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Sugartownは恋の都  作者: びん せんと
25/31

第25章~東京Sugartown~

桃子の部屋は、吉祥寺にある、

ワンルームの賃貸マンションだ。

コンビニ袋を二つ持って、入室する昭吾。


部屋は蒸し暑く、

玄関と、一つしかない窓を全開にし、風を通す。


シャワーを浴び、コンビニで買った缶ビール。

既に二人とも成人。

堂々と、初めての乾杯。


桃子と、小さなテーブルを囲んで話す。


「桃子は、広島の修学旅行で通訳さん見かけてね、

この仕事に憧れたんだ。」

「通訳ガイドさん?」

「そう、あの仕事だったら、広島で職に就けるでしょ?」

「桃子、広島に原爆が投下された日時は何時か知ってる?」

「えー?と、わかんない。」


こんな感じで、

桃子も広島で暮らす事を考えていたようだ。

でも、昭吾は広島の平和学習の話をする。

広島の子供達は、平和について幼い頃から、

頭の中に叩き込まれる。

そんなこと、江戸っ子の桃子は知らない。


「やっぱり駄目かな?広島で職探し…」


そんなこと、真剣に考えていた桃子。

やっぱり、二人再会するべきだったと改めて思う。


嬉しくなった昭吾は桃子に、

頭の中の構想を口にした。


「桃子が、広島に来なくてもいいじゃん。」

「えー?何で?」

「オレが、東京に来ればいいじゃんか。」

「昭吾くん、仕事辞めるの?」

「辞めないよ。東京支社へ転勤だ。」

「そ、そんな事、出来るの?」

「夏休みが終わったら、人事課長に相談してみるよ。」


東京支社へ転勤した先輩の後押しもある。

きっと、うまく転勤出来るはずだ。


缶ビールでいい気持ちになった昭吾は、

ソファーで、眠りについた。


いつもと違う朝。

昭吾は、フレンチトーストを焼く匂いと、

コーヒーの香りに包まれて目覚めた。


「おはよう。」


キッチンから、桃子が呼んでいる。


「桃子、おはよう。

ごめんね、オレこのまま寝ちゃった。」


大あくびをしながら、答える昭吾。

まるで新婚気分だ。


昨日は、先輩の声で目覚めたが、

一夜にして、このような展開になるとは、

夢にも描かない出来事だ。


「ちょっと、外の空気吸ってくる。」


昭吾は、夕べの空き缶を片手にベランダで一服。

朝食を作り終えた桃子も出てくる。


「こんな景色なんだね?桃子の朝。

街が見下ろせる場所じゃん。いいなぁ?」

「殺風景でしょ?東京って?」

「ううん。オレん家の方は、超殺風景だからね。」


桃子は小さな声で、

松本ちあきの『東京シュガーベイブ』を、

歌い始めた。


桃子の歌声を聴いたの、

これが、初めてかもしれない。

聴き惚れていると、


「冷めるから早く食べようよ~。」


夢の度を超えた心境だ。


夏休みが終わるまでは、桃子の部屋で過ごす事にした。

広島へ帰るまで、あと三日。


初日は昼間、月島の先輩のアパートに、

荷物を取りに行き、鍵を返し、また桃子の部屋に。

桃子が仕事で居ないので、しばらく留守番。

夜、暗くなった頃に帰宅してくるので、

夕飯の支度をする事にした。


メニューは、広島風のお好み焼。

桃子が食べたがっていたメニューだ。


近所のスーパーで買い物。

キャベツ、もやし、葱、中華麺、豚バラ肉、

のしイカ、卵。

小麦粉に魚粉、青海苔、

これらの食材は、すんなり揃った。

しかし、肝心要なソースが売ってない。


代用品で、大阪風どろソースを購入。

甘くないソースには納得いかないが、

広島風の格好だけは、焼ける。


部屋にはホットプレートが無かったので

家電店で購入する。

夜8時過ぎ、マンション隣りの駐車場に、

ゴルフが帰って来た。


「おかえりなさい。」

「ただいま。何?パーティー?」


小さなテーブルの上いっぱいのホットプレート。

桃子はビックリ。


「さあ、焼くでぇ。」


桃子の部屋は一瞬にして、

『広島お好み村』のような香りに包まれた。


大きな、一枚のお好み焼き。


「美味しいね。」


二人で分けて食べながら、

気分良く、桃子は言った。


「明日、休みだよ。海に行かない?」

「うん、だけど、海パン無いなぁ。」

「角のコンビニに売ってたよ。」

「そっか?よっしゃ、行こう。」


本当に、新婚気分な二人。

昭吾の夏休み終了まで、あと二日。


昭吾自身、まだ胸のつかえがある。

二人を引き裂こうとした、お母さんの存在だ。

桃子と再会して未だ、お母さんの話は出して来ない。



「桃子、無理してんじゃないかな?」






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