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Sugartownは恋の都  作者: びん せんと
9/31

第9章~暦の○(マル)~

その日の午後、休憩時間の事。

昭吾は、東京日帰りツアーのパンフレットを、

先輩に見せながら、夏期休暇の交渉をした。


「若いんだから、いいよ、行っておいで。」


すんなり承諾された。

夏期休暇は五日あるが、

職種の都合上交代制。

その点は、昭吾にとって好都合だ。


その日の夜、水曜日でもないのに、

桃子に電話した。


「えー?昭吾くん来るの?いつ?」

「八月最終週の土曜日だから、二十七日だよ。」


「八月二十七日だね、カレンダーにマルつけとこっと。」

「僕も今、しるし付けたよ。」


「なんか、夢みたい。」

「どうしたの?」


「だって、昭吾くんが東京へ来てくれるんだもん。」

「僕も、夢のようだよ。」


「やっと会えるね。」

「うん。」


電話を切った昭吾は、暦の○印を見つめながら、

松本ちあきの『きっと夏休み』を、

繰り返し聴き始めた。


上京まで二か月以上、待たねばならないが、

会えない時間が、愛育てる。

昔のこんなフレーズの歌を思い出した。


梅雨が明け、昭吾は初めて、夏の職場を経験した。

昼間の火の上での格闘。

しかし、バテるわけには行かない。


毎週水曜日の、桃子との電話と、

暦の○印を励みにしながら、

初めての夏を、疾走している。

始発電車で、先輩たちより一足先に出勤する事も、

辛くなくなった。


暑さのピークが過ぎる、晩夏の頃、

上京する時の服について、悩み始める昭吾。

いちばん歳が近い先輩に、相談した。

広島市内のブティックを紹介してもらい、

公休日に、服を揃えた。


八月最終週の水曜日も、

桃子に電話をする昭吾。


「いよいよだね、会えるの。」

「うん、なんか、緊張してきちゃった。昭吾くんは?」

「僕もドキドキだよ、凄く。」


「明後日の夜、電車に乗るんだよね?」

「うん。そして、土曜日の一〇時一〇分。」


「東京駅のホームで、会えるんだよね。」

「到着ホームと何両目に乗るかは、出発前に電車するね。」


「うん、待ってる。昭吾くん、どんな服着て来るの?」

「真っ赤なボーリングシャツだよ。」


「真っ赤?広島カープの赤だね。」

「広島じゃけえね、今年は凄い左腕が入団したし、」


「私、野球の事よくわかんないけど、

カープの話題を聞くたびに、

昭吾くんの喜んだ顔、想像するなぁ。」

「カープは広島の誇りじゃけえね。」


「真っ赤なボーリングシャツ、覚えておくね。」

「じゃまた明後日、電話するからね。」

「うん、待ってる。」


「おやすみ。」

「おやすみなさい。」


電話を切った後、

何気にラジオのスイッチを入れ、

いつも聴いていた、深夜番組を聞く昭吾。

突然、松本ちあきの『きっと夏休み』が流れ始めた。


「リクエストは東京都の、恋するキャンレディちゃん。」


桃子の、リクエスト曲だ。


「なに、何?今度の土曜日に広島のペンフレンドが、

恋するキャンレディーちゃんに会いに来るんだ。

すごいですねえ、

この番組でも繋がってる、彼の事だね。

なんか僕、このDJの仕事やってて良かったなぁ。

今夜は僕、祝っちゃいます、お二人に。」


なんとなく照れくさい、暦の○印まで三日前、

窓の外からは、虫の声が騒々しい夜の事でした。




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