第3章~つながりは、ラジオ~
時は昭和五十七年十二月。
昭吾は、自動車学校に通い始める。
また、高校では試験発表があり、
期末テストの勉強も始めた。
昭吾はちょっと不安を覚えてしまったが、
遠く離れた桃子が、昭吾を励ます。
先週の、桃子への誕生日プレゼントが、
この上なく嬉しいと、
手紙に書いてあったのだ。
中でも、密かに同封していた昭吾の写真。
「優しそう…」
と、好印象。
三枚の便箋に、ビッシリ書かれた丸文字に目を通す。
「私、昭吾くんと文通していて、良かったよ。」
と書いてあり、更に、
「私は、昭吾くんの誕生日に、DJカセットを贈ります。
昭吾くんに是非聴いてもらいたい曲があるの。
喋りが下手だけど、頑張るネ!」
「桃子の声…どんな声だろう?」
昭吾は想像してみる。
「桃子って、どんな顔してるんだろう?」
身体はクタクタなのに、眠れない。
灯りをつけてもう一度、手紙を読み返してみる。
「自動車免許、頑張って!取れたら、私を迎えに来て。
かっこいい車で海に連れて行って、
ね、昭吾くん…」
昭吾は思う。
「僕はもう、一人じゃないんだ。
迎えに行くよ、桃子。頑張るから…」
いつものラジオ番組は、とっくに終わっている時間。
昭吾は眠りについた。
それから一週間経ち、
昭吾の誕生日。
朝からソワソワしている。
桃子からのDJカセットが届き、
夜のラジオ番組も、気になる。
学校ではハイテンション。
友人達が昭吾を囲い込んで、手厚い会話が交わされる。
「今夜のあのラジオに、
おめでとうメッセージ送っておいたよ。」
「オレも送ったからね」
「オレも…男からのメッセージばかりで可哀相じゃ」
「ほんま、相変わらず寂しい誕生日になりそうじゃ」
皆、あのラジオ番組を聴いているようだ。
「みんな、ありがとう。」
ここはクールに感謝の意を表しておいた。
「昭吾、おめえ最近様子がおかしいよ。
何かあったんか?」
一人の友人が異変に気付き、こう言って来た。
「放課後に自校に通い始めたからな、
忙しくって疲れてるだけだよ。」
桃子との文通は、二人だけの秘密。
皆には内緒だ。
夕暮れ時、悪友たちの誘いを断り、
自動車学校に通う。
夜帰宅すると、机の上に置いてあるかわいい封筒。
桃子からのバースデイプレゼントが届いていた。
封を開けると、一枚の便箋に丸文字で一言。
「お誕生日おめでとう。」
と書かれてあり、カセットテープ一本が同封されていた。
先に、あのラジオ番組を聴いた後にカセットを聴く事にした。
ラジオ番組が始まった頃、
昭吾は心拍数を上げてラジオの前にいた。
数十分経った頃、いよいよバースデーコーナーが始まった。
昭吾の名前が呼ばれた。
「八人のクラスメイトから、おめでとうメッセージが届いています。
そして、東京都のペンネーム恋するキャンレディちゃんからも…」
「わっ、桃子だっ…」
昭吾は嬉しかった。
「広島に住んでいるペンフレンドのバースデイ。
私の優しいお兄さんです。
大好きです!
クゥー…たまんないね、このメッセージ。」
DJが軽快にフォローする。
「この間のキャンボーイとキャンレディは、
文通だけではなく、
このラジオを通じても繋がってるんだね。
お二人の距離を少しでも縮めてあげられるのが、
DJである私たちの仕事だと自負しております。
昭吾くん、お誕生日おめでとうございます。」
昭吾はラジオの前で、初めて顔を赤く染めた。
「お届けする曲は恋するキャンレディちゃんのリクエスト、
BGTの『君の瞳に恋したい』いってみよー」
ストリングスのイントロに、
ブラスセッションが絡んだ、
綺麗なディスコナンバー。
聴きながら、桃子からの手紙をまた開けた。
カセットのケースの中に入っている、
一枚の写真を見つけた昭吾…
無言のまま、見とれた。
『君の瞳に恋…』した瞬間。




