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Sugartownは恋の都  作者: びん せんと
18/31

第18章~冬の散歩道~

下北沢で電車を降りた。


桃子を家まで送る途中の事。

電車の暖房が効き過ぎていたので、

二人とも寒く、震えが止まらない。

寄り添い合って、

白い息を吐きながら、少し足早に歩いていた。


途中、身体が温ったまって来たので、

公園で一休みする。


「昭吾くん、お願いがあるの。」

「何だい?」

「桃子への手紙、女の子の名前を差出人にして欲しいの。」


桃子の話によると、

暦の○(マル)の日の翌日、

昭吾が投函した礼状を、

桃子は見ておらず、

東京駅のホームで別れてひと月以上、

昭吾と音信不通になっていたので、

少し不信感を抱いていたようだ。


「お母さんが…昭吾くんの手紙を勝手に処分しているよ。

お願い…昭吾くん。」


逃げないと誓ったばかりの昭吾。

暫く寒空を見上げて考え、決断した。


「わかった。暫くはそうする。」

「ありがとう。昭吾くん。」

「で、何て名前?」

「速水響子って書いて、いい?」

「了解。暫くは丸文字で、妹に書いて貰うよ。」

「嬉しいー。ありがとう。」


昭吾は思った。


「こんな事を頼んでまで、

こんな僕と繋がっていたいなんて…」


急に桃子が愛おしく思え、


「桃子、好きだっ。」


誰も居ない、冬の公園。

街灯が長い二つのシルエットを、一つに映し出した。


桃子の家に着いたが、

家の前のバス停でバスを待つ。

桃子が修学旅行の話をし始める。


「広島で一泊するんだ。身内だと言って面会に来て。」

「いいよ、宿泊先はどこ?」

「忘れちゃった。今度の手紙に書いておくね。」


寒空から、白い物がたくさん降りて来る。


「桃子、雪だよ。」

「ほんと、綺麗ね。」


みるみるうちに、銀色の世界が目の前に広がった。


「積もったみたい。」

「そうだね。」


バスが近づいて来た。


「じゃあ明日も九時にロビーに行くね。」

「うん。待ってるよ。」

「明日、広島に帰っちゃうんだ。」

「うん。三時過ぎの新幹線だよ。」

「寂しいなぁ…。」

「じゃ、また明日。」

「うん。」


昭吾はバスの後部座席に座り、

桃子が手を振るのを姿が見えなくなるまで見届けた。


蟠りが一つずつ、一本の強い糸になって行くような、

そんな長い、長い一日だった。




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