表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Sugartownは恋の都  作者: びん せんと
13/31

第13章~トラックス・オブ・マイ・ティアーズ~

ギターを弾きながら部屋の時計を見る。

5時を指す。

列車の発車時刻まで、残り5時間。

少し赤く染まった銀色の電車が走っている。


「昭吾くん、時間大丈夫?」

「そろそろ、どこかへ行こうか?」

「どこへ連れて行ってくれるの?」

「池袋のサンシャイン60へ行こうか?」

「うん、行きたい。桃子、行った事ないよ。」


桃子はお母さんに、夜のお出掛けの交渉。

まだ高校生の桃子には、なかなか許可が下りないのか?

部屋に戻って来ない。

三〇分ぐらいしてようやく、桃子が部屋に戻って来た。


「お母さんが渋谷まで送ってくれるって。」


車で246号を渋谷方面へ。

途中、ファミレスで食事をご馳走してもらい、

渋谷で、お母さんと別れた。


「やっと二人きりになれたね、連れてって、昭吾くん。」


渋谷から山手線で池袋まで。

サンシャインは、昭吾は二度目。

修学旅行以来だ。

建物が高い分、サンシャインまでは迷わずたどり着いた。

六〇階まで、あっという間にたどり着くエレベーター。

降りるとそこには、東洋一の夜景が広がる。


「わぁ、きれい…ね、昭吾くん。」

「うん。」


夜景よりも、硝子の中に映る桃子を見ている昭吾。

このまま、時間が止まって欲しいと願う。


館内のBGMは、

『トラックス・オブ・マイ・ティアーズ』が流れている。

時計は、夜8時。

二人が離れてしまう時間まであと、二時間。


「桃子。」

「なーに?」

「寂しいよ。」

「桃子も、寂しい。」


人が居なくなった館内で、抱き合う二人。

涙が、溢れた。


「このまま、離れたくない。」


二人の気持ちは一緒。


「昭吾くん?」

「何?」

「もう一か所、一緒に行きたい所があるの。行く?」

「うん。」


二人は急いでエレベーターを降り、池袋駅前のディスコへ。

黒服のお兄さんが出迎えてくれた。


「お二人ですか?」

「は、はいっ。」

「どうぞ、いらっしゃいませ。」


時計を見たら8時半過ぎ。

会話さえままならない大音響の空間。

土曜日なので、客も多い。

桃子は着席するとすぐ、リクエストカードに何か書き始める。


「桃子、何書いてるの?」

「私たちの曲をリクエストするの。」


「私たちの曲?」


桃子は黒服に何か言いながらカードを手渡す。

二人、ジュースを飲み始めた瞬間、館内が暗くなり、

ストリングスのイントロが、流れ始めた。

昭吾も、聞き馴染みのあるイントロ。

BGTの『君の瞳に恋したい』だ。


「昭吾くん、桃子と踊って?」

「行こう、僕たちの曲だ。」


DJブースから声がした。


「待ってましたぁ~

都内のモモコちゃんと、広島のショーゴくん。

ペンフレンドの二人が、きょう初めて出会ったんだよ~

二人のリクエスト~」


ミラーボールの下、

黒服達からは勿論、他の客からも祝福を受ける。

曲がピアノとストリングスになる所で、

皆に囲まれてしまった。


その小節がサンプリングされ、繰り返されている。

館内の皆は、何かを待っているようだ。

そして桃子も…


二人の唇が重なり、時が、止まった。


「やったぜベイベ~。」


二人はDJブースに頭を下げ、店を後にした。

夜の9時、池袋から東京駅へと移動。

会話は、無かった。

ただ二人、寄り添っているだけ。


東京駅、一〇番ホーム。

そこには青色の列車が停まっていた。

まだ、黙り込む二人。

まず昭吾が桃子に、話しかけた。


「遅くなっちゃったね、帰り大丈夫?」

「お父さんが渋谷まで迎えに来てくれてるから、大丈夫よ。」


「桃子。」

「何?」

「ありがとう。今日は凄く楽しかった。」

「桃子も、昭吾くんが東京へ来てくれて、嬉しかった。」


無愛想な駅員のアナウンスが始まった。

何となく、邪魔されているように感じる昭吾。


「また、来てもいいかな?」

「うん、今度はディズニーランド行こうね。」

「そうだね、まだディズニー行った事ないんだ。」

「じゃあ、来週の日曜日に、待ってるからね。」

「来週の日曜日かぁ?来たいけど、来れないなぁ。」


また駅員が、列車に乗り込むようアナウンスを始めた。

桃子が言う。


「今度、いつ会えるの?」

「お正月の連休かな?三連休あるようだし。」

「じゃあ桃子、待ってる。」


駅員のアナウンスが止まらなくなり、

発車のベルが鳴りはじめた。

列車のドアの前で、抱き合う昭吾と桃子に、

駅員は話しかける。


「早く乗って下さい。発車します。」


昭吾は列車に乗り込み、桃子の手を放そうとしない。

車内アナウンスが言った。


「ドアにお気を付け下さい、発車します。」


「桃子、待っててくれ。」

「うん、待ってる。」


二人の手が放れた瞬間、列車のドアが閉まった。

また涙が、溢れた。


右手を振ってくれる桃子を東京駅に残し、

列車は西へと、走り出した。


暦の○(マル)の日が、終わった。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ