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Sugartownは恋の都  作者: びん せんと
11/31

第11章~東京Rhapsody~

※この章には、未成年者が煙草を吸う不適切な表現があります。絶対に真似されぬよう、させないようにして下さい。

昭吾を乗せた青色の列車が、

ゆっくりと徐行し始めた。


新幹線の高架がクロスするあたりから、

高層ビルが目立ち始める。

品川プリンスホテルが見える。

修学旅行の時、

昭吾が桃子に話しかけたと言われる場所。

当時はまだ建ってない建物だったが、

立派なホテルが聳える。


左側を緑色の電車が追い越す。山手線だ。

もしかしたら、渋谷から乗った桃子が、

あの電車に乗っているかもしれない。

七番ホームで、待ってるかな?


でもこの列車は、九番ホームに到着する。

桃子が慌てて九番ホームに来たら、

入れ違いで二人、会えないかもしれない。


不安な事だけが、頭に浮かぶ。

劇的な出会いなんて想像出来ない位、

昭吾はパニックに陥っている。


列車がゆっくりと、東京駅に入る。

九番ホームに到着した。


昭吾はドアの向こうの桃子を探すが、姿は無い。

悪い予感が、的中した。


どこを探しても、

誰かを待っている人さえ居ない。

昭吾は慌てて七番ホームへ駆けった。

しかし、ホームには掃除のおばちゃんの姿だけ。


「どこかで入れ違ったのかな?」


また九番ホームへ移動してみた。

誰も居ない。


「これは、コトだ…。」


走る気力を失った昭吾。

七番ホームのベンチに腰を掛けた。

まわりを気にしながら煙草に火をつけ、

頭の中を整理。

まず、桃子の家に電話する事にした。


「もしもし、桃子さん居ますか?」


電話の向こうは、桃子のおばあちゃんだ。


「桃子は、一〇時過ぎに出かけたよ。」

「そうですか?ありがとうございました。」


一〇時過ぎに出かけて、一〇時一〇分に東京駅は、

桃子の家からは絶対に来れない。

昭吾は、誰も居ない七番ホームのベンチで待つ事にした。

煙草を二本吸い終わり、三本目に火をつけた。


「このまま、桃子と会えないかもしれない。」


凄く不安な事を考えている昭吾。

帰りの電車の出発時間まであと、一一時間。


一一時前、目印の『週刊梵凡』を捨てようかな?

と思った時、階段から急いだ足音が聞こえた。


「しょ、昭吾くん?」


息を切らしながら、階段を昇って来た女の子。

大きな瞳の、サーファーカットの髪。


「桃子?桃子。」

「昭吾くんごめんなさい、寝坊しちゃった。」

「いいよ桃子、ありがとう。会いたかったよ。」

「桃子もよ、待たせちゃった、本当にごめんなさい。」


これが二人の衝撃的な、

まさに感動的な出会いなのでした。

ここからが、暦の○の日のはじまりなのです。


「昭吾くん、どこへ行きたい?」

「原宿かな?」


「ロックンローラーの店?」

「うん。」

「じゃあ、山手線で行きましょう。」


二人は緑色の、外回りの車両に乗り込んだ。

目と目が会うたびに、ニコっとする桃子。

写真の印象よりも、実物は凄くかわいい。

話し方は、電話よりもオットリ口調なのだが、


「昭吾くん、本当は怒ってるでしょ?」

「怒ってなんかないよ。」


「ううん、目が怖いよ、怒ってるよ。」

「怒ってない。」

「怒ってる…。」


結構会話は滑らか。

はじめて会ったとは思えない、他愛のない会話。

本当に昭吾は嬉しかった。


「昭吾くん、品川よ、あのプリンスホテル。」

「僕が、桃子に声をかけた?」


「そう、昭吾くんがナンパしてた。」

「ナンパ?人聞き悪いなぁ、コミュニケーションだよ。」


「コミュニケーション?」

「そう、地元の人との会話。」

「な事言っちゃって昭吾くん、カッコつけてるんだから。」


止まらない会話を楽しみながら、

緑色の電車は、山手線に入って行った。

テレビで観た事があるような風景。

恵比寿を過ぎ渋谷あたりのようだ。


「このあたりから、桃子の庭だよ。」

「そうなんだ。」

「後で案内するからね。」


東京とは思えないほどの緑。


「次は、原宿、原宿です。」


と、車内アナウンス。

駅を降りると、ミンミンゼミが鳴いている。

ここもテレビで観た事がある風景が広がっている。

世間は土曜日なのに、

祭りの縁日のように、人が沢山歩いている。


「さ、行こうか?」


桃子が昭吾の手を引っ張った。

青空が見えないどんよりとした大都会のど真ん中。


二人は、人混みの中へ溶け込んで行く。




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