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Sugartownは恋の都  作者: びん せんと
21/31

第21章~想い~

南東の空には、満月が輝く。

助手席にはジャージ姿の桃子。

誰も、邪魔する事は出来ない、

ふたりの世界。


大野浦の波止に車を停め、長い口づけ。

本当の愛を確かめ合う。

以前、桃子と手紙でやりとりした、

『ヒミツの花園』のような中、

今夜限りになってしまいそうな不安と、

このまま連れ去りたい野心が交差する昭吾。


車から降りる。

桃子に革のジャンパーを着せ、

北の空を見上げる。


「カシオペア、見えるよ。」

「ホントだ。綺麗ね。」


桃子が、江ノ島の時のように、

ソワソワし始めた。

昭吾までソワソワ。

桃子が、今の心境を語り始めた。


「お母さんが今度は、

お客さんを紹介するって言ってるの。」


昭吾は、うなずくしか出来ない。


「誰?桃子も知ってる人?」

「うん。近くの大学生で、野球やってる人。」


大学生で野球人?プロ志向か?

昭吾には、馴染めないタイプだ。


「その人、桃子に気があるって、お母さんが言ってた。」


こんな事、聞くまでもないが、


「で、桃子の気持ちは、どうなの?」

「ね、昭吾くん、桃子を助けて…」


桃子は昭吾に泣きながら訴える。

だが、今の状況は昭吾が不利。

昭吾は、焦り始める。


「桃子、何もしてあげられなくて、ごめん。」

「昭吾くん…」

「桃子は、オレとは全く、別世界の人だと思う。」

「何で、何でそんな事言うの?」

「オレは、教養も取り柄もない男だからだよ。」


桃子も、昭吾も、

それぞれ違った蟠りを抱えていたのだ。


深夜十二時、

昭吾は桃子を修学旅行宿まで送り、

無言の別れをした。

一人車の中、昭吾は、

自分の気持ちとは違った意を伝えた事を悔やんだ。


次の日も、

その次の日も…。


500マイル離れていると、

こんな時には何もしてあげられない。

桃子は、どんな心境で東京に帰って行ったんだろう?


三月。季節は春。


昭吾は、転勤で県北の研修施設に住み込んだ。

休憩時間、目の前に広がる、

菜の花畑を見ながらふと、桃子を想う。

車のバックシートに積んだギターを弾き語った。


春だと言うのに私には

心のコートが脱げません

菜の花畑を吹ききる風は

あなたの窓にも届くでしょうか

今でもあなたの口笛は

ビートルズから変わりませんか


心許した郵便受けに

手紙も来なくなったから

恋も乾いた頃だから

イエスタデイでも歌いましょうか



小さなわがまま言い合って

いつしか夕日が落ちてった

今でもあなたの二階の部屋は

銀色電車が見えるでしょうか

楽しい季節の終わりには

決まって寒い風が吹きます


いつか見慣れたイニシャル入りの

手紙も来なくなったから

恋も乾いた頃だから

イエスタデイでも歌いましょうか

イエスタデイでも歌いましょうか





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