第12章~サプライズな午後~
原宿。
昭吾にとって、修学旅行以来の再来だ。
竹下通りから、フィフティーズ・ショップをはしごして、
芸能人が立ち寄る店を覗いてみたり、
すっかり都会っ子気分になった昭吾。
気がつけば二人、物静かな方向に向かっていた。
真夏の都心、摂氏三十度以上ある歩道。
「歩くと近いから、」と、渋谷まで歩く。
渋谷は、初めて訪れる昭吾。
忠犬ハチ公と、初めてにらめっこ。
横で微笑む桃子が言う。
「ここで待ち合わせている人、多いでしょう?」
「だね。迷子になりそう。」
「ここ最近は、ハチ公よりも、
あの建物の前で待ち合わせが多いのよ。」
見た事もないような、大きなスクランブル交差点。
その向こうに、鋭角っぽい建物が見える。
「shibuya109ってところよ。」
「109?知らなかったよ。」
駅前の、大きなデパート。
上階の食堂街に、見たことがある看板を見つけた。
「ここでランチしよう。」
「いいわよ。」
店内で、初めて桃子と向かい合って座った昭吾。
今までかったるい会話をしていたのが嘘のように、
固まってしまい、発汗し始めた。
「昭吾くん、どうしたの?」
メニュー見つめて考え込むそぶりの昭吾。
「やっぱり東京は、暑いなぁ。ハッハッハぁ~。」
ごまかしてみたものの、
桃子の大きな瞳に、完全に圧倒されて、
テレながら話しかけた。
「桃子。」
「何?昭吾くん。」
「綺麗だね?」
「えっ?」
「目、瞳。」
「そう?」
ニッコリ微笑むと、少し崩れる顔の桃子。
可愛い…。
食事が済んで店を出る前の事。
桃子が一言。
「昭吾くん?」
「何?」
「お母さんが、昭吾くんに会いたがっているの。」
うわっ…心音が轟くように打つ。
「うん、いいよ。僕もお会いしたかった。」
とは言ったものの、極度な緊張状態。
このサプライズな事態からは、逃げ出せない昭吾。
駅の構内の隅にあるスピード写真。
「二人の記念写真撮ろうよ。」
「うん。」
「ハイ、チーズ!」
機械の前で待つ二人。
モノクロ写真が四枚出て来たので、
二枚ずつ分け合った。
「桃子ん家、行こうか?連れてってよ。」
「うん。」
渋谷からバスで一〇分ほど揺られる。
「もみじまんぢゅう買って来て良かったよ。」
「もみじまんぢゅう?知ってるよ、お笑いコンビのね?」
「そうそう。」
「桃子、もみじまんぢゅうは初めてよ。」
街並みは大都会から学生街に。
バスを降りたら真向かいに、桃子の家。
店舗を営まれておられる。
「ここが、いつも封筒に書いている住所なのか?」
裏の玄関に案内されまず、おばあちゃんに挨拶。
足の震えが、止まらない。
「いらっしゃい。遠いところよく来られましたね。」
その一言で緊張が解れた。
ドアの横に停めてある、赤い原付バイク。
新モデルのスクーターだ。
「これ、桃子のバイクよ。」
「新車だね?東京は高校生でも乗れるんだね?」
スクーターを触っているとお母さんが出て来て、
昭吾を出迎えてくれた。
「さ、どうぞお上がり下さい。」
居間に腰を掛け、一時間くらい三人で話をした。
話の内容は広島の事や、家族の事、仕事や趣味の話など。
また、昭吾が知らない桃子の事を知る事が出来た。
「ウインタースポーツですか?僕、やった事ないです。」
昭吾はまだ一八歳。
社会人とはいえ、会話のかけ引きさえ知らない、
まだまだ子供。
だから包み隠さず会話をした。
話が途切れ始めた頃、桃子がお母さんに言った。
「昭吾くんと、二階へ上がるから。」
桃子の部屋。
ディズニー系のぬいぐるみが沢山置いてあり、
壁のカレンダーには、今日の日にしっかりと、
○マル印がつけてある。
部屋の窓から、銀色の電車が走っているのが見える。
机の隅に、立ててあるクラシックギター。
「桃子、ギター弾くの?」
「置いてあるだけ。埃被っているでしょ?」
ギターを手にして、チューニング。
「音、合って無かったでしょ?」
「うん。」
とは言っても、少ししか弦の音は狂っていなかった。
ギター始めたのかな?桃子。
「ね、何か弾いてよ、聞きたかったんだ昭吾くんのギター。」
「いいよ。」
Dコードからアルペジオ。
PMMの『500マイル離れても』を、
昭吾は弾き始めた♪




