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Sugartownは恋の都  作者: びん せんと
15/31

第15章~渋谷で五時~

ジングルベルが鳴り響く街角。

恋人たちが肩を寄せ合って、歩く舗道。

イルミネーションが綺麗。

遅番上がりの昭吾は、

イブの夜、一人寂しく広島市内を歩きながら、

時計を気にしている。


「もうすぐ八時だ。桃子に電話しなきゃ…」


街にチャペルが鳴る。

と同時に昭吾は、

電話ボックスで百円玉を五枚入れ、

桃子に電話した。


あの日以来の会話。

受話器の呼び出し音が回数増すごとに、

昭吾は緊張した。


「モシモシ、昭吾くん?」

「桃子、お久しぶり。」


昭吾は、あれから何があったのか、

問い詰めないと決めている。


「メリークリスマスだね?」

「そうだね。昭吾くん、クリスマスプレゼント届いたよ。

ありがとう。」

「な~に、大したものじゃないけど、使ってよ。」


昭吾はバイク用のレザー手袋を送っておいたのだ。

自分が使用している物とは色違いのグローブだ。


「ね、今度いつ会えるの?お正月?」

「うん、元日に上京する。会ってくれるね?」


「うん、何時に来るの?」

「渋谷で五時。09の前で待ってて。」

「昭吾くん、09?なんか広島の人じゃないみたい…」


昭吾の意地悪が始まる。


「そうだろ?カッコイいだろ?今度は遅れんなよ。」

「やっぱり昭吾くん、怒ってたんだぁ…」


五百円がなくなり、電話が切れたので、

追加のワンコインで一言。


「桃子。」

「何?」

「好きだよ。」

「桃子も。」

「早く会いたいよ。」

「八日すれば、また会えるよ。」

「じゃ、その前に、夢の中で。」

「メリー・クリスマス。」


夏よりも少しぽっちゃりしたと言う桃子に、

また会える喜び。

舗道の恋人たちよりも幸せそうな顔で歩く昭吾。

年末三十一日まで、びっしり仕事だ。


時は、昭和五十九年の元日。


十時過ぎの新幹線に乗った。

初めてグリーン車に乗る昭吾。

窓側の、陽のあたる席。


車外は寒そうだが、いい天気だ。


お正月だからか、結構席が詰まっている。

車内販売のホワイトチョコを食べながら、

二百五十キロの流れる景色を眺めている。

隣の席は、途中まで空席だったが、

京都駅から一人、座った。

綺麗な女性だ。


「お正月だから?めっちゃ人多いやん。」


と、昭吾はその女性に話しかけられた。


「ね、一人旅なん?どこの人?」

「ひ、広島です。」

「お正月に一人で、どこ行きはるん?」

「東京です。」

「うちもやぁ。たまには、東京行きたいしなぁ。」


関西人特有なのか?誰とでも会話できる気質なのか?


「うちは明美って言うんや、あんたは?」

「僕は昭吾って言います。」

「うちは二十二歳で独り身や。あんたは?」

「僕は、十九歳です。」

「学生さんかいな?」

「いいえ、職に就いてますよ。」


昭吾は、知らない綺麗な女性と、

話をしている自分を疑っている。


「なぁ昭吾くん、彼女居るん?」

「一応、居ます。」

「一応って、何や?居てへんのか?」


何か、自分の全てを吸い取られそうな…ま、いいか。


「いいえ、東京に居ます。」

「東京に?じゃ、これからデイトかいな?」

「そうです。」

「ええなぁ、東京でデイト。ロマンチックやなぁ。」

「明美さんは、東京へは?」

「傷心旅行や。」

「傷心?」


明美さんは、誰かと別れたばかり?

ヤバかったかな?


「ウソやぁ、嘘。ちょっと気晴らしだよ。」


明美との会話で、長い旅路が和んだ。

陽が傾いた東京駅に、新幹線は到着した。


「なぁ、今夜どこ泊るん?彼女ん家?」

「いいえ、渋谷のサンシティホテルです。」

「えっ、うちと一緒やん。」

「そうなんですか?」

「昭吾くんの彼女、チェックしちゃおうかな?」

「そっ、そりゃあ…」

「冗談、冗談よ。」

「今日は楽しかったです。」

「うちもや、おおきに。」


到着ホームで、明美と別れる。

昭吾は、山手線のホームへ移動し、

緑色の車両に乗り込んだ。

渋谷へ近づくにつれ、外が暗くなっていく。

時計を見たら、四時四五分。

東京の日没は、広島よりも早い。


渋谷駅に到着。

宵闇せまるハチ公出口から、

桃子が待ってる09を目指す。



再会の時は、渋谷で五時…








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