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Sugartownは恋の都  作者: びん せんと
17/31

第17章~汀の誓い~

桃子をタクシーで家まで送り、

再びホテルに帰って来たのが夜十時過ぎ。

ロビーには出迎えてくれる客人が、


「あら、おかえりー」

「明美さん、どうも。」

「昭吾くん、コーヒー飲まへん?」

「はい、飲みましょう。」


新幹線でご一緒した明美と、本日二つ目のデイト?


「昭吾くん、新幹線の中での顔とちゃうで。」

「そ、そうですか?」

「うん、何かええ事あった顔やでー。

関西人の女は勘がするどいからなぁ。」


恥ずかしそうな昭吾。


「しっかりしているようで、結構可愛いとこあるやん。」

「まだ、子供のままですから。」


昭吾を睡魔が襲って来た。


「明美さん、今日は失礼します。」

「おやすみー。」


明日の約束は朝九時、

桃子がホテルのロビーに来てくれる。


朝六時頃目覚めた昭吾。

今日のデイトの行き先を決めていない。


「どこ行こうか?」


テレビでは、晴れ着姿のお天気キャスターが、

夜には都内もしぐれるかも?と言っている。


ディズニーランドは混んでるだろうし、

桃子が好きな場所で、

どこか、二人でゆっくりと過ごせる場所。


湘南がいいと思いついた。、

早速、フロントに尋ねる。


「レンタカー会社、どこか無いですか?」

「正月だからね、空車は無いと思うよ。」


と言いながら、レンタカーマップを渡してくれた。

昭吾は近場から順番にレンタカー会社に電話し、

空車を探す。


「渋谷区内には無し。新宿か?」


電話をしても、空車は無し。

昭吾がレンタカーを諦めたところでタイムアウト。

約束の時間だ。

ロビーには、桃子の姿があった。


「明治神宮へ初詣に行こう?」

「よっし、行こう。」


天気はいいけど、かなり寒い舗道。

初詣が終わってからの事を話しながら歩く二人。


「レンタカーを借りようとしたけど、空車無くって、」

「湘南?新宿から電車出てるよ。」

「じゃ、それ乗って行こう。」


初詣は参拝する人が多く、

テレビで観るのと同じ。

二人は参拝せず、おみくじだけ買った。


「うわっ、凶だよ。桃子は?」

「小吉よ、昭吾くんは日頃の行いじゃない?」


相変わらず毒舌な桃子には、反論出来ない昭吾。

原宿から新宿へと移動し、

ロマンスカーの席を予約。

出発までの時間、構内のファーストフード店で、

軽い昼食を取った。


「湘南は、修学旅行以来だよ、竜宮城のような駅がある…」

「その駅に着くのロマンスカー、片瀬江ノ島だよ。」

「よく利用するの?ロマンスカー?」

「最近は乗らなくなったなぁ。海水浴に行く電車なんだ。」


赤いボディの列車に乗り込んだら、走り出した。


「この駅、よく利用するの。ここから先は、わかんないけど。」


桃子のガイドも束の間。

江ノ島に到着した。


サザエの壺焼きが香る中、

海が香る方へ二人歩く。

潮風が冷たく、二人の間を通り抜けて行く。


暫くテトラポットの上で、二人じゃれ合っていたが、

急に桃子が無口になった。

その顔からは笑顔が消えている。


「桃子、どうしたの?」

「あのー、あのね、昭吾くん。」


「嫌われちゃったのかな?

何か要らない事、言ったのかな?」


心の中で焦る昭吾に桃子は、話し始めた。


「昭吾くんの事が好きだから、話しておきたいの。」

「何?」

「実は、お母さんが昭吾くんの事を、

あまり良く思ってないの。」

「そ、そうなんだ。」


あーあ、夏にお会いした時、印象悪かったんだ。

そんな事を話す桃子はまだ、高校二年生。

何を話して来ても堪えようと、昭吾は思った。


「桃子…どうすればいいかわかんないよー。」


桃子が泣き始めた。

聞かされた昭吾も、内心普通じゃなかった。

ここは昭吾も二つ大人。

震える身体をグッと堪えて、

桃子に語り始めた。


「何を迷ってるの?桃子。

僕たちは、お母さんの反対だけで、終わってしまうの?」

「そんなのイヤ。桃子、昭吾くんが好きなんだもん。」


答えは出た。

でも、何て話してあげればいいか、

震える身体を堪えながら桃子を抱き寄せ、

言葉を選んでいる昭吾。


「昭吾くん。桃子を広島に連れて行って。」

「何言うんだ桃子。」

「私を好きなんでしょ?昭吾くん。」

「好きだよ、好きだから、来たんだよ。」

「じゃあ広島に連れて帰ってよ。」


正気を失った桃子。

辛いことを言われて来たんだろう。


「いいか、桃子。」

「何?」

「オレは、桃子のお母さんから逃げない。」

「何んでよー?」

「お母さんを責めれる立場じゃないんだ。」

「何も出来ないんだ、昭吾くん…」


昭吾の頭の中が、まとまった。


「お母さんがどう思っているのか、

オレは知らない事なんだ。」


話を整理しながら続けた。


「オレは、オレっていう男を、

お母さんに解ってもらわないと、

一度お会いしただけで、

嫌いと言われても腑に落ちないんだ。そうだろ?」

「う、うん。」

「お母さんにも、年に何度か挨拶する。」

「昭吾くん…。」

「今日、今からじゃあ駄目かな?」

「お母さん、実家に帰省しちゃったの。」

「オレは、お母さんから逃げない。歩み寄りたい。

桃子とは、今からなんだ。」

「わかった、昭吾くん…ありがとう。」


広島に連れて行って…そうしたい昭吾だが、


「桃子?もう一つ言っておくが、

広島に連れて行ってって、

広島には、桃子が描いている夢なんて無いぞ。」

「広島に行けば、昭吾くんと居れるもん。」

「それだけじゃ、駄目なんだ。いや駄目になるんよ。」

「駄目になるの?私たち?」

「そう、薄っぺらいよ、

そんなもんじゃないだろ?オレたちが温めてきたもんは?」

「うん。そうだね?昭吾くん…。」


桃子は、安心したのか、少し笑顔が戻って来た。


「離れててもオレたち、繋がってるじゃん。だろ?」

「昭吾くん…。」

「いつ切れもいい、赤い糸のままじゃないんだよ、

オレたちは。」


帰りの電車は準急で、横座りの座席。

疲れたのか、昭吾の肩で眠る桃子。

ティモシー・B・シュミットの、

『ソー・マッチ・イン・ラヴ』

誰かのヘッドホンから聴こえて来る。

TVCMで、良く聴く曲。

こんな歌詞だ。


「二人でいっしょに 海辺を歩くとき

星がキラキラ 頭のずーっと上で輝いているとき

とても愛し合っている 僕たち二人

だれもいない 僕と君だけ

とても愛し合っている

とても とても愛し合っている

とても愛し合っている

とても とても愛し合っている …」


すっかり暗くなった帰路。

電車は都心に向かっている。





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