第6章~ヒミツの花園~
夜、勉強しながら、
いつものラジオ番組を聴いている。
なんか北欧っぽいイントロ。
蒲池聖子の新曲、『ヒミツの花園』が流れ始めた。
昭吾は聖子の事を、好ましく思っていないが、
この歌は、すごく気に入った。
聴きながら思い浮かんだ事。
それは桃子と、
この歌のような素敵な場所で、
いつか過ごしたいという気持ち。
その三日後、桃子から手紙が届いた。
蒲池聖子の新曲の話題が書いてある。
きっと、同じラジオを聴いていたんだろうな?
昭吾は嬉しく思う。
「初デートは、三日月の夜、
昭吾くんに、海に連れてってもらいたいな。」
昭吾が描いていた事と、偶然の一致。
「聖子ちゃんの歌のようなヒミツの花園、
広島にはありますか?
今度探しておいてネ。」
一枚の便箋。しかし、
丸文字に、ハートがたくさん装飾されている。
ちょっとした、ラブレターだ。
この一枚の手紙を励みにした結果、
高校の卒業試験は、無意味に好成績だったし、
自動車免許も、二月一〇日に無事、習得出来た。
二月、卒業生は登校しなくて良くなる。
急に時間を持て余すようになり、
短時間のバイトを辞め、
日給のいい、建築業のアルバイトを始めた。
少し落ち着いた二月の半ば、
昭吾は久しぶりにペンを取った。
「桃子、無事に卒業出来そう、
そして無事、自動車免許を取る事が出来たよ。
メゲそうになった僕をずっと支えてくれて、
ありがとう。
落ち着いたら今度は僕が、
DJカセットを送ります。」
冬の風が冷たい日、
昭吾は汗をタオルで拭い、
息を切らしながら、
東の空を見上げ、声を出さずに言った。
「桃子待ってろよ。きっと、迎えに行く。」
つぶれた血豆が痛む。
北風の中、春を待つ思い。




