第11章~東京Rhapsody~
※この章には、未成年者が煙草を吸う不適切な表現があります。絶対に真似されぬよう、させないようにして下さい。
昭吾を乗せた青色の列車が、
ゆっくりと徐行し始めた。
新幹線の高架がクロスするあたりから、
高層ビルが目立ち始める。
品川プリンスホテルが見える。
修学旅行の時、
昭吾が桃子に話しかけたと言われる場所。
当時はまだ建ってない建物だったが、
立派なホテルが聳える。
左側を緑色の電車が追い越す。山手線だ。
もしかしたら、渋谷から乗った桃子が、
あの電車に乗っているかもしれない。
七番ホームで、待ってるかな?
でもこの列車は、九番ホームに到着する。
桃子が慌てて九番ホームに来たら、
入れ違いで二人、会えないかもしれない。
不安な事だけが、頭に浮かぶ。
劇的な出会いなんて想像出来ない位、
昭吾はパニックに陥っている。
列車がゆっくりと、東京駅に入る。
九番ホームに到着した。
昭吾はドアの向こうの桃子を探すが、姿は無い。
悪い予感が、的中した。
どこを探しても、
誰かを待っている人さえ居ない。
昭吾は慌てて七番ホームへ駆けった。
しかし、ホームには掃除のおばちゃんの姿だけ。
「どこかで入れ違ったのかな?」
また九番ホームへ移動してみた。
誰も居ない。
「これは、コトだ…。」
走る気力を失った昭吾。
七番ホームのベンチに腰を掛けた。
まわりを気にしながら煙草に火をつけ、
頭の中を整理。
まず、桃子の家に電話する事にした。
「もしもし、桃子さん居ますか?」
電話の向こうは、桃子のおばあちゃんだ。
「桃子は、一〇時過ぎに出かけたよ。」
「そうですか?ありがとうございました。」
一〇時過ぎに出かけて、一〇時一〇分に東京駅は、
桃子の家からは絶対に来れない。
昭吾は、誰も居ない七番ホームのベンチで待つ事にした。
煙草を二本吸い終わり、三本目に火をつけた。
「このまま、桃子と会えないかもしれない。」
凄く不安な事を考えている昭吾。
帰りの電車の出発時間まであと、一一時間。
一一時前、目印の『週刊梵凡』を捨てようかな?
と思った時、階段から急いだ足音が聞こえた。
「しょ、昭吾くん?」
息を切らしながら、階段を昇って来た女の子。
大きな瞳の、サーファーカットの髪。
「桃子?桃子。」
「昭吾くんごめんなさい、寝坊しちゃった。」
「いいよ桃子、ありがとう。会いたかったよ。」
「桃子もよ、待たせちゃった、本当にごめんなさい。」
これが二人の衝撃的な、
まさに感動的な出会いなのでした。
ここからが、暦の○の日のはじまりなのです。
「昭吾くん、どこへ行きたい?」
「原宿かな?」
「ロックンローラーの店?」
「うん。」
「じゃあ、山手線で行きましょう。」
二人は緑色の、外回りの車両に乗り込んだ。
目と目が会うたびに、ニコっとする桃子。
写真の印象よりも、実物は凄くかわいい。
話し方は、電話よりもオットリ口調なのだが、
「昭吾くん、本当は怒ってるでしょ?」
「怒ってなんかないよ。」
「ううん、目が怖いよ、怒ってるよ。」
「怒ってない。」
「怒ってる…。」
結構会話は滑らか。
はじめて会ったとは思えない、他愛のない会話。
本当に昭吾は嬉しかった。
「昭吾くん、品川よ、あのプリンスホテル。」
「僕が、桃子に声をかけた?」
「そう、昭吾くんがナンパしてた。」
「ナンパ?人聞き悪いなぁ、コミュニケーションだよ。」
「コミュニケーション?」
「そう、地元の人との会話。」
「な事言っちゃって昭吾くん、カッコつけてるんだから。」
止まらない会話を楽しみながら、
緑色の電車は、山手線に入って行った。
テレビで観た事があるような風景。
恵比寿を過ぎ渋谷あたりのようだ。
「このあたりから、桃子の庭だよ。」
「そうなんだ。」
「後で案内するからね。」
東京とは思えないほどの緑。
「次は、原宿、原宿です。」
と、車内アナウンス。
駅を降りると、ミンミンゼミが鳴いている。
ここもテレビで観た事がある風景が広がっている。
世間は土曜日なのに、
祭りの縁日のように、人が沢山歩いている。
「さ、行こうか?」
桃子が昭吾の手を引っ張った。
青空が見えないどんよりとした大都会のど真ん中。
二人は、人混みの中へ溶け込んで行く。




