第5章~ヘビーな日々~
クリスマスもお正月も、寂しくなかった。
時は昭和五十八年元日、
お昼前の事。
我が家に年賀状が届く。
昭吾の父がチェックしている時、
元気なくせに、ヤケに咳払いがうるさい。
しつこい咳払いの最中、
「昭吾、こっちへ来いや!」
呼ばれた昭吾。
「この年賀状は、誰ない?
住所が東京って書いてあるでぇ?」
「オヤジ、これは文通友達だよ。」
「ほーか?文通ねえ、
最近お前宛てに可愛い封筒が届きよるのぅ。」
「うん…。」
「んで、今年は会おうネと書いてある。
この子に会いに行くんか?」
「うん、卒業して働くようになってからね。」
質問責めを聞いていられなくなったのか、
昭吾の母が、話に加わった。
「もーえーじゃないの、テレビで歌いよる、
ちあきちゃんの追っかけをされるよりはマシよー。」
ナイスフォローだ。
昭吾は年賀状を受け取り、
のんびりとした、元旦の午後を過ごす。
「桃子、どんなお正月を過ごしているの?」
生徒手帳に忍ばせた桃子の写真を眺めながら、
声を出さずに話しかける。
正月三が日が終われば、
バイトと、自動車学校が始まる。
かっこいい車を購入して、
桃子を東京まで迎えに行く。
小さな目標に向けて、昭吾の一年がスタートした。
松本ちあきが、
五枚目のシングルレコードを発売した一月下旬、
昭吾の忙しさはピークにさしかかっていた。
学校では卒業試験、
自校では、仮免許の試験、
中途半端に出来ない、アルバイト。
そんな時、桃子から一通の手紙が届く。
「返事は、落ち着いてからでいいよ‥」
何てやさしい言葉。
綴られてある一行一行を励みに、
昭吾は一つ一つこなして行く。
ハードなバイトで寝返る度に痛む筋肉。
今夜も、枕元の桃子の写真に話しかける。
「待ってろ、桃子‥」




