表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Sugartownは恋の都  作者: びん せんと
14/31

第14章~線路沿いの恋~

暦の○(マル)印の翌日、

昼過ぎに広島駅に着いた。


妹や家族へのお土産を渡し、

桃子への礼状を書いた。

翌日、早速バイク屋さんで、

桃子と同じ型のスクーターを購入。

何かと桃子と繋がっていたい昭吾。


時は昭和五十八年十月。

松本ちあきの『赤い羽根の共同募金』のポスターが、

街角に貼られた頃。

毎日のように郵便受を伺う昭吾は、

極度な不安感に陥る。


あの日から、桃子からの手紙が届かない。


もう一通、手紙をしたためる昭吾。

もう、いつもの昭吾ではない。

抜け殻のように意味のない毎日。

テレビさえ見ない。

そんな生活。

自分でも嫌気がさして来た。


その頃から昭吾が、日課のように通い始めた場所。

広島駅横の愛宕踏切。

毎晩、何便か出発する、

東京行きの夜行列車を眺める。


「この列車に乗れば、桃子に会いに行ける。」


日に日に脱力感が増す。

500マイルという二人の距離に、完全に敗北している。


心許した郵便受に、今日もまた手紙が届いていない。

昭吾は、暫く弾いてなかった、

埃まみれのギターを手にした。

Fコードで始まる、ビートルズ。


『イエスタデイ』


「僕も、あの時を信じてる。」


東京駅の十番ホームに置いて来た桃子。

その髪の香り、そのぬくもり、その笑顔…

全て、置いて来た十番ホーム。

この街と同じような木枯らしが、

吹いているのだろう。


十一月になった。

スクーターも手袋無しでは走れない。

そんな頃、郵便受に、可愛い封筒が入っていた。

桃子からだ。


「なかなか返事が書けなくて、ごめんなさい。」

「文通始めて、一年だね。」


三枚の便箋にギッシリ書かれた桃子の便り。

昭吾は嬉しくて、涙が止まらない。

文末の一行に一言、


「今度、いつ来てくれるの?いつ会えるの?」


昭吾は、次の上京の計画をたてる事にした。


上京の日が、はっきりするまでは、桃子に話すまいと、

仕事帰りに旅行会社へ寄る毎日。

抜け殻のような昭吾は消えていたが、

毎晩夜行列車を眺めに行く日課は、欠かさない。


十二月、街はジングルベルが流れている頃、

桃子に手紙を送った昭吾。

正月休みに、泊まりがけで上京すると書いた手紙。


「イブの夜、八時に電話します。」


年の瀬、慌ただしい中、

昭吾の部屋のステレオから、

ビリー・ジョエルの新譜、

『ロンゲスト・タイム』が、繰り返し流れている。


ただ、気になっている事は、桃子からの手紙。

以前のように熱い内容の手紙ではなかった事。


思いつきの直感だが、

邪魔者の予感がする昭吾。


「一体、誰なんだろう?」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ