部活の仲間や大学のバンドメンバーに加え音楽さえも自分の前から完全に去っていく気がします。しかしそれを探す上で失っていた人に対する情熱のようなものを取り戻し千尋と本当に向き合います。

お互い強く言い合いをするタイプではないし千尋は最初から心を開いてるので向き合えるかどうかはミチルの心情次第となりましたが。

この章ではじめて千尋がミチルと付き合おうと思った理由が明らかになります。

またこの章でミチルは実際自分の気持ちがよく分かってなく支離滅裂などっちつかずな考えをしており人が信じられない自分を「悪」とさえも感じています。実際は人に臆病な気使い屋なだけかもしれませんが。

ミチルはステージ上では過激なパンク系バンドヴォーカルではありましたがそれはパフォーマンスの一環としてでありその他私生活では結構人に気を使う性格でステージ上とプライベートでは全く違うという設定です。なので人との不和などは無縁な設定です。しかしそれが人とある程度距離を取ってしまうことへも繋がっているのも事実です。

余談ですが今回千尋のブーツの話が前半少し出てきますがミチルは今まで付き合った彼女達の経験から女の子がブーツをいかに大切にしていて雨で濡れるなどもっての他と思っていると思っています。だから千尋が「洗えばいい」と簡単に言った発言に千尋に気を使わせて余計すまない気持ちになったんです。良い革のブーツは実際簡単には洗えないがもしかしたら千尋ならそんなことは気にしないのかもしれませんが。

ミチルが千尋に言う「手伝ってくれないか。探すの。」と言う言葉はお察しの通り「紛失中のギターピック」と「ミチルと千尋が探す人生の生きる意味的なもの」のチープなダブルミーニングです。ここではもうすでにミチルは後者の方を言っていますが。

この章で自分の大切なものと千尋の大切なものとで二人の絆が強く結びつきミチルは千尋に心を開きますがギターピックは白でベイダーは黒でミチルと千尋の心の色とはあえて逆にしているのは例えば太った人が痩せた犬を飼っていて痩せた人が太った犬を飼っているみたいな対比的皮肉イメージで現実味を出したかったので。

効果はあったかはわかりませんが。

またその2つが最後に混ざることで心が通じたことを表せればと。なんて。


第3章「キャッチボール」ではミチルの元彼女涼子が登場します。

ミチルにとっても別格的な存在で鋭い洞察力を持っています。過去ミチルが付き合った女の子の中で唯一ミチルがブラックコーヒーが好きなのを知っている人です。購買部でミチルは涼子に渡されたホットコーヒーの缶がとても熱いので思わず落としそうになりますがこれはミチルが大学で買うのはもったいないという理由から大学ではコーヒーを買わない習慣があり購買部に売っている缶コーヒーが激熱なのを知らないからです。涼子はそれをミチルが知らないことも知っているので缶を落としそうになったミチルを見て別に驚かず大学3年にもなって今更気付いたかという顔をしたんです。でもこの時涼子はこのミチルの習慣に対して「ミチルはあの頃と変わってない」と良い意味で一種の懐かしさを込めて思います。その後ベンチで「ブラックで良かった?」とあえて聞くのもこの気持ちからです。またこの「変わってない」という言葉はこの章で違った意味で何度かまた出てきますが、千尋と付き合ったことで良い意味でミチルは変わりそれにより自分の知っていたミチルとは違う、もう涼子からは遠い存在のミチルになってしまったことに涼子は無意識的には何かさみしさを覚えています。だからそれを「変わってない」というセリフで無意識に否定しているんです。もちろん涼子はミチルの幸せを一番に願ってはいますが。

また本題とは関係ないかもしれませんが実際レディオヘッドが解散するかという賭けも当てています。

涼子はミチルへ感じていた事を告白し、ミチルは誰にも秘密にしていたはずの自分の心の闇が涼子に及ぼしてしまった影響を知ります。

気使い屋のミチルはもちろん涼子にごめんと思います。涼子がミチルに対して感じた『自分の無力さ』という感情を祖母を亡くした千尋に対して何もしてやれないミチルが感じた『自分の無力さ』にも重ね合わせて感じています。

 また、この章で涼子は実際今もミチルを想う気持ちがあります。

しかしミチルの幸せを願い応援のメッセージとしてカフェオレのアメを投げて渡します。この章でしつこくミチルのブラックコーヒーの話が出てきますが涼子がミチルへのメッセージとして渡した飴が「カフェオレ」である理由はブラックコーヒーという「ミチルの好きな嗜好」に甘い砂糖とミルクという「女の子の好きな嗜好」を足したカフェオレという飴を渡すことで一言で言うとミチルの考え方にプラスして女の子の気持ち(今の彼女千尋の気持ち)もしっかり考えてあげないとダメだよ的な「女の子の友人涼子」としてからのアドバイスメッセージ的意味でカフェオレの飴です。

飴をキャッチしたミチルから涼子への返球は心の中で思った「ありがとう」ですが涼子にもそれは伝わっていると思います。

そしてこれ(気持ちのキャッチボール的なもの)によって最初で最後ではあるが涼子とミチルは通じ合ったという設定です。

涼子は今までミチルが付き合った顔やスタイルだけの女の子と違って人柄も良くしかも美人でみんなからの人望もあるいい人です。

なのにミチルと付き合って「悲しい恋愛経験」というトラウマを持ってしまったのです。。

しかしミチルが幸せになることを望む涼子は自分には無理ではあったがミチルの新しい彼女によってそれが叶えられ、悲しくも涼子はある意味トラウマから救われたのかもしれません。

またもしかしたらタイミングさえ違えば涼子がミチルを変える存在になってたかもしれないのにという気もします。

しかし涼子と千尋の違いは何かと言われれば、2年時の涼子は「救ってあげたい」で千尋は「一緒に探す」の違いかもしれません。

3年時の涼子は話の中で「キャッチボール」という一緒にやる行為を例えに出しています。

涼子にもいろいろ考え方の変化があったのだと思います。

この涼子にミチルが2年時に会っていればミチルはそこですでに変わっていたのかもしれません。

しかし逆に言えばミチルと付き合い最終的に今の涼子になったわけですからやはりこうなる運命だったのかもしれません。

涼子の言った「あなたのアンパンマン」という意味はアンパンマンが「自分を犠牲にして他人を助けるヒーロー」であるというとこからの意味です。みなさんご存知かもしれませんがアンパンマンの話の奥のテーマって壮大なんですよね。


第4章「二人の月」では千尋が祖母の葬式で一時実家に帰ったがその間ミチルは初めて遠くの誰かを想うという経験をします。

そして同じ景色を見てることからも付き合うということは一人ではなく二人であることを改めて実感します。

千尋は実際映画好きな設定なのでSF映画の影響から天体も好きという設定です。千尋の映画の趣味は少し男性的ですがそれも小さいころよく見た祖父の集めていた映画コレクションの影響という設定です。良い意味で鳥類の刷り込みの様に西部劇やSF映画の主人公にダンディズムというか美意識を感じていて人の夢や愛や友情とかいうものを強く信じています。

千尋のよく言う「ベイビー」という言葉は男性的口調をモノマネする時の千尋の口癖という設定ですがこれも先ほどのダンディズムや美意識への憧れからくる誇張表現です。

おばあちゃんからの手紙の内容は決めてましたがあえてミチルには言わないことにしました。

内容はみなさんの想像の通りで合ってると思います。

あと千尋はミチルには言いませんでしたが千尋が少しだけ触れたブルームーンの言い伝えは「ブルームーンを見ると幸せになる」です。

ミチル一人の時は月の色が白で千尋と二人の時は銀色なのはちょっとベタかなとも思いましたが大気の関係かやはり白にも見えたり銀に近く感じたりもするんでそうしました。

「後ろには気をつけな・・」などお気付きかとは思いますがこの『罰則』という話の中で千尋は映画の有名なセリフを引用してよく言います。それは千尋が映画好きな祖父の影響を受け「映画」というものを「人の夢や希望の象徴」的に受け止めているという設定で、だから誰もが知っている有名な映画のワンシーンのセリフをモノマネしてよく話すという設定です。この『罰則』という話の中で、人に好きと言ったことがないミチルに対し5回遅刻した時のペナルティとして「好きだよ~」→「知ってるぜベイビー~」とカッコ良く言う事は千尋が一番憧れている映画のワンシーンのセリフ(スターウォーズ「帝国の逆襲」でレイア姫がハン・ソロ役のハリソンフォードに言う「I love you」→「I know」という有名な名セリフ)の再現と掛けて千尋がミチルに内心ホントは言ってほしいしいと思っている言葉の千尋なりの照れ隠し的表現です。(千尋は「愛してる」と言ってとはさすがに言えず「好きだよ~」にした。)ミチルは千尋からのこのペナルティの提案が出された時「帝国の逆襲」の映画の話を持ち出さないことからもスターウォーズは知っているがこのハン・ソロの名セリフは知らない設定です。(ミチルはDVDで観たのはエピソード1~3で4~6はTVの洋画劇場。おそらく世代的にもそういう人は多いのでは。ミチルはTVの洋画劇場で一度は観たことはあるだろうが記憶にはない。観た時スルーしている。)理由は1980年という古い映画であることに加えこのセリフ自体も映画の中で一瞬の出来事であること。ミチルはこの『罰則』の話の第2章でスターウォーズは「男ならみんな知っている」と発言し、もちろんスターウォーズの映画は全作観たことはあります。しかし実際ミチルは映画も好きは好きだがそれよりも音楽的活動の方に一番興味があるので映画に関してはストーリー重視のレベルであり一度観た映画は千尋の様に何度も観ることはなく、千尋の様に映画のセリフや役者など細かい点までは注意して観てはいないという設定だからです。だれしも興味がある分野に関しては詳しいものであり、それ以外の分野というのはあまり知らないものだと思います。この『罰則』という話の中ではミチルは音楽が一番好きで千尋は映画が一番好きという設定です。あと、もちろんミチルと千尋の場合映画「帝国の逆襲」のワンシーンの設定とは男女の役が逆ですが千尋がミチルの事をよく「ミチル姫」「ミチルちゃん」と表現している点(またミチルはちょっと女々しいとこもあるし。)、千尋が意外に結構オトコギがある点からもこの方がしっくりくるかなと。最終話では結果的に千尋の憧れる映画のシーンの時の使い方とは全く違う雰囲気で使うことになるのですがミチルのセリフは千尋が提案した「好きだよ~」ではなく映画の通りの「愛してる」というミチルの中で「好き」よりももっと大きな表現に変わっています。ミチル自体は第4章で「ブルームーンを見ると幸せになる」という意味を知らずにブルームーンを見ているように今回も一度は映画でI love you →I knowのくだりは観てはいるのでしょうが、知らずに無意識に映画と同じレイア姫のセリフになっているという設定です。千尋は今まで好きと言った事が無いミチルが愛してると言ってくれたことが一番ですが自分の憧れる映画のシーンとのシンクロを感じ、ミチルとの心のつながりをさらに強く感じます。



第5章「フライングV」ではミチルが千尋の言動に感化され後輩のバンドの解散回避のために作曲をすることを決意します。

そしてそれは結果的に声がうまく出ないためもうあきらめかけていた自分の音楽へ再び向かい合うことに繋がります。

声が出なくなった時もう音楽をやめようとして質屋に売ろうとしていたエレキギター「フライングV」を再び使い始め最終的に友情がぎこちなくなってしまっていた元バンドメンバー杉本とも友情を取り戻し新たなスタートへと歩き出します。この章では自分のことを気にかけてくれる後輩や友の気持ちというものもミチルは強く感じたりもします。そして以前ミチルが組んでいた過激なバンドの成功で感じていた充実感とはまた違う充実感を感じます。

また熊田のバンドの曲を作るためアパートに帰る時知らず知らず走っているのもミチルが千尋化しかけている証拠です。

あと、ミチルの失われた高音の声についてですが、出ない声はやはり出ないと思います。

もちろん愛の奇跡でステージに立った瞬間元の声を取り戻すのが一番話としてはカッコ良いですが。

かっこ悪くても見てるだけの人にあざ笑われても新しい山に挑戦するミチルに千尋は「カッコよかった」と言ったんだと思います。

そういう山に挑戦的意味でも千尋は「山小屋にこもるんでしょ。」という表現を使ったんです。(映画ロッキー4みたいな。)

ユニオンについてですが詳しく書きませんでしたが音響器材PA等は使いません。軽音はアンプから出る音のみです。

だからセッティングも片付けも早いんです。

たしかに難しいですが(汗)。

絵や図を見て作曲するミチルの作曲方ですがこれは「図形楽譜」というものの考え方を参考にしています。

だからミチルはピンクの星の図形を見て曲をひらめいたんです。

ミチルが演奏中に杉本が千尋に話しかけてきたのは実は千尋という人がどんな人なのか杉本は知りたかったのもあるんです。

ミチルは触れてないので千尋は知りませんがその小さな大学の中でミチルは結構有名人なんです。

その界隈でワンマンライブやるくらいのバンドだったんで。だから大学の中ではミチルを変えた彼女がいるとして噂になってたんです。それで千尋が来た時みんなじろじろ見てたんです。ミチルが千尋に説明した「他大学の人が来るとすぐに分かるから」という理由は半分正解で半分間違いとなります。

元バンドメンバーの杉本ですが彼はバンドメンバーの中で一番大柄の筋肉マンという設定です。感じとしては海外のメタルバンドにいるようなプロレスラー体系です。しかしバンド内でも一番涙もろくやさしい性格で解散の理由に「乱闘騒ぎは勘弁」と言ったのは彼です。しかし彼は解散後もミチルのことを気にかけていて彼もいわば自分の解散申し出により心因的要因か何かでミチルの声が出なくなったのではと罪悪感の十字架というトラウマを背負っていましたがミチルの新たなスタートを確認しそのトラウマから開放されます。また補足ですが杉本は夕方ミチルが質屋の前をうろうろしてるのを見て夜のバイト明けの朝一でその質屋に行って店主にもし赤いフライングVを売りに来たやつがいたら買わないでくれと頼みに行く設定です。ちょっと若いな青いなと思うかもしれませんがミチルに一からギターを教え込んだ思い入れと今までの絆や、また質屋に売りに行くのではという杉本が考えるミチルの性格からの行動予想、杉本の優しい性格の設定からしてこれもありかなと思いそうしました。青春時代ってそういう感情も確かにあったと思います。

あと最後の「水野晴朗」がみんなに分かるか不安ですね。

セリフもちょっと説明っぽくなってますが。

「映画って本当にいいもんですね~」で有名な方でしたが2008年に亡くなっちゃいました。

今回は千尋が映画好きという設定なんで迷った結果使いました。

フライングVというギターですが近年使ってるのをよく目にするアーティストは「are you gonna be my girl」で有名なJETのギターの方や斉藤和義さんとかでしょうか。

斉藤和義さんの曲は近年栄養ドリンクのアリナミンのCM曲とかでもよく流れていますね。

JETというバンド名は知らない方も多いかもしれませんがお笑いのダイノジの方がエアギターで世界一を取った時に使った曲を歌ってるバンドです。そう言えば分かる人も多いかもしれません。この章でミチルが使うギターを選ぶ際、レスポールやストラトキャスターなど王道なギターにはしたくありませんでした。①しっかりとした音が出るギター②マイナーで名前は知らないながら多くの人が一度は何かで見たことがあるのではないかなというギター③形をイメージしやすいギター④章のイメージに合う名前のギターはないかなという点で候補に挙げました。他の候補はエクスプローラー、ファイヤーバードでしたが形をイメージしにくいのと章のイメージにはフライングという名前の方がミチルが新しくスタートをきって羽ばたくというこの章のイメージに合っていると思いこのギターを選びました。


第6章「100万回生きたねこ」ではサラッとではあるが千尋の悩みが浮き彫りになります。

実際千尋は祖父の影響から映画が大好きで自由な発想の持ち主であるが実は今までそれを受け入れてくれる男性にめぐり合っていなかった設定です。第1章内にもあるように元彼には浮気をされフラれています。

今まで付き合った彼氏には千尋の言動が変人的な見方をされる事が多く言ってみれば千尋は男運が良くないのかもしれません。

そういう変人的な見方をされることもあり実は千尋は口には出して言わないが実はそれに少し悩んでいて一般論に合う様に自分を変えなければいけないのかとも思っていたんです。

しかし千尋はミチルの「変わらなくていい」という言葉で救われます。一応補足で書いておくと、ミチルが1章で千尋にされたのをふまえこの第6章で千尋の手の甲に「変人ヘンジン」という文字を書き、あえてそれを大きな×印で消すのは「千尋はヘンジンなんかじゃないよ。」という意味です。

そしてお互いの絆はさらに強くなる設定です。

ちなみにミチルと千尋の約束でこの章で初めて「ペナルティ」という言葉が出てきました。

一応このペナルティという言葉の日本語訳が「罰則」ということで「話のキー」にもなるのですが罰則というテーマは「悪が裁かれる罰則なんて世の中には無い」と中学時代のミチルが思い込んだところから始まってる設定のつもりです。

あとこれは後付けですが「罰則=ペナルティ」という観点からいえば「ペナルティカードやペナルティキックなどという名前の罰則ルールがある競技」の部活にミチルが所属していてたのに「悪が裁かれる罰則なんて世の中には無い」とミチルが感じたのも何か皮肉な感じがします。

またなかなか登場人物が増えないこの話ですが元バイト仲間の広瀬が少し登場します。

ミチルはギターを買うためにもいろいろとバイトをしていた話もありましたが知り合いは多い方という設定です。

ミチルは人とベタベタせず冗談なども殆んど言いませんが人を馬鹿にしたりせず言った約束などちゃんと守り責任感があるので人望もそこそこある人という設定です。もちろんミチルはそれに自分では気付いていませんが。そこらへんから広瀬もミチルに電話してきた設定です。よってミチルは軽音サークル以外にも結構交流のある友達はいます。


第7章「don’t look back in anger」ではクリスマスイブの夜ミチルは千尋と待ち合わせしていたが駅に行く途中友人に見捨てられリンチされる一人の中学生を見つけます。ミチルは自分のようにはなってほしくないと思い中学生を助け、中学生を見送ります。しかしその時リンチしていた一人の不良にミチルは刺されて出血のため気絶します。それは過去のトラウマを再度思い出させやはり過去には勝てないのかとミチルは絶望も感じます。病院に運ばれ幸い一命は取り留め目覚めるがその時刺され出血で気絶してたのに助かったのはミチルが助けた中学生がミチルの名前を聞こうと戻ってきたからだと聞きミチルは過去の呪縛から解き放たれたとも感じて力無くですが笑います。

病院には千尋が付き添っておりそこでミチルは愛というものをそこで生まれて初めて口に出して言うのです。

ミチルが言う「もう必要ないと思うからさ。」も千尋の提案した「ペナルティ(罰則)」とミチルの抱えていた「悪を裁く罰則なんてこの世には無い。」という「罰則」のダブルミーニングです。もちろんミチルは前者の意味で言っていますが。

実は話を考えた時ミチルは結構な重症を負って愛を知るも死んでしまう設定でした。(100万回生きたネコの話をしながら。みたいな感じで。)しかしミチルの死は逆にリアルに欠けるかなあと思い止めました。やっぱ生きてこそかなと。

don’t look back in angerという曲はオアシスというイギリスのバンドの曲です。オアシスは世界的に有名で日本でもCM曲に使われていて洋楽ながら一度は聴いたことあるという方も多いのでは。日本人でも一度は聴いた事あるだろう曲は~どれかな~と探してなんとなくこの曲を選びました。そして1章を書いていたわけですが最終章に入った時私が書きたいと思っていた内容とdon’t look back in angerの意味がリンクしていると思ったんです。歌の題名なので意味の取り方はいろいろあると思いますがここでは「怒りに振り返るな」という意味で使っています。(思うように進めとかその他いろいろ意味の取り方はあるようですが。)この「怒りに振り返るな」という言葉がミチルが中学時代から思い込んでいた「悪が裁かれる罰則なんて世の中には無い」という考えへの私の書きたいアンサーを代弁しているように思えました。それで最終章のタイトルにしました。しかし今思えば私もミチルもこの罰則という話のアンサーであると気付かずに第1章でこのdon’t look back in angerを歌っていたのは何か少し笑える気がしました。最初から自分で答えを言っていたわけですから。まあこの話の中でこの曲の話題を持ってきたのは千尋ですが「答えは実はすぐそこにある」という事をもしかしたら偶然にも表していたのかもしれません。自分的にですが何か感慨深いものを感じました。


最後に、この話の主人公ミチルにとって千尋は無くてはならない存在で千尋無しではミチルは変わる事は無かったと思います。この話も千尋無しでは進まないのである意味主役なのかもしれません。千尋の視点は殆んど書いてませんが。



またこの「罰則」という話はもしかしたらそりゃないよという所もあるかとは思いますができるだけ再現可能というかリアルの起こりうるかもしれない範囲の条件で書いたつもりです。(そう思えなかったらすみません。)しかし、もしかしたらこの千尋という存在があまりに善の象徴すぎて一番無さそうな存在になってしまっているのかもしれないというのは否定できません。


でもこの話を書いていて・・居たらいいなあと思いました。千尋みたいな人が。

もしかしたら読んでくれた方の中にはこの千尋の様な人を自分の周りで知っているという人もいるのかもしれません。またいるわけないと思う方もいると思います。しかし世の中にはいろんな人がいて、自分がまだ出会ってない人の方が遥かに多いんですから完全に否定はできないと思います。そういう意味では私にもあなたにも突然明日にでも自分を変える運命的な出会いがあるのかもしれません。この話を書いて何かそう言う風に思いました。




ホント最後になりますが私のつたないヘタクソな文章でしたが最後まで読んで頂き本当にありがとうございました。


何か作品を作るというのはやはり「私の中の自己満足にしか過ぎない」のだとは思います。結局のところは。

しかし実感したこともあります。

作品を作るということはホント苦しいけど楽しいものだなと。


忙しくなるのでまた書くかどうかははっきりと分かりませんがまた機会を見つけて挑戦したいと思います。



読んで頂き本当に感謝いたします。


紫 碁盤


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