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Sugartownは恋の都  作者: びん せんと
30/31

番外篇〜平成Rendez-Vous〜

物語が完結して一三年が経つ。


時は二〇一六年三月一一日。

あの東日本大震災からちょうど五年。


五十路を過ぎて上京した昭吾の姿が、

渋谷のスクランブル交差点にあった。

中折れ帽にスーツ姿。

大きなバッグを提げた出張帰りの昭吾。


桃子なんて居る訳ないのに。

一人ハチ公、

一人09、

一人道玄坂。

一人渋ブラは昭吾にとって二度目だ。


暦のマルの日、

桃子と一緒に行った、

原宿のフィフティーズショップは、

現在明治通り近くに移転し、

格好良く営まれていたのが嬉しい。


宮下公園の喫煙所で、

煙草をふかしながら見上げた空は、

あの日桃子と見上げた空よりも澄んでいる。

あの暑かったガード下の舗道が、

そのままの状態。

懐かし過ぎて照れくさい。


アコギ屋を出て大手家電量販店を、

過ぎた所に、

変わった碑を見つけ、

ふと立ち止まる昭吾。


「恋文横丁此処にありき」と、

記してある杭のような碑。

ふとこの文字が目に入り、

立ち止まる。


ここの恋文は、

恋文の意味が違うらしいが、

渋五時の裏手に当たる、

この場所の恋文の二文字に反応した。


昭吾の心の中で、

流れ始めた歌。


高校三年生の頃、

夕方東の空を見ながら、

ギターの弾き語りをしていた歌。

Dコードで始まる、

変形アルペジオの旋律。


知らぬ間に、

左指がDコードを描いていた。

さっき横丁の角のアコギ屋に、

入店したからだろう。


追想のクライマックス。


昭吾は恋文横丁の碑の前に立ち、

イヤホンを付けて、

携帯プレーヤーを再生し、

あの香り、

あの手の温もりを追っかけ、

心の中で呟いた。


「桃子、ただいま」


返事が帰って来る事はない。


曲が終わった頃、

また、あの香りがしたような、

まさか気のせい。

仕事の後の、追想し過ぎ疲れ。

幻覚症状なのか、

歳のせいだろうな、

と、思いながら、

昭吾は振り返る。


そこに、

瞳の大きくて小柄な、

セレブっぽい中年女性の姿が。








「も、………」








また風景が、

暫く静止画になった。






♪次の汽車が 駅に着いたら

この街を離れ 遠く

500マイルの…♪





二つの影が交わる事は無かったが、

あの瞳の正体は?





ーーーーー完ーーーーー

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