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Sugartownは恋の都  作者: びん せんと
19/31

第19章~さらば、恋の都~

※この章には、未成年者が飲酒する不適切な表現があります。絶対に真似されぬよう、させないようにして下さい。

ホテルの部屋で、シャワーを浴びている時、

部屋の電話が鳴った。


「誰だろう?」


バスローブ姿のままソファーに腰をかけていると、

また電話が鳴った。


「モシモシ。」

「昭吾くん。」

「桃子、どうしたの?」


「明日、会えなくなっちゃったの。

ごめんなさい。」

「も、桃子?」


「お母さんが…実家で倒れちゃったの。

今から私、出るから…ごめんなさい。」

「も、桃子ーっ。」


「ブーブーブーブーブーブー…」


昭吾は、聞きたくなかった一言を耳にした。

受話器を握ったまま、完全に固まってしまう。

もう一度、電話が鳴った。


「モシモシ桃子?」

「昭吾くん?桃子って誰?彼女かいな?」


桃子ではなく、新幹線の女、明美だ。


「今から飲みに行かへん?」

「ごめんなさい、そんな気持ちになれなくて…」

「何かあったん?うちでえかったら話聞くでェー。」

「すみません。いいです。」

「ほな、ロビーで待ってる。降りて来てーな。」


気分が…乗らない。

が、明美について行く事にした。


「東京めっちゃ寒過ぎや。積もってるやん。凍るで。」

「…」


昭吾は、凍ったように固まっている。


「何や昭吾くん、もう凍ったんかいなぁ?」

「い、いいえ…。」


明美は、昭吾を居酒屋へ連れて入る。

馴れたようにドリンクとフードを注文する。

やっぱり大人だ。


「なぁ?何があったん?昨日の顔とちゃうで。」

「は、はい…。」

「もー会えへんとか言われたんか?」


酒の力を借りながら昭吾は、

明美に桃子の電話の事を、淡々と話し始めた。

昭吾は、まだ未成年者。

酒にはまだ、飲まれるタイプだ。


「うちは母心なんてわからへんけんど、お母さん、

桃子ちゃんを連れに帰って来たんとちゃうん?」

「そうかなぁ?」

「疑問符には、行動や。」


明美は、入口の公衆電話から、

桃子の家に、電話をかけさせた。


「ええか?お母さんが出たら、切るんやで。」

「は、はい。」


「プルルルルル、プルルルル、…」

「はい。モシモシ。」

「すいません、間違えました。」


電話を切る昭吾に、うなずく明美。

少しふらつきながら、


「お母さんが、居ました。」

「そうか、そうか、昭吾くん、よー耐えてるわ。」


アルコールが体内に回り始めた昭吾。


「明美さん、今夜は僕と、飲んで下さい。」

「そっか、そっか、お姉さんが慰めちゃる。」


昭吾はボトルを一本、注文した。


それからの事は、どんな夜を過ごしたのか、

全く覚えていない。

気がついたのが、翌朝。


黒い髪に巻かれて、ベットの上。

隣には全裸の明美が居る。


昭吾も、何も身に着けていない。

慌てて起き上がるもふらついて、頭が痛い。


「何、何なんだ…。」


部屋は衣類が散らばり、異臭がする。

床には数本、ボトルの空が転がっている。


「何があったんだ?」


ソファーで頭を抱える昭吾。

明美が目を覚ました。

毛布に包まった明美に、


「僕、何かやらかしたんですか?」


と、尋ねる。


「酔った私をこの部屋に連れて帰ってくれたわ。」

「ぼ、僕たち、全裸で…」

「私、女豹になり損ねたの。

誘ったのに、昭吾くん大いびきで寝ちゃったの。」


さらに、長い髪を手櫛しながら明美は言う。


「昭吾くん、君は凄く優しい子よ。」

「あ、明美さん。」

「諦めずに、桃子ちゃんと幸せになりなさい。」


明美がシャワーを浴びている間に、

帰るよう言われたので、

昭吾は自分の部屋に戻り、帰途の支度をした。


チェックアウトの際、ロビーを見回したが、

やはり、桃子の姿は無い。

一人雨の中、大きな鞄を蹴飛ばしながら、

傘をささずに渋谷駅まで歩く。


山手線のホームで、何台もの緑色の電車が、

出発するのを見ている。

発車のベルが、耳に焼きつく程。


「東京って何でもありなのに、

ほんとは寂しいところなんだ。」


何かを諦めかけると、そんな印象を抱いてしまう。

それが、東京ってところかもしれない。

昭吾は夕暮れ時、雨の東京駅で新幹線に乗った。

車窓から眺める景色は、

雨の雫の向こうに点るネオン。

さまざまな色彩が、昭吾を見送ってくれている。


「さよなら、桃子。」

「さよなら、君の住む街、花の東京。」




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