第2章~ハッピー・バースデイ~
文通を始めて、桃子の事について、
昭吾はたくさん知る事が出来た。
昭吾との共通点が多いって事。
一部並べてみると…、
青い海が好きだって事。
英語の授業が一番好きだって事。
射手座のA型だって事。
毎晩同じラジオ番組を聴いてるって事。
好きな飲み物は、クリームソーダだって事。
いつしか特別な存在になった桃子と、
文通を始めて一ヶ月経つ。
もうすぐ、桃子の誕生日だ。
十六才を迎える彼女に何をプレゼントしようか?と、
三日三晩考えた。
「カセットテープを送ろう!」
十六才の誕生日に、聞かせたい曲ばかり吹き込んだ。
一九五十年代の、ドゥワップナンバー、
『シックスティーン・キャンドル』を一曲目に。
昭吾のお得意分野だ。
色々、46分テープに吹き込んでいると、
桃子からの手紙が届いた。
いつもの他愛のない内容の文章。
まるで交換日記だ。
そして、桃子からの追伸。
「昭吾くん。大好き!!」
強烈だ。
胸の奥へと突き刺さった、桃子からのメッセージ。
この時昭吾は、始めて距離を悔やんだ。
「桃子に会いたい。会って、抱きしめたい。」
カセットテープには、
昭吾がピックアップしたラブソング。
桃子の誕生日に届くよう、三日前に投函した。
同時に東京の、深夜のラジオ番組にも、
メッセージを出していた昭吾。
桃子も聴いているというプログラム。
桃子の誕生日当日、番組内で読まれた。
「広島のペンネーム、
恋するキャンボーイくんからのメッセージです。
今日は僕の大切なペンフレンド、
東京の桃子ちゃんの誕生日です。
ふーん、ペンフレンドかぁ、懐かしいな。
僕も十代の頃、奈良の女の子と文通してたよ。」
DJが軽快に喋っている。
「リクエストは、僕の思いを込めて、
シャネルズの『月の渚』をお願いします。
じゃ、恋するキャンボーイくんの思いをかけちゃうよ。
遠く離れた桃子ちゃんに届け。
シャネルズで『月の渚~You'll be mine』」
曲を聴きながら、露で曇った窓を開けた。
既に冬のような夜風が入ってくる。
南の空に高く上がった満月を見上げてみた。
「桃子も見ているかな?満月。
聴いてるかな?この歌?」
この曲は、カセットテープにも入れておいた曲。
「♪月のしずくを両手に受けて
ダイヤならこのくらいデカい
心込めお前に贈るよ
Forever and ever You'll be mine…」
心を込めたリクエスト曲が、
夜空に溶けて行く。
ただただ、桃子に届きますように…と、
昭吾には、目標があった。
来春には高校を卒業し、進学せずに職に就く。
就職先は内定済みだが、入社の条件として、
普通自動車の免許を取得しなければならない。
十二月からは、自動車学校にも通う。
さらに期末テスト。
ハードな日々が待っていた。




